主要成果
ラトガース大学、IBM、および共同研究機関のチームは、量子コンピュータが動作中に内部状態を確認し、それに応じて応答することで、カオス的な挙動を制御下に置くことができることを実証しました。具体的には、最大100量子ビットにわたるリアルタイムの量子フィードバック制御に成功しており、これはこれまでで最大規模の実証例の一つとなります。
技術・詳細
本実験では、世界で最も強力な量子プロセッサの一つである156量子ビットの「IBM Quantum Heron」を使用し、接続された最大100量子ビットのチェーンを選択して検証を行いました。研究チームは、システム内で相反する2つのタスクを交互に実行させるプログラムを組みました。
- スクランブラー(攪乱): 隣接する量子ビット間で情報を混合させ、システム全体にカオスを広げる操作。トランプのカードを繰り返しシャッフルする動作に似ており、元の順序を認識困難にします。
- コントロール(制御): 個々の量子ビットをチェックし、必要に応じてリセットする操作。このリセットを十分な頻度で行うことで、システムを研究者が意図した単純で秩序ある状態へと導きます。
実験全体を通じて、2つの量子ビットを連携させる操作を約5,000回、およびチェックとリセットを約5,000回実施しました。研究チームは、これら2つのタスクの頻度バランスを変化させることで、システムがカオス状態から制御状態へと急激に移行する「相転移」現象を確認し、理論的な予測を裏付けました。
背景・業界の文脈
量子コンピュータは、0と1の重ね合わせ状態を持つ「量子ビット(qubit)」を利用することで、従来のコンピュータでは不可能な計算を可能にします。しかし、量子情報は極めて繊細であり、熱や電磁信号、ハードウェアの微細な欠陥によって状態が変化し、エラーが蓄積します。また、量子情報は単純にコピーできず、測定すること自体が状態を破壊する可能性があるため、情報を失わずにエラーを検出・修正する高度な制御が求められます。
今後の展望
将来的に、より大規模で信頼性の高い量子コンピュータを実現するには、計算中にエラーを特定して修正し続ける「量子誤り訂正」能力を備えた「耐故障性量子コンピュータ」の構築が必須です。ラトガース大学のJedediah Pixley教授は、耐故障性を実現するにはチェックと修正を計算中に膨大な回数行う必要があり、今回の実験はその道における重要なマイルストーンであると述べています。IBMのMaika Takita氏は、現在のハードウェアで大規模システム全体にわたって量子操作、測定、リセットを数千回調整できることが示されたと強調しています。
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