主要成果
研究チームは、寒冷地の水力ダムにおける氷の引き抜き損傷を軽減するため、親水性表面を備えた二層構造のポリウレタン-尿素(PUU)防氷コーティングを開発しました。このコーティング(BS750処方)は、–20 °Cにおいてわずか2 kPaという超低氷付着強度(氷せん断強度)を実現し、温度が–40 °Cまで低下しても11 kPaに抑えられることが確認されました。これにより、重力や風などの自然な力によって氷が容易に脱落することが実証されています。
技術・詳細
本技術の最大の特徴は、親水性成分をマトリックス全体に分散させるのではなく、表面層のみに配置した二層構造にある点です。構成は以下の通りです。
- ベース層:ポリアスパルテートエステル(F420)、ポリカプロラクトン(PCL)トリオール、HDIトリマー、およびNCO末端プレポリマーで構成されています。
- 親水性表面層:メトキシポリエチレングリコール(MPEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、およびHDIトリマーをベース層にグラフトおよび架橋させることで形成されます。
走査電子顕微鏡(SEM)分析では、表面に多数の隆起状の突起が確認され、最適化されたBS750処方において、これらの突起がより顕著かつ高密度に配置されていることが判明しました。また、示差走査熱量測定(DSC)では–22.5 °Cに吸熱ピークが認められ、これは結合水の相変化に対応しています。この「凍結しない結合水」または界面の緩い氷が潤滑的な水和層として機能し、氷の脱離を促進していると考えられています。
背景・業界の文脈
寒冷地のコンクリートダムは、凍結や高湿度環境に常にさらされており、断熱層に氷が付着すると、氷の引き抜き荷重によって構造的な損傷が発生します。従来の受動的な防氷戦略として、超撥水コーティングや滑り性の高い潤滑剤注入表面(SLIPS)などが検討されてきましたが、これらは高湿度条件下での防氷性の喪失、時間の経過に伴う潤滑剤の枯渇、あるいはフッ素系材料による環境負荷といった課題を抱えていました。
今後の展望
開発されたBS750コーティングは、UV老化、加熱、凍結、サンドペーパーによる摩耗、落砂摩耗、および長期凍結曝露を含む一連の耐久性試験後も、氷せん断強度を10 kPa以下に維持する安定した性能を示しました。フッ素化合物や浸出する潤滑剤を使用せず、機械的耐久性と超低氷付着強度を両立させたこの二層PUUコーティングは、寒冷地の水力インフラにおける断熱層向けの魅力的な受動的防氷ソリューションになると期待されています。
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