主要成果
Iceberg Quantumは、量子低密度パリティチェック(QLDPC)コードの直接的な回路レベルシミュレーションを通じて、論理量子ビットサイクルあたり10^-12未満という論理エラー率を検証しました。これは2048ビットのRSA整数分解を実行するために必要とされる閾値です。この成果により、RSA-2048を解読するためのリソース見積もりが更新され、物理エラー率 p = 10^-3 の条件下で、物理量子ビット数72,000個を用いて3.7日間で実行可能であるとしています。また、p = 10^-4 かつコードサイクル時間が1マイクロ秒の場合には、物理量子ビット数48,000個で0.98日間にまで短縮されます。
技術・詳細
今回のブレークスルーを支えるのが、同社が新たに開発したQLDPCデコーダー「Crevasse」です。Crevasseはエラー訂正ラウンドあたり平均4マイクロ秒というデコードレイテンシを実現しており、統計的な外挿に頼ることなく、数兆回に及ぶシミュレーション済みのエラー訂正サイクルを直接実行することを可能にしました。
具体的な検証データとして、Pinnacleのメモリおよび処理ブロックにおいて1兆個のサンプルをシミュレートし、以下の結果を得ています。
- d = 16 ([[254,14,16]]) コード(p = 10^-3):論理エラーはわずか3回(論理エラー率 2 × 10^-13)
- d = 10 ([[126,12,10]]) コード(p = 10^-4):論理エラーはゼロ(≤ 3 × 10^-13)
これらの小さなコード距離の採用により、前世代のPinnacle 1.0と比較して、空間的オーバーヘッドを約40%、時間的オーバーヘッドを約30%削減しました。また、マジック状態蒸留ブロックへの状態注入に「forced-gap post-selection」を用いることで、注入エラー率 (1.3 ± 0.3) × 10^-6 (d = 10) を達成し、出力マジック状態の失敗率を p out ≈ 3.5 × 10^-11 まで抑えています。
背景・業界の文脈
量子コンピュータによるRSA暗号の解読には、膨大な数の物理量子ビットと極めて低いエラー率が求められます。従来のアーキテクチャでは、計算に必要な「時空オーバーヘッド( spacetime overhead)」が極めて大きく、実用的な時間内での解読は困難とされてきました。Iceberg Quantumは、QLDPCコードと効率的なデコーダーを組み合わせることで、この物理的なリソース要求量を現実的なレベルまで引き下げるアプローチを採っています。
今後の展望
同社は、固定8次接続の超伝導システム向けに設計された変異体「Frozen Pinnacle」への適用も検証しています。この改善されたコンパイル手法を適用した場合、リソース要件は物理量子ビット数99,000個、実行時間は5.0日間になると算出されています。直接的なシミュレーションによる検証精度が向上したことで、今後のハードウェア実装における具体的な設計指針が明確になったと言えます。
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