主要成果
韓国化学技術研究院(KRICT)のKang Young-guおよびPark Myung-suシニア研究員らによる研究チームは、全固体電池向けの次世代製造技術である「転写プリント(transfer-printing)」法を開発した。この技術を用いて、平均厚さ15マイクロメートル、厚さのばらつきが約1マイクロメートルという極めて均一な固体電解質膜を、合計面積120平方センチメートル(幅6センチメートル×長さ20センチメートル)の広範囲にわたって形成することに成功した。
性能面では、この転写プリント法で製造したセルは、100回の充放電サイクル後に初期容量の83.6%を維持した。これは、従来の直接塗布法によるセルの容量維持率36.1%を47.5ポイント上回る数値である。また、リチウムイオン伝導度は従来のポリエチレンセパレーターベースの比較群より約50%高く、リチウムイオン輸送数は約2倍に達した。
技術・詳細
本技術は、ガーネット型酸化物固体電解質であるLLZTOを使用している。最大の特徴は、電解質膜を一度別の基板上に形成し、それをステッカーのように剥がして電極に貼り付ける点にある。具体的には、専用の基板に固体電解質を薄くコーティングして乾燥させ、ローラーを用いて電極上にプレスして転写させる。
材料選定においては、材料間の適合性を定量的に測定する指標である「ハンセン溶解度パラメータ(HSP)」を適用した。これにより、コーティング時の均一な拡散と、転写時のスムーズな剥離を最適化する材料組み合わせをデータに基づいて設計し、試行錯誤の回数を削減した。
安全性試験では、150度で2時間30分間の加熱試験を行った際、転写プリント法によるポーチ型セルは安定した電圧を維持した。対して、従来のポリエチレンセパレーターを用いたセルは、セパレーターの収縮による内部短絡が発生し、約10分以内に電圧が急落した。
背景・業界の文脈
全固体電池は、従来のリチウムイオン電池に使用される液体電解質を固体材料に置き換えることで、火災リスクの低減とエネルギー密度の向上を実現できるため、電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵システム(ESS)の基幹技術として注目されている。
しかし、商業化への大きな壁となっていたのが、薄く均一な固体電解質膜の製造である。従来の製造法では、膜の破断を防ぐために70〜120マイクロメートルの厚さが必要であった。また、液体状の電解質を直接電極に塗布すると、材料が内部に浸透して電極を変形させ、厚みが不均一になるという課題があった。従来の直接塗布法では、狭い面積であっても厚みが10〜25マイクロメートルの範囲で変動していた。
今後の展望
本技術は、ロール・ツー・ロール(Roll-to-Roll)の連続生産プロセスと組み合わせることで、全固体電池の製造効率を大幅に向上させることが期待されている。KRICTのKang研究員は、電極への直接塗布で発生する欠陥を減らせるため、大面積製造における不良率の低下と歩留まりの向上が見込めると述べている。
また、KRICTのShin Seok-min所長は、今回のHSPを用いた予測ノウハウをAIと組み合わせることで、保護層や機能性コーティング層など、二次電池向けの様々な薄膜製造に応用したいとしている。なお、実用化に向けては、長期的なサイクル寿命、生産歩留まり、および製造コストのさらなる検証が必要とされる。本研究成果は、学術誌『Advanced Functional Materials』の9月号に掲載された。
元記事: https://biz.heraldcorp.com/article/10914778
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