主要成果
量子技術企業のNVisionは、世界で初めて個別にアドレス指定(制御)可能な有機分子スピン-光子インターフェースを実現し、その成果をNature誌で発表しました。これまでの分子スピンは個別にコヒーレントな制御を行うことができず、真の量子ビットとして機能させる上での障壁となっていましたが、今回の研究で単一分子レベルでの制御が可能となりました。また、同社は薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)フォトニクスのリーダーであるHyperLight社と提携し、この分子量子ビットを光集積回路(PIC)上に直接統合することを決定しました。
技術・詳細
NVisionが開発した「光集積量子回路(PIQC)」プラットフォームは、設計されたカルベン分子を量子ビットとして利用します。この分子量子ビットは、OLED材料のように薄膜としてPIC上に直接堆積させることが可能です。技術的な特徴は以下の通りです。
- 光接続によるデカップリング: 従来のモノリシックな量子アーキテクチャとは異なり、光リンクを用いて量子ビットを局所的な空間制約から切り離すことで、クロストークや制御の複雑さ、熱的なボトルネックを回避します。
- 動作環境と特性: 2K〜4Kという到達可能な極低温で動作し、精密な光周波数で光子をネイティブに放出するため、チップ内およびチップ間の量子もつれを直接的に実現できます。
- 高い耐損失性: 標準的なシリコンフォトニクスでの信頼性の高い動作を可能にするため、最大70%の光子損失を許容するように設計されています。
この分子設計を実現するため、NVisionは大規模な計算スクリーニングで150以上の候補分子を評価し、そのうち40種類を実際に合成して最適化を行いました。
背景・業界の文脈
従来の量子ハードウェア開発は、スケールアップのために数十年の歳月と数十億ドル規模の専用製造施設を必要とする方式に依存していました。しかし、NVisionのCEOであるSella Brosh博士は、有機化学を用いることで、既存のファウンドリ・インフラストラクチャを通じた明確なスケールアップ経路を確立できると主張しています。また、CTOのIlai Schwartz博士は、半導体ベースの量子ビットと比較して、分子レベルでの設計により、量子メモリ、ゲート速度、光子放出などの性能を単一分子内で調整できる設計自由度の高さを強調しています。
今後の展望
NVisionとHyperLightは、TFLN Chiplet™技術を量子アプリケーションに拡張し、高密度なチップスケールの量子接続を提供することを目指しています。今後のロードマップでは、2026年第4四半期に提携による最初のプロトタイプ集積チップの完成を予定しており、同年末までにはPIC上でのオンチップ性能の実演を行う計画です。長期的には、2030年までに1,000物理量子ビット、さらにはデータセンター形式で展開可能な1,000論理量子ビット(耐故障性量子ビット)の実現を目標としています。
元記事: https://thequantuminsider.com/2026/10/28/nvision-nature-molecular-qubits-hyperlight/
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