主要成果
神奈川県相模原市に拠点を置く光学ガラスメーカーのオハラは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発した火星衛星探査機「MMX」に同社の光学ガラスが採用されたことを発表した。MMXは2026年10月20日に「H3」ロケット10号機で打ち上げられており、火星の衛星「フォボス」から表面物質を採取して地球へ持ち帰るという、世界初となるサンプルリターンミッションを目指している。
技術・詳細
オハラの光学ガラスは、MMXに搭載された2つの主要な観測装置に使用されている。
- 広角分光カメラ「OROCHI(オロチ)」: 衛星表面で反射した可視光を複数の波長で撮影し、地形や物質の分布を調査する装置。フォボス全体やサンプル採取地点周辺の有機物、含水鉱物などの調査に用いられ、オハラの光学ガラスが精密な画像撮影を可能にするレンズとして採用された。
- ラマン分光器「RAX」: フランス国立宇宙研究センター(CNES)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同開発した小型探査車「IDEFIX(イデフィックス)」に搭載され、フォボス表面の鉱物組成を分析する装置。ここにはオハラの「耐放射線光学ガラス」が採用されている。
特に「RAX」に採用された耐放射線光学ガラスは、宇宙空間で放射線を浴びた際にガラスが着色し、光の透過率が低下する現象を抑制する素材である。同社によれば、過酷な放射線環境下においても透過率がほとんど変化せず、長期間の探査においても観測装置の光学性能を維持できるとしている。
背景・業界の文脈
MMXのミッションにおいて、小型探査車「IDEFIX」は探査機本体に先駆けてフォボスに着地し、表面を覆う堆積物「レゴリス」の性質を調査する役割を担う。この観測結果は、その後の探査機本体の着陸およびサンプル採取に伴うリスクを低減させるために活用される。こうした極限環境での観測には、素材レベルでの高い信頼性が不可欠となる。
今後の展望
オハラの光学ガラスは、これまでも多くの宇宙・天文プロジェクトに採用されてきた実績を持つ。1973年のNASA「スカイラブ」を皮切りに、すばる望遠鏡の主焦点カメラ(SC)や超広視野主焦点カメラ(HSC)、NASAの火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」などに搭載されている。また、2026年にはナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡のコロナグラフ装置および広視野観測装置への採用も予定されており、今後も素材面から宇宙探査の進化を支えることが期待される。
元記事: https://sorae.info/space/20261021-ohara-mmx.html
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