主要成果
IBMの研究チームは、120量子ビットを搭載した超伝導量子プロセッサ「IBM Nighthawk R1」2基を、4本の超伝導同軸ケーブルで接続することに成功しました。このリンクによる量子状態転送の平均フィデリティは99%に達し、最高で99.29%(不確かさ0.07パーセントポイント)を記録しました。また、異なるプロセッサ上の量子ビット間で制御Zゲート(Controlled-Z gate)操作を行い、量子もつれ状態を生成したことも実証されました。
技術・詳細
本システムでは、長さ約80センチメートルのアルミニウム製同軸ケーブルを4本使用し、極低温環境下で超伝導マイクロ波リンクとして機能させています。各接続点には専用の量子ビットと調整可能な結合デバイスが配置され、モジュール間の情報転送を制御しています。
性能評価において、単なる状態転送よりも複雑な「プロセッサ間での完全な操作」では、2回の状態転送、3つのローカル2量子ビットゲート、および単一量子ビット制御を組み合わせるため、エラー要因が増加します。その結果、完全な操作の平均フィデリティは94.75%(最高96.42%)となりました。また、チップを跨いで4量子ビットおよび6量子ビットの量子もつれ状態を生成し、測定誤差を統計的に補正した後のフィデリティは、それぞれ91.70%と90.87%に達しました。
背景・業界の文脈
量子コンピュータの規模を拡大する際、単一チップに量子ビットを詰め込むには物理的な限界があります。そこで、複数のプロセッサを連携させる「モジュール型」の構成が検討されています。従来の実験では少数の量子ビットと単一の接続を用いるものが主流でしたが、IBMは大規模なプロセッサ間でマルチチャネル(多チャンネル)の相互接続を実現した点に独自性があります。研究チームは、これが大規模な超伝導量子プロセッサ間におけるマルチチャネル量子相互接続の初のデモンストレーションであるとしています。
今後の展望
今回の実験では、開発速度を優先するため、各プロセッサの全240量子ビットではなく、接続部付近の限定的な量子ビットのみを配線・測定しています。実用化に向けては、プロセッサ間操作のフィデリティをさらに向上させる必要があり、量子ビットの安定性向上、磁気シールドの強化、および製造プロセスの改善が課題として挙げられています。また、接続部の信頼性を高めるため、ケーブルをプロセッサ表面に対して垂直に配置する設計が導入されており、今後の高密度接続への対応が進められます。
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