主要成果
Syntax Bio社は、同社の合成生物学プラットフォーム「Cellgorithm」を用いて、ヒトiPSCを膵β細胞(インスリンを分泌する細胞)へと分化させるプロセスを4日間に短縮した。この研究成果は、2026年10月20日から22日にかけて京都国際会館で開催された「ISSCR iPSC 20周年シンポジウム」にて、口頭発表およびポスター発表(Poster 288)として公開された。
技術・詳細
Cellgorithmは、CRISPR活性化(CRISPRa)を利用して、ゲノムを切断または編集することなく、細胞が本来持っている遺伝子スイッチをオンにする技術である。人間が胎児期に分化する過程を模倣し、一回の過剰発現DNA指示によって、特定の遺伝子を制御されたタイミングと順序で起動させる。
研究チームは、29の膵系遺伝子から抽出した29のバリアントを含む170以上のCellgorithmバリアントを3つのスクリーニングでテストした。各バリアントは、5回以下のタイミング設定ステップで最大10個の遺伝子を活性化させる。シングルセルRNAシーケンシングおよびタンパク質発現解析の結果、特定の細胞が4日以内に内分泌前駆細胞および膵β細胞様状態へと誘導されたことが確認された。一方で、後続段階の指示が含まれていても、細胞が中間段階で停滞する「グリッドロック(停滞)」状態が発生するケースも確認されており、活性化させる遺伝子の種類とタイミングが重要であることが示された。
背景・業界の文脈
再生医療における細胞製造の最大のボトルネックは、分化プロセスが非常に低速で労働集約的であることだ。従来の分化手法では数ヶ月を要する場合があるが、Cellgorithmのようなプログラム可能なアプローチにより、これを数日または数週間に短縮できる。また、このプラットフォームで得られたデータは、ヒトの細胞系譜ツリーのマップとして蓄積され、次なる細胞状態への効率的な経路を予測するためのフィードバックとして活用される仕組みとなっている。
今後の展望
同社は、Breakthrough T1Dの業界発見・開発パートナーシップ(IDDP)による支援を受け、膵β細胞プログラムの「Aim 1(スクリーニングと候補の選定)」を完了した。現在は「Aim 2」に移行しており、選定されたCellgorithmの最適化、製造スケールアップのためのプロセス開発、およびメイヨークリニックとの協力による機能評価と前臨床評価に注力している。これにより、1型糖尿病患者に対する革新的な細胞療法の実現を目指している。
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