主要成果
研究チームは、システイン標的のケモプロテオミクス・スクリーニングを用い、Cereblon(CRBN)の正統的(オルソステリック)サイトから離れた位置にある、隠れたアロステリックポケットのCys287に結合する共有結合性リガンドを同定しました。特にリード化合物であるVVD-105917は、IMiD(免疫調節薬)およびCELMoD(標的タンパク質分解誘導剤)によって駆動されるネオ基質の分解を阻害するパン・インヒビターとして機能することが明らかになりました。
技術・詳細
クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)による構造解析の結果、VVD-105917がCys287に共有結合することで、CRBNが不活性な「オープン」コンフォメーション(構造)にトラップされることが判明しました。この構造解析により、これまで観察されていなかったN末端セグメントとセンサーループの挙動が解明されました。
また、リガンドを添加する順番を変えた連続インキュベーション実験において、構造的な結果が添加順に依存することが示されました。これは、強力なCELMoDによって誘導される構造の「閉鎖」であっても、アロステリックな結合によって上書き(オーバーライド)され、不活性状態へ導けることを意味しています。一方で、同じCys287ポケットに結合する別のリガンドでは、閉鎖をブロックするのではなく逆に促進するという正反対の効果が報告されており、この部位がメカニズム的に「サイン・スイッチ(切り替え)」可能であることが示唆されました。
背景・業界の文脈
サリドマイド誘導体のCRBNモジュレーターは、CRL4-CRBN E3ユビキチンリガーゼを誘導して疾患の原因となるネオ基質を分解させる、臨床的に非常に影響力の大きい標的タンパク質分解(TPD)治療薬です。しかし、現在利用可能なすべてのCRBN標的IMiDおよびCELMoDは、単一のオルソステリックポケットに結合しており、CRBNが持つ多様な構造的景観(コンフォメーション・ランドスケープ)の大部分が、薬理学的に活用されないままとなっていました。
今後の展望
今回の発見は、共有結合ケモプロテオミクスが、E3リガーゼの構造スイッチを発見し、それを制御するための有効な戦略になることを証明しました。特定のアロステリックサイトを標的とすることで、従来の正統的サイトを標的とする薬剤とは異なる機序でタンパク質分解を制御できる可能性が開かれました。
元記事: https://www.biorxiv.org/content/10.64898/2026.10.10.758245v1
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