主要成果
プリンストン工学院、カリフォルニア大学サンディエゴ校、および韓国の成均館大学の研究チームが、ペロブスカイト太陽電池の製造過程で発生する結晶欠陥を解消し、発電性能を向上させる手法を開発した。本研究の結果は学術誌『Science』に掲載されており、この手法を適用したペロブスカイト結晶では、電子が太陽光から吸収した余剰エネルギーを保持できる時間が、未処理の材料と比較して約10倍に延びることが確認された。
技術・詳細
この技術の核心は、材料の凝固過程で結晶構造に生じる欠陥を大幅に減少させる化学的アプローチにある。具体的には、製造プロセスの初期段階で「臭化亜鉛」と「塩化メチルアンモニウム」の混合物を添加する。この2つの化学物質を組み合わせると、単独のときよりも融点が低くなる「共晶(eutectics)」という性質を持つ。揮発性共晶を導入することでペロブスカイト結晶の成長方法が変化し、従来のプロセスで製造されたフィルムよりも原子レベルの不完全さが少ない、より秩序ある格子構造が形成される。
太陽電池内部では、光子が電子にエネルギーを与えて励起状態にするが、結晶格子の欠陥はこの経路上の「トラップ」として機能し、エネルギーを熱として散逸させてしまう。今回の処理を施したペロブスカイトでは、電子がエネルギーを保持する時間が最大300マイクロ秒に達した。これは他の多くの半導体と比較して約10万倍という極めて長い時間であり、より効率的に電力を抽出できることを意味する。
背景・業界の文脈
現在、世界の太陽電池市場の主流であるシリコン製は耐久性に優れる一方、製造に多大なエネルギーを要するという課題がある。対してペロブスカイトは、液体前駆体からインクのように印刷して製造できるため、低コストかつ持続可能な量産が可能とされる。近年では、シリコンセルの上にペロブスカイト層を重ねる「タンデム型デバイス」の開発が進んでおり、単独の材料よりも約40%高い電力を生成できることが分かっている。しかし、印刷・積層プロセスにおいて原子レベルの欠陥が導入されやすく、それが性能向上のボトルネックとなっていた。
今後の展望
プリンストン大学のDane deQuilettes助教授によれば、今回の改善は、すでに存在する最先端のペロブスカイト太陽電池においてさえ、発電量を1%向上させる可能性があるという。AIの急激な普及に伴うデータセンターのインフラ整備などで世界的に電力需要が急増する中、ユーティリティスケールの太陽光発電においては、わずか1%の変換効率向上であっても、広大な設置面積にわたって累積すれば大幅な発電容量の増加につながる。欠陥の少ない効率的なペロブスカイト層の実現は、次世代のタンデムモジュールの量産化に向けた大きな前進となる。
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