主要成果
韓国エネルギー研究院(KIER)の研究チームは、ペロブスカイト太陽電池の動作寿命を大幅に延ばす新しい触媒プロセスを開発した。このプロセスを適用したチャンピオンデバイスは、25.24%の電力変換効率(PCE)、1.175 Vの開放電圧、25.83 mA/cm²の短絡電流密度、および83.21%のフィルファクターを達成した。また、1サン(one-sun)照射下での安定化出力は25.1%を記録している。
特筆すべきは、過酷な環境下での安定性向上である。500時間の連続動作後でも初期効率の90%以上を保持し、さらに温度85℃、相対湿度85%の加速高温多湿試験(damp-heat testing)においても、初期効率の95%を維持することに成功した。
技術・詳細
本技術の核心は、酸化ニッケル(NiOx)を触媒として利用し、不要なリチウムイオンを抽出・除去するプロセスにある。ペロブスカイト太陽電池の正孔輸送層(HTL)には、通常、導電性を高めて電荷輸送を促進するためにリチウムベースの塩や添加剤が用いられる。しかし、これらの物質は揮発性が高く、実際の動作環境(特に高温多湿下)では蒸発や移動が起こり、層間の界面に空隙や構造的欠陥が生じてデバイスの劣化を早める原因となっていた。
研究チームが開発した手法では、まずリチウム塩を一時的に使用して必要な化学反応を促進させ、その後、NiOx粉末を用いてリチウムイオンを捕捉し、ろ過によって触媒とともに除去する。具体的には、以下の成果が得られている。
- 従来の添加剤である4-tert-ブチルピリジン(tBP)を使用せず、5秒未満で正孔輸送材料(spiro-OMeTAD)の酸化が可能になった。
- リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の溶解を促進しつつリチウムイオンを捕捉し、除去できる。
- HTLの電気伝導率が2.5倍に向上し、より均一な薄膜形成と電荷抽出の改善を実現した。
背景・業界の文脈
ペロブスカイト太陽電池において、リチウム塩などの添加剤を完全に排除したり、代替物質に置き換えたりしながら同等の効率を維持する戦略は、これまで提案されていなかった。リチウムイオンが制御不能な形でセル内部に拡散することが寿命短縮の大きな要因となっており、この課題の解決が商用化への大きな壁となっていた。
今後の展望
プロジェクトリーダーのSe Jin Ahn氏は、触媒を用いて必要な反応を誘導した後に、その触媒自体をろ過で除去するというアプローチは、従来の作製手法の常識を超えたものであると述べている。この技術は、ペロブスカイトタンデム太陽電池の寿命に関する持続的な課題を解決し、商用化への道を切り拓く重要な節目になると期待される。なお、KIERの別のチームは、ペロブスカイトをトップセル、CIGS(銅インジウムガリウムセレン)をボトムセルとしたタンデム太陽電池で、26.7%という記録的な変換効率を達成している。
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