主要成果
研究チームは、マスク光造形(MSLA)3Dプリントを用いることで、窒化ホウ素(BN)複合材内部のプレートレットの配向を精密に制御し、熱流を調整することに成功しました。特に、BNプレートレットのサイズとプリント時の層厚という2つのパラメータを制御することで、熱伝導率の高い基底面をプリント面に平行に揃えることができることを明らかにしました。
技術・詳細
本研究では、平均側方サイズが約0.9、12、45マイクロメートルの3種類の六方晶窒化ホウ素(h-BN)マイクロプレートレット(BN0.9、BN12、BN45)を、市販のUV硬化性樹脂に5〜20重量%の割合で分散させました。プリントには405ナノメートルの光源を持つMSLAプリンターを使用し、層厚を10、20、30、50マイクロメートルに設定して検証を行っています。
X線回折(XRD)および光学顕微鏡による解析の結果、以下の傾向が確認されました。
- 層厚の影響:BN45(15重量%)において、層厚を50から10マイクロメートルに減らすことで、プリント面に対するプレートレットの配向性が着実に向上しました。
- プレートレットサイズの影響:層厚を10マイクロメートルに固定した場合、配向性はBN45で最も強く、次いでBN12、BN0.9の順に弱くなりました。
この現象は幾何学的な制約によるもので、45マイクロメートルのプレートレットは10マイクロメートルの狭い層間隙の中で自由に回転できず、樹脂の再コーティング時のせん断流と物理的な閉じ込め効果によって平坦に押し付けられるためです。一方、0.9マイクロメートルの粒子は回転の自由度が高いため、配向はランダムなままとなります。
背景・業界の文脈
六方晶窒化ホウ素は、優れた熱伝導性、高い電気絶縁性、および耐熱・耐化学薬品性を併せ持つ希少な材料です。しかし、熱が基底面に沿って速く伝わり、積層方向には伝わりにくいという強い異方性を持つため、従来のランダムな分散複合材では材料の性能を十分に活用できないという課題がありました。MSLA方式のせん断力は、FDMなどの押出方式よりも弱いため、本研究のように層厚による「閉じ込め効果」を利用した配向制御が特に重要な役割を果たします。
今後の展望
密度測定の結果、フィラー充填量に応じて密度は理論値に近く上昇し、層厚の変更による空隙の形成などの悪影響は見られませんでした。これにより、低気孔率を維持したまま熱流を制御できることが実証されました。今後は、この微細構造の制御を実際の熱伝導性能の向上に結びつけ、高効率な放熱設計への応用が期待されます。
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