主要成果
マサチューセッツ大学アマースト校のJun Yao准教授とSiqi Wang博士らは、コネチカット大学と共同で、心筋細胞の拍動を電気に変換する「バイオハイブリッド・メッシュ・ハーベスター」を開発しました。このデバイスは、従来の発電機のように臓器の表面に貼り付けるのではなく、超薄型メッシュの中に心筋細胞を培養して組織とデバイスを一体化させる手法を採用しています。本研究の結果は、2026年10月発行のScience Advances(Vol. 12, Issue 41)に掲載されました。
技術・詳細
開発されたメッシュは7 mm × 8 mmの面積を持ち、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の微小リボンが16行×4列に配置されています。各PZT素子のサイズは約50 μm幅、約470 μm長で、長軸方向に4つの素子が直列に接続されて1つの発電ユニットを構成しています。メッシュの配線リボンは幅約20 μm、厚さわずか3.7 μmという極薄構造です。この構造は、1.5 μm厚のポリイミド(PI)下層、プラチナ(Pt)薄膜配線層、2 μm厚のSU-8絶縁保護層で構成されており、曲げ剛性は約3.42 × 10⁻¹³ N⋅m²と非常に低く、生体組織の変形に追従できる柔軟性を備えています。
製造プロセスでは、ゾルゲル法でPZT薄膜を形成した後、150°Cで150 kV/cmのDC電界を印加して分極処理を行っています。また、水素過酸化物溶液を用いてゲルマニウム犠牲層を溶解させることでシリコン基板からメッシュを切り離し、ポリ-D-リシンとマトリゲルで表面処理を施すことで、心筋細胞の接着性を高めています。事前の機械的変形テスト(歪み約0.1%)では、各PZT素子で平均0.49 ± 0.011 Vの開回路電圧パルスが確認されました。
背景・業界の文脈
心拍や呼吸などの運動を電気に変換する「エネルギーハーベスティング」は、植込み型医療機器の電源として長年研究されてきました。しかし、従来の圧電発電機はポリマーフィルムなどの支持基板に素子を形成して心臓表面に貼付する形式が多く、生体組織との剛性のミスマッチが課題でした。素材が硬すぎると組織の自然な動きを妨げるだけでなく、発電に必要な変形を十分に抽出できません。また、支持基板が体積の大部分を占めるため、単位体積あたりの出力密度が低くなる傾向にありました。
今後の展望
本研究では、多孔質のメッシュ構造を用いることで、細胞がメッシュの隙間に成長して配線を包み込む形となり、細胞の収縮が直接PZT素子の曲げに伝わる仕組みを実現しました。これにより、柔軟性と発電性能の両立を図っています。ただし、本成果はヒト細胞由来の培養心筋細胞を用いたin vitro(試験管内)での概念実証段階です。生体内で動作することや、実際にペースメーカーのバッテリーを代替できることはまだ実証されていません。
元記事: https://xenospectrum.com/en/biohybrid-mesh-piezoelectric-harvester-umass/
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