主要成果
欧州宇宙機関(ESA)は、月面着陸機「Argonaut」などのペイロードデッキから貨物を搬出するための専用クレーン「Loader」を開発した。このクレーンは最大1000kgの貨物を吊り上げ、着陸機から最大6メートル離れた地点まで運搬・配置できる能力を持つ。本プロジェクトは、ルーマニアの研究機関COMOTIとInitium Spaceが共同で開発し、ESAのTechnology Development Elementによる支援を受けている。
技術・詳細
Loaderは、限られたスペースに収めるため、折り畳まれた状態で着陸機に搭載され、月面到達後に展開される設計となっている。専用のケーブル管理システムと厳密に定義された展開シーケンスにより、収納時のコンパクトさと展開後の制御性の両立を実現した。また、着陸機が傾斜地に接地した場合でも、特殊なレベリングシステムによってクレーン本体を垂直に保持することが可能である。
アーム構造は2つのジョイントで接続されたロングアームで構成され、先端には2種類のグリッパーを備えている。一つは電力を必要とせずロック可能なパッシブ・スプリング式グリッパーであり、もう一つはバッテリー駆動で、貨物を回転させて精密な位置合わせを行うためのグリッパーである。
性能検証のため、オランダのESA惑星ロボティクス研究所にて縮小モデルによる試験が行われた。このモデルは地球重力下で30kg(月面換算で180kg相当)の吊り上げが可能であり、機能性と精度の検証に用いられた。実機はモデルの2倍以上のサイズとなり、地球の6分の1という月面の低重力を利用することで、最大1トン(1000kg)の資材搬送を実現する。
背景・業界の文脈
ESAのArgonaut着陸機は、最大1500kgの貨物を月面に運ぶ能力を持つ。運搬される貨物は、月面探査車(ローバー)や科学観測機器、月面インフラ用の建設ブロックなど多岐にわたる。特に精密な科学観測機器などの場合、干渉のない測定を行うために着陸機から数メートルの距離に配置する必要があるが、これは一般的なロボットアームのリーチを大幅に超えるため、Loaderのような専用の搬出装置が必要とされていた。
今後の展望
COMOTIのDaniel Useriu氏は、デモンストレーターによって初期の期待値を達成、あるいは一部で上回る成果を得られたと述べている。今後は、クレーンのさらなる洗練に向けて多くの課題が残っているとしているが、今回のデモンストレーターが次段階への強固な基盤になると評価している。
元記事: https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2026/10/Moon_crane_to_take_a_load_off_lunar_landers
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