主要成果
南京工業大学および共同研究機関が開発した複合固体電解質「PLAP」は、全固体リチウム電池における室温イオン伝導率3.8 × 10⁻⁴ S/cmという極めて高い数値を記録した。対称セルを用いた試験では、10 mA/cm²という厳しい電流密度において750時間のplating/stripping(リチウムの析出・溶解)を維持し、リチウム鉄リン酸(LFP)を用いたフルセルでは、2,000サイクル後も大部分の容量を保持した。これにより、固体電解質におけるイオン伝導率と機械的強度のトレードオフ、および界面でのイオン・トラッピングという2つの大きなボトルネックの解消を目指している。
技術・詳細
PLAPは、事前リチウム化(prelithiation)を施したポリウレタンポリマーに、NASICON型セラミック材料であるLi₁.₅Al₀.₅Ge₀.₅P₃O₁₂(LAGP)をフィラーとして配合した材料である。従来のポリウレタン-LAGP系では、ポリマー鎖末端の親電子的な水酸基(-OH)がリチウムイオンを強く拘束し、界面電荷移動抵抗が増大して有効なリチウムイオン輸送数が低下するという問題があった。
研究チームは、重合前に水酸化リチウムを用いてポリウレタンのソフトセグメント末端の水酸基をリチウムアルコキシド基に変換する「末端事前リチウム化」を実施した。この化学的処理により、界面でのイオン拘束を回避している。最適化された膜(LAGP 40 wt%含有)の特性は以下の通りである。
- 機械的特性:引張強度 約5.47 MPa、破断伸び 192.4%
- 熱的特性:ガラス転移温度 約−43 °C、分解開始温度 約260 °C(5%重量減少基準)
- 輸送特性:80 °Cでイオン伝導率 1.01 × 10⁻³ S/cmに達し、活性化エネルギーは約15.9 kJ/mol
背景・業界の文脈
全固体電池は、従来の液系電解質を固体に置き換えることで安全性を高め、エネルギー密度を向上させることが期待されている。しかし、無機セラミック電解質(LAGPなど)は伝導率が高く安定しているが脆く、電極との接触性が悪い。一方で、ポリマー電解質(ポリエチレンオキシドやポリウレタンなど)は柔軟で加工性に優れるが、室温でのイオン伝導率が一般的に10⁻⁵ S/cm以下と低い。これらを混合した複合電解質が一般的だが、フィラーを増やしすぎるとポリマーネットワークが分断されて機械的強度が低下し、リチウム塩を増やしすぎると副反応を誘発するというジレンマがあった。
今後の展望
本研究では、LAGP含有量を10〜80 wt%で検証し、伝導率(80 wt%で最大 8.5 × 10⁻⁴ S/cm)と引張強度(10 wt%で最大 8.0 MPa)のバランスが取れた40 wt%の組成を特定した。この強度はリチウムデンドライトの成長を抑制する閾値になると著者は述べている。未処理の水酸基末端アナログが伝導率10⁻⁶ S/cm程度で100時間以内に激しい分極を示したのに対し、PLAPは大幅な性能向上を実現しており、高速充電が可能な全固体電池の実現に向けた重要な一歩となる。
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