主要成果
ノースウェスタン大学、UTサウスウェスタン、UTヒューストンの研究チームは、長期の宇宙滞在後における心臓の適応能力を調査し、宇宙飛行士が火星の重力環境(地球の約3分の1)にさらされても、心血管系に重大な負荷がかからないことを突き止めた。本研究は、長期の宇宙滞在後に模擬的な火星重力(simulated Martian gravity)に対して心臓がどのように反応するかを調査した世界初の事例となる。
技術・詳細
研究チームは、ISSに約6カ月間滞在した13名の宇宙飛行士を対象に、ミッション前、最中、終了後の心エコー検査(超音波検査)を実施した。ISS滞在中は、宇宙飛行士同士で数週間ごとにスキャンを行い、そのデータを地球へ送信してリアルタイムでモニタリングした。
心機能の推移については、以下の傾向が確認された。
- 滞在開始から2週間:心充満(心拍間に心臓に入る血液量)および一回拍出量(心収縮時に送り出される血液量)などの心血管パフォーマンスが低下した。
- 滞在継続後:心血管系が環境に適応し、心充満と一回拍出量は徐々に改善し、打ち上げ前のレベルに近づいた。
また、地球帰還後の模擬火星重力テストにおいても、心血管系に有意な負担は見られなかった。この適応を支えた要因として、NASAの「Exercise Countermeasures」プログラムによる徹底した運動習慣が挙げられている。宇宙飛行士は1日最大2時間、心血管系を強化する持久力トレーニング(30〜45分)と、筋肉量と筋力を維持するレジスタンストレーニング(60〜75分)を組み合わせて実施していた。
背景・業界の文脈
無重量環境では、心臓が重力に抗して血液を循環させる必要がなくなり、心筋を含む筋肉が萎縮する。また、重力環境に戻った際、血液が下半身に集まることで血圧が急降下し、めまいや立ちくらみを起こす「起立性低血圧(orthostatic hypotension)」が課題となっていた。火星探査においては、無重量状態から火星の重力(地球の約38%)へ移行した際に、心臓が適切に機能し続けられるかが大きな懸念事項となっていた。
今後の展望
本研究の結果は、適切な運動プログラムを維持することで、心臓が長期の無重量状態に適応し、その後再び重力環境下で機能できることを示唆している。ノースウェスタン大学のジェームズ・トーマス博士は、今回の知見により、人類が火星まで旅をし、現地に到達して表面で実際に活動できると考える根拠が得られたと述べている。
元記事: https://sciencedaily.com/releases/2026/10/261020085016.htm
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