主要成果
北京理工大学の曹茂盛チームと東南大学は、磁場退火によって高エントロピー合金(HEA)の局所的な原子配列を制御し、電磁波吸収性能を劇的に向上させることに成功した。特にFeCoNiCr系のサンプル(4E5-r)において、厚さ1.59 mmで反射損失(RL)最小値−72.30 dB、最大有効吸収帯域(EAB)4.40 GHzという極めて高い性能を記録した。また、85 ℃の高温環境下においてもEABの保持率が92.7%に達し、優れた耐熱安定性を示した。さらに、この材料を適用したU型マイクロストリップパッチアンテナの基板では、厚さ2.0 mmでS11最小値−55.882 dB(インピーダンス帯域1.878 GHz)を達成し、デバイスレベルでの実用性を検証している。
技術・詳細
研究チームは「二段階熱処理」というアプローチを採用した。第一段階では、酸化グラフェン上に1800 ℃、500ミリ秒という極めて短時間の「快速焦耳加熱(急速ジュール加熱)」を施し、FeCoNi、FeCoNiCr、FeCoNiCrCuの3系のHEAナノ粒子を合成した。第二段階では、600 ℃で0.5時間の磁場退火(0/0.5/0.95 T)を行い、化学的短程有序(SRO)を誘導した。
解析の結果、磁場退火はCoを中心とした局所的な原子再配列を促し、Co-Coの富集とCo-Cr/Co-Feの貧化を引き起こすことが判明した。第一原理計算(DFT)および原子モデル(VASP→DeepMD→LAMMPS)を用いた検証により、この局所的な配位構造の変化が電荷分布とスピン分極を決定し、誘電損失と磁気損失のバランスを最適化してインピーダンス整合性を高めたことが明らかになった。具体的に4E5-rでは、インピーダンス比|Zin/Z0|が0.9996という理想的な整合状態に達している。
背景・業界の文脈
5G/6G通信やレーダー、IoTの普及に伴い、6 GHz以下の低周波帯で動作し、かつ「薄型」で「耐熱性」を持つ電磁波吸収材料の需要が高まっている。しかし、低周波帯では波長が長いため吸収体が厚くなりがちであり、また材料の成分・導電率・界面の相互作用が複雑に絡み合うため、性能を精密に制御することが困難であった。特に、局所的な原子配列であるSROが電磁応答に与える影響については、これまで体系的な知見が不足していた。
今後の展望
本研究は、磁場退火(MFA)がマイクロ波応答を調整するための有効なプロセス変数であることを立証した。また、実測した分散パラメータをベースに機械学習で最適化したメタ表面(超表面)の設計を行い、4.69 GHz付近でRLmin約−18.55 dB(有効吸収帯域4.12–5.43 GHz)を実現した。これにより、サブ6 GHz帯の低周波吸収をチップ統合やクロストーク抑制などの具体的なアプリケーションへ適用する道が開かれた。原子レベルの設計からデバイス統合までを完結させた本手法は、次世代の電磁波遮蔽・吸収材料の開発において重要な指針となる。
元記事: https://www.sohu.com/a/1092959957_122940509
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