主要成果
Quantinuumは、商用トラップイオン量子プロセッサ「Helios」を用いて、論理メモリ忠実度99.9995%を達成したことを報告しました。これは、距離7(d=7)のコードにおいて、シンドローム抽出ラウンドあたりの論理エラー率が5 × 10⁻⁶に相当することを意味します。137-バリウム(137 Ba+)を用いたQCCD(Quantum Charge-Coupled Device)プロセッサ上で、距離d=3、d=5、d=7の三角カラーコードを評価した結果、コード距離の増加に伴い論理エラーが指数関数的に抑制されることが確認されました。実験的な抑制係数はΛ = 12を記録しています。
技術的詳細
今回の成果を支えるフルスタック・アーキテクチャの主要な実装要因として、以下の3点が挙げられます。
- 指数関数的な距離スケーリング:コード距離を1段階上げるごとに、論理メモリエラーが12分の1に抑制されます。このスケーリングパラメータに基づくと、約30,000個の物理量子ビットを使用することで、100個の論理量子ビットにわたって10⁻¹²という目標論理エラー率を達成できると予測されています。
- 二層構造のリーク低減:計算状態から非計算状態への状態リークを抑制するため、ハードウェアレベルで1762 nmの光学リパンピングを3サイクル実施し(これによりリークを6.5倍低減)、さらにソフトウェア駆動のSWAP-superdenseリーク低減回路を用いてデータおよびアンシラ量子ビットをQCCDイオン輸送でサイクルさせています。
- サブミリ秒のニューラルネットワークデコーダ:A*-search Tesseractデコーダに加え、3D畳み込みニューラルネットワーク(3D CNN)とRound-Token Transformers(RTT)を導入しました。NVIDIA H100ハードウェア上での評価では、ラウンドあたりのレイテンシが0.2 msから0.5 msの間となり、リアルタイム・ストリーミングデコードへの適合性が示されました。
業界の文脈と他社比較
Quantinuumは、Google Quantum AIのWillowプロセッサによるマジック状態培養(magic-state cultivation)の結果との違いについても言及しています。Googleが達成した99.99%のマジック状態忠実度は、ポストセレクション(保持率約8%)を用いた非クリフォード資源状態の準備忠実度を測定したものです。対して、QuantinuumのHeliosによる99.9995%の数値は、それらの操作を消費するエンドツーエンドの論理メモリ精度を測定したものであり、評価対象が異なることを明確にしています。なお、マジック状態の準備に関しては、Quantinuumは2025年にトラップイオンQCCDアーキテクチャを用いて、保持率85%で99.993%の忠実度を実証しており、より少ない時空間オーバーヘッドで実現可能であるとしています。
今後の展望
今回の実証結果は、Quantinuumが2029年までに実現を目指しているユニバーサル・フォールトトレラント量子システム「Apollo」に設定された性能目標と整合しています。
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