主要成果
Nvidiaとワシントン大学(UW)の蛋白質設計研究所(IPD)は、バイオ分子の推論を用いたオープンな生成AIモデル「RFD4-Proteina」を開発した。このモデルは、蛋白質の配列と構造を、相互作用する分子の構造と同時に最適化できるため、一方の変更が他方へ効率的に反映される仕組みを持つ。ベンチマークテストの結果、蛋白質結合、小分子結合、酵素スキャフォールディング、DNA結合の4つの評価セットにおいて、従来のベースラインを上回る計算設計成功率と生成スループットを達成した。開発者によれば、設計成功率は5〜10倍に向上し、生成速度も5〜10倍に高速化したという。
技術・詳細
RFD4-Proteinaは、Nvidiaの化学・生物学向けAIプラットフォーム「NVIDIA BioNeMo」をベースにしており、プログラム可能な蛋白質設計と検索機能を組み合わせている。具体的には、IPDのガイド付き拡散モデル「RosettaFold Diffusion」と、Nvidiaの蛋白質・小分子ターゲット向けバインダー設計モデル「Proteina-Complexa」から派生している。また、Proteina-Complexaは、原子レベルの蛋白質設計向けAIモデル「La-Proteina」に基づいた事前学習済みフローベース生成モデルと、推論時の最適化を組み合わせて構築されている。
このモデルの有用性は、実際の研究現場でも報告されている。UWの博士課程候補生であるMeg Lunn-Halbert氏は、免疫系認識に重要な糖鎖(グリカン)の付着を精密に制御することができ、従来は数ヶ月かかっていた作業を1週間未満で完了できたと述べている。また、別の候補生であるSeth Woodbury氏は、数日で従来比で大幅に性能が向上した農薬分解酵素を設計できたとしている。
背景・業界の文脈
本プロジェクトは、2024年ノーベル化学賞を受賞したデビッド・ベイカー教授(IPD所長)らの主導により、BSD-3ライセンスのオープンソースとして提供される。開発資金は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(2025年11月付の助成金で25,748,619ドルを拠出)をはじめ、ハワード・ヒューズ医学研究所、グランサム財団、シュミット・サイエンスなどの支援を受けている。また、ジェン・スンおよびロリ・ファン財団からの計算リソースの提供が開発に不可欠であったという。
今後の展望
RFD4-Proteinaは、Amazon Bio Discovery、AnthropicのClaude Science、Google Cloud、Hugging Face、OpenAIなどのパートナーを通じて提供され、クラウドや科学計算ワークフローへの統合が進む。ベイカー教授は、自然界に存在する蛋白質の発見から、完全に新しい蛋白質を設計する時代へ移行したと指摘している。今後は、新薬開発の加速だけでなく、プラスチック分解酵素やバイオプラスチックの製造など、医療以外の持続可能性や材料科学の分野への応用が期待されている。
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