主要成果
AIアクセラレータの需要が爆発的に増加する中、それらに不可欠なABF(味の素ビルドアップフィルム)基板の供給不足が極めて深刻化しており、業界全体に大きな懸念を投げかけています。現在の予測では、2026年後半にはABF基板の供給不足が約10%に達し、2027年には約21%、そして2028年には40%を超える水準にまで悪化する可能性が指摘されています。これに対応するため、Ibiden、Unimicron、Samsung Electro-Mechanicsといった主要サプライヤーが、総額で数十億ドル規模の積極的な設備投資を計画・実行し、生産能力の増強を急いでいます。
技術・事業詳細
ABF基板は、高性能AIチップやサーバープロセッサにおいて、高速信号伝送と高密度配線を実現するための重要なパッケージング材料です。その供給不足は、AI半導体の生産拡大を直接的に阻害する要因となります。この危機的状況に対し、各社は以下のような具体的な増産計画を進めています。
- Ibiden(日本): 2026年から2028年の期間にかけ、総額5,000億円(約31億ドル)を投じ、AIサーバー向け基板の生産能力を2024年比で2.8倍に拡大する計画です。
- Unimicron(台湾): 2026年の設備投資額を過去最高の340億台湾ドル(約10.7億ドル)に引き上げ、主にABF基板の生産に注力しています。
- Samsung Electro-Mechanics(韓国): ABF基板生産に12億ドルを投じ、2027年第3四半期までに量産を開始する予定です。
また、ABFフィルムの市場シェアの95%以上を占める味の素(日本)は、2026年第2四半期には既にフル稼働状態にあり、需要の逼迫を背景に同年5月には顧客に対し約30%の値上げを通知しました。これは原材料側の供給制約とコスト上昇がサプライチェーン全体に波及していることを示しています。
背景・業界文脈
AIモデルの複雑化と大規模化に伴い、AIアクセラレータの性能要件は年々高まっています。これには、HBM(高帯域幅メモリ)との統合や、より多くのトランジスタを搭載するための大型チップデザインが必要とされ、結果としてより大きく、より複雑なABF基板が求められます。しかし、ABF基板の製造は高度な技術と設備、そして長いリードタイムを要するため、急激な需要増加への対応が困難となっています。特に、基板材料であるABFフィルムの供給元が実質的に味の素一社に集中していることも、供給ボトルネックの一因となっています。
今後の展望
主要メーカーによる大規模な設備投資は、長期的な供給不足の緩和に寄与すると期待されますが、これらの投資が実際の生産能力として市場に供給されるまでには時間を要します。特に2028年までの深刻な供給不足予測は、AI半導体業界全体の成長ペースに影響を及ぼす可能性があります。ABF基板の安定供給は、次世代AIインフラ構築の鍵であり、サプライチェーン全体のレジリエンス強化に向けたさらなる協調と投資が求められるでしょう。また、材料メーカーの多角化や代替材料の開発も、今後の重要な課題となります。
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