主要成果
光照射によってCas9/sgRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体を放出する脂質ベースのナノ粒子プラットフォームが開発されました。この技術を用いてVEGFA遺伝子を編集した結果、脈絡膜新生血管(CNV)の抑制に成功しました。ラットのレーザー誘発CNVモデルを用いた試験では、単回の硝子体内注射と光照射を組み合わせることで、対照群や光照射なしの群と比較して、血管漏出およびCNVに関連する構造的異常が有意に減少したことが示されました。また、網膜の安全性評価において、ナノ粒子に起因する明らかな構造的異常は認められませんでした。
技術・詳細
開発されたナノ粒子の物理的特性および性能は以下の通りです。
- 平均流体力学的直径:約130 nm
- 多分散指数(PDI):0.296(低多分散)
- sgRNA封入効率:90.33%
ヒト網膜色素上皮細胞を用いた試験では、光照射を行うことで、照射しない条件と比較してVEGFAの破壊範囲が拡大することが次世代シーケンシング(NGS)によって確認されました。これに伴い、VEGFAのmRNAおよびタンパク質の発現量も減少しています。このシステムにより、光を用いてVEGFA遺伝子の編集を空間的に制御することが可能となりました。
背景・業界の文脈
脈絡膜新生血管(CNV)は、不可逆的な視力喪失を招く主要な原因となります。現在、抗VEGF療法が一般的ですが、この治療法は頻回な硝子体内注射を必要とするため、患者への治療負担が大きく、注射に伴う累積的なリスクも課題となっていました。ゲノム編集によってVEGFAを破壊できれば、単回投与で持続的な抑制効果が得られる可能性があります。しかし、VEGFAを無制限に喪失させると、脈絡膜毛細血管の萎縮を招き、網膜機能が損なわれる恐れがあるため、厳密に制御された編集手法の確立が臨床応用の大きな障壁となっていました。
今後の展望
本研究で示された光応答性LNPプラットフォームは、VEGFA駆動型の黄斑新生血管疾患に対する潜在的な治療戦略となります。光による制御を導入することで、必要な部位でのみゲノム編集を行う「空間的制御」が可能となり、安全性と治療効果の両立が期待されます。これにより、従来の頻回投与による治療負担を解消し、より安全で持続的な視力維持療法の実現に向けた基礎が構築されました。
元記事: https://www.biorxiv.org/content/10.64898/2026.10.24.761602v1
毎週の技術動向レポートを無料でお届け
各分野の分析レポートを読む価値があるかどうか一目で判断できるインフォグラフィックをメールで受け取れます。
📢 メールマガジンに無料登録(週刊・技術動向レポート)
ご登録いただくと、Troy-Technical から週刊で技術動向レポート(メールマガジン)をお届けします。
- 取得したメールアドレス・選択分野は配信目的にのみ使用します。
- 第三者へ提供することはありません。
- 配信はいつでも解除できます(各メール下部のリンクから)。
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
登録は1分・いつでも解除できます



