主要成果
ミシガン大学の研究チームは、分子接着剤「RPT04402」を用いることで、がん抑制に不可欠なタンパク質複合体であるPP2A(プロテインホスファターゼ2A)の構造を安定化させ、がん細胞の増殖を抑制できることを明らかにした。この成果は、KRAS変異を持つ非小細胞肺がんおよび高悪性度の子宮がんの2つの研究において確認されており、特に肺がんにおいては既存薬による耐性問題を解決する可能性が示された。
技術・詳細
PP2Aは3つのタンパク質が結合して機能する複合体であり、多くの細胞シグナル伝達経路を制御して腫瘍を抑制する役割を持つ。しかし、肺がん、子宮がん、前立腺がん、肝がんなどでは、このPP2Aが適切に組み立てられないことが一般的である。研究チームは、RPT04402という分子接着剤がPP2Aの構造維持を助けることで、その機能を回復させられることを突き止めた。
非小細胞肺がんに関する研究では、以下の点が明らかになった。
- KRAS変異(非小細胞肺がんの30%に発生)を持つ細胞において、既存の抗がん剤であるadagrasibおよびtrametinibがPP2Aを不安定化させることが判明した。これが治療への耐性獲得の原因であると考えられる。
- RPT04402を併用することでPP2A複合体が安定化し、がん細胞の死が誘導された。
- マウスモデルにおいて、adagrasibまたはtrametinibにRPT04402を組み合わせたところ、耐性が遅延し、治療効果が150日以上にまで延長し、腫瘍の縮小が確認された。
また、子宮がんに関する研究では、高悪性度の子宮がんを駆動させるPP2Aの再発性変異に着目した。マウスの細胞および患者由来の腫瘍モデルを用いた試験において、RPT04402がPP2Aの腫瘍抑制能を回復させ、腫瘍の増殖とサイズを減少させた。この際、体重減少や毒性は見られなかったという。
背景・業界の文脈
肺がんは米国で2番目に多いがんであり、死因の第1位となっている。その80%以上を占める非小細胞肺がんでは、KRAS変異を持つ患者の生存期間が短く、治療への耐性が課題となっていた。また、女性生殖器系で最も一般的かつ致死的な悪性腫瘍である子宮がん、特に高悪性度タイプでは、手術や免疫療法への反応が悪いか、あるいは再発することが多い。高悪性度子宮がんのドライバー(要因)を直接標的とする治療法は、本研究が初めてであるとされる。
今後の展望
研究チームは、Spring Works TherapeuticsおよびMerckと協力して臨床試験を開始する計画である。今後は、非小細胞肺がんの全症例への適用可能性を検証するとともに、膵臓がんや大腸がんなど、他のKRAS変異腫瘍への展開を目指す。さらに、PP2A変異を持つ他の種類のがんや、神経発達障害への応用についても検討を進めるとしている。
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