主要成果
研究チームは、波長461nmで動作する光集積青色レーザーを開発し、低位相ノイズ(狭線幅)と高い周波数アジリティ(周波数可変性)を同時に実現しました。このレーザーは30kHz未満の線幅を達成し、1mWを超える光出力電力を提供します。さらに、窒化アルミニウム(AlN)圧電アクチュエータを光回路にモノリシック統合することで、屈折率の高速変調による周波数チューニングを可能にしました。これにより、繰り返し周波数最大1MHzにおいて、モードホップのない最大900MHzの線形周波数チャープを実現し、チューニングの非線形性は2%未満に抑えられています。
技術・詳細
本デバイスは、窒化ガリウム(GaN)ベースのレーザーダイオードと、低損失な窒化シリコン(Si₃N₄)フォトニックプラットフォーム上に作製された高Q値マイクロ共振器をハイブリッド統合し、自己注入同期(self-injection locking)させる構成をとっています。特に、導波路の厚さを25nmと薄く設計することで、従来の50nm厚の導波路よりも光閉じ込めを弱め、散乱損失を大幅に低減させました。その結果、伝搬損失は約0.4dB cm⁻¹まで抑えられ、固有品質係数(Q)は2.5 × 10⁶を超える共振器を実現しています。また、従来の熱光学シフターが抱えていた帯域幅と消費電力の制限を克服するため、高速・低消費電力な圧電駆動メカニズムを採用したことが、高速な周波数フィードバックとチャープ性能の鍵となっています。
背景・業界の文脈
紫外・青色スペクトル領域(360–480nm)の周波数可変レーザーは、水中光通信、光原子時計、リドベルグ原子ベースの量子コンピューティングなど、幅広い技術で不可欠です。特にストロンチウム(Sr)やイッテルビウム(Yb)を用いた光原子時計では、461nm(Sr)などの特定の波長でのレーザー冷却や状態準備が必要となります。従来、これらの用途には半導体ダイオードレーザー(FPレーザー)が用いられてきましたが、単一周波数かつ狭線幅の性能を得るには外部共振器や回折格子による安定化が必要であり、システムの複雑化とアライメントへの敏感さが課題となり、携帯性や環境耐性が制限されていました。
今後の展望
本研究で実証された光集積レーザーは、従来の外部安定化システムを小型なチップ上に統合したものであり、量子技術に適した狭線幅と、コヒーレントセンシングや水中通信に不可欠な高速波長チューニング機能を併せ持っています。論文では、この集積レーザーの潜在的な応用例として、水中通信およびコヒーレントエアロゾルセンシング実験での活用を提示しています。
元記事: https://www.nature.com/articles/s41566-026-02040-9
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