主要成果
TDK株式会社の高木泰弘氏らの研究チームは、レーザー光の強度を電流ではなく電圧で制御するフォトニックチップを開発した。この新アプローチにより、従来の電流ベースのシステムよりも高速な色切り替えが可能となり、同時に消費電力を大幅に削減することに成功した。実験では、従来の方式と比較して全体の消費電力を75%以上削減できることが確認されている。
技術・詳細
本デバイスは、電気的に光学特性を制御できる材料である「薄膜ニオブ酸リチウム」を用いて製作されている。チップ内部には、光の三原色(赤・緑・青)に対応する3つのマッハ・ツェンダー干渉計が組み込まれており、適用される電圧によって各チャンネルを通過する光の強度を調整する。その後、ニオブ酸リチウム導波路で構成されたマルチプレクサによって、3色の光が1つの出力ビームに統合される。
性能面では、10GHzの変調帯域幅を達成した。研究チームは、この速度が4K解像度およびそれ以上の高精細な映像表示に十分なレベルであると報告している。また、本デバイスをMEMS走査ミラーと統合し、レーザービーム走査システムにおけるフルカラー画像生成の可能性を実証した。
背景・業界の文脈
スマートグラスなどのウェアラブルデバイスには、低消費電力で詳細な画像を生成できる小型ディスプレイが不可欠である。レーザービーム走査方式は、固定ピクセル配列ではなく、レーザー光を走査させて点描的に画像を構築するため、光学部品を大型化せずに高解像度化できる手法として注目されている。
しかし、従来のシステムではレーザーダイオードに供給する電流を直接変化させて色強度を制御していた。この「直接電流変調」は、外部光学変調に比べて帯域幅が制限されるため、色の切り替え速度(=解像度)に限界があった。また、十分な強度を得るためにレーザーダイオードをしきい値電流以上の状態で動作させる必要があり、消費電力が増大することや、過剰な出力を抑えるためのニュートラル密度フィルタが必要になることが課題となっていた。
今後の展望
今回の電圧制御設計は、切り替え速度、消費電力、部品点数という、レーザー走査ディスプレイの小型化における相互に関連した課題を同時に解決するものである。これにより、スマートグラスに求められる小型フォームファクタと高解像度映像の両立が現実的になった。
今後の改良点として、ニオブ酸リチウム導波路を光が通過する際や、3色の光を統合する際に発生する光学損失の低減に焦点が当てられる。損失を抑えることでシステム全体の効率がさらに向上し、コンパクトなウェアラブルディスプレイへの統合が加速すると期待される。
元記事: https://optics.org/news/tdk-develops-voltage-led-photonic-chip-to-make-smart-glasses-more-efficient
毎週の技術動向レポートを無料でお届け
各分野の分析レポートを読む価値があるかどうか一目で判断できるインフォグラフィックをメールで受け取れます。
📢 メールマガジンに無料登録(週刊・技術動向レポート)
ご登録いただくと、Troy-Technical から週刊で技術動向レポート(メールマガジン)をお届けします。
- 取得したメールアドレス・選択分野は配信目的にのみ使用します。
- 第三者へ提供することはありません。
- 配信はいつでも解除できます(各メール下部のリンクから)。
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
登録は1分・いつでも解除できます



