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半導体の種類と用途|半導体を学ぶ 概論②

SEMICONDUCTOR FRONT-END · INTRO 02

半導体の種類と用途
― 「何をさせたいか」で、材料も構造も工場も変わる

ひとことで「半導体」といっても、計算するチップ、記憶するチップ、電力を切り替えるチップ、光や動きを感じるチップでは、求められる性能がまったく違います。この回では、半導体を役割で7つに分け、それぞれがなぜその材料・その構造を選ぶのかを物理から説明します。最後に、それが前工程の違いにどうつながるかを整理します。

半導体前工程シリーズ 概論②/難易度 ★★☆(概論①を読んでいると理解しやすくなります)/最終更新 2026年10月31日

本記事の表記ルール

事実=公的機関・学術資料・企業の公式発表に記載のある内容(出典番号つき)
本稿の計算=明示した前提から本記事が計算した値
推測=出典から読み取れる範囲を超えた、本記事の見立て
未確定/将来=計画・ロードマップであり、実績が確認できていない事項
物理の一般原理(教科書で確立している内容)の説明は、とくにタグを付けずに書いています。

この回の学習目標
  • 半導体を「ロジック・メモリ・アナログ・パワー・センサー・光・高周波」の役割で分け、それぞれの代表例を言える
  • それぞれの役割が、なぜ違う材料・構造を必要とするのかを、物理のしくみで説明できる
  • 役割の違いが、前工程(微細化、積層、材料、ウェハの大きさ)の違いにどうつながるかを理解する

1. 半導体の種類と用途(3行でつかむ)

  • 半導体は、何をさせるか(役割)で大きく7つに分けられます。計算する(ロジック)、覚える(メモリ)、アナログ信号を扱う(アナログ)、電力を切り替える(パワー)、光や動きを感じる(センサー)、光を出す(光)、電波を扱う(高周波)です。
  • 役割が違えば、優先する性能が違います。計算するチップは「小さく速く」、パワー半導体は「高い電圧に耐える」、光るチップは「バンドギャップが光の色に合う」ことを優先します。
  • その結果、材料(シリコンか、SiC・GaNなどの化合物か)も、作り方(最先端の微細化か、縦に積むか、成熟した工程か)も変わります。

概論①では、半導体が「キャリアの数と通り道を制御できる物質」であることを見ました。この回では、その性質を何に使い、なぜ材料を使い分けるのかを見ていきます。

スマホ1台に、どうして違う材料が同居するのか

写真を加工するチップも、電波を送り出す部品も、充電器のスイッチも、同じ「半導体」です。それでも材料が違うのは、仕事の難しさが違うからです。

身近な場面欲しい働き材料を選ぶ理由の入口
スマホで計算する大量の小さなスイッチをそろえるSiは、電流を制御する界面と絶縁膜を精密に作り、大量に集積する技術が成熟している
電気自動車を走らせる高電圧を止め、大電流を少ない損失で通すSiCは強い電場に耐え、電圧を受け止める層を薄くできる
小型の充電器で電力を変換する高速に切り替え、損失を減らすGaN系HEMTは、強い電場への耐性と薄い電子の通り道を組み合わせる
電波を増幅して送る高周波信号を効率よく大きくするGaAs系・GaN系などを、出力・周波数・電源条件で選ぶ
LEDで照らす・光ファイバーで送る必要な色の光を効率よく出すInGaNやInP系の層構造などで、発光するエネルギーを調整する

読み進めるときは、「要求される仕事 → 役立つ材料の性質 → その性質を使う構造」の順に追ってください。まず用途のイメージをつかみ、緑色の「物理のツボ」で理由を確かめる読み方もできます。

「ロジック」と「SiC」は、同じ軸の分類ではない

ロジック・メモリ・パワーなどは仕事の名前、Si・SiC・GaNなどは材料の名前です。1つの材料が複数の仕事をし、同じ仕事にも複数の材料が使われます。この回の7つの役割は学習用の整理で、次のWSTSの市場区分と一対一に対応するものではありません。

2. 市場で見る半導体の地図

まず、お金の流れで全体をつかみましょう。世界の半導体市場の統計を取りまとめているWSTS(世界半導体市場統計)は、製品を7つの区分で集計しています。WSTS日本協議会が2026年6月2日に公表した春季予測から、区分ごとの数字を表にしました [1]。

WSTSの区分2025年 実績構成比(2025年)2026年 予測前年比(2026年予測)
ロジック2,995億ドル37.6%4,114億ドル+37.3%
メモリ2,300億ドル28.9%8,039億ドル+249.5%
アナログ865億ドル10.9%954億ドル+10.2%
マイクロ(MPU・MCUなど)849億ドル10.7%1,017億ドル+19.8%
光半導体430億ドル5.4%442億ドル+2.7%
ディスクリート(個別半導体)307億ドル3.9%332億ドル+8.0%
センサー・アクチュエータ209億ドル2.6%215億ドル+3.0%
合計7,956億ドル100%1兆5,112億ドル+89.9%

金額と前年比はWSTSの公表値です 事実。百万ドル単位の公表値を億ドルに丸めています。構成比は本稿で計算しました 本稿の計算。

この表から読み取れることが3つあります。

  1. ロジックとメモリで、2025年の市場の約3分の2を占めます 本稿の計算。
  2. 2026年の予測では、市場全体の増加分の約80%をメモリが占めます 本稿の計算。2026年はメモリの価格と需要が市場全体を大きく押し上げる、という予測です。WSTSは2026年8月6日の第2四半期の更新で、2026年通年の市場を約1兆6,550億ドルと計算し直しています [2] 事実。
  3. 一方、アナログ・パワー(ディスクリートの中心)・センサーは、金額は小さくても、多くの電子機器を支える部品です。
「予測」と「実績」の区別

2026年の数字は予測です 未確定/将来。2025年の数字も、集計する団体によって少し違います。たとえばSIA(米国半導体工業会)は、2025年の世界売上を7,917億ドル(前年比+25.6%)と発表しています [3]。この記事では、区分ごとの数字がそろっているWSTSの値で統一しています。

半導体の7つの役割と代表的な製品
図1 半導体の7つの役割と代表的な製品(概念図)

3. ロジック ― 計算するチップ

ロジックは、0と1の計算をするチップです。パソコンやスマホの頭脳であるCPU、画像処理やAIの計算をするGPU、それらを1つにまとめたSoC(システム・オン・チップ)が代表です。WSTSでは、CPUやマイコン(MCU)は「マイクロ」という別の区分で集計されています 解説。

ロジックで優先されるのは、同じ面積にどれだけ多くのトランジスタを詰め込めるかと、どれだけ少ない電力で速く動かせるかです。トランジスタの数の例を挙げます。

  • NVIDIAは、AI向けGPUのBlackwell世代について、接続した2つのダイで合計2,080億個のトランジスタを持ち、TSMCの4NPプロセスで製造すると発表しています [4] 事実。
  • Appleは、M4チップが280億個のトランジスタで、第2世代の3ナノメートル技術で作られると発表しています [5] 事実。
物理のツボ①:なぜ電圧を下げると、電力がぐっと減るのか

CMOSのロジック回路は、0と1が切り替わるたびに、配線やトランジスタのゲートにたまった電荷を充電・放電します。このとき使う電力(動的な電力)は、次の形で表されます。テキサス・インスツルメンツの技術資料にも、この形の式が載っています [6]。

P ∝ C × V2 × f

C は充電する容量(配線やゲートの「電荷のため込みやすさ」)、V は電源電圧、f は切り替えの回数(周波数)です。

ポイントは、電圧が2乗で効くことです。電圧を1.0 Vから0.8 Vに下げるだけで、動的な電力は0.64倍、つまり約36%減ります 本稿の計算。トランジスタの微細化は、容量Cや必要な電圧を下げる方向の工夫につながります。ただし、配線容量やリークもあるため、小さくすれば自動的に電力が下がるわけではありません。微細化が電力の面でも効くのは、このためです。

ただし、電圧を下げると一般に動作は遅くなり、0と1の余裕も減ります。低電圧でも速く動かすためにしきい値を下げると、オフ時のリーク電流が増えやすい、という別のトレードオフもあります。概論①で見たFinFETやGAAは、この漏れを抑えて、低い電圧で動かせるようにするための構造です。

このため、ロジックは最先端の微細化(プロセスノード)を真っ先に使う分野です。前工程では、EUV露光、GAAトランジスタ、多層の微細配線など、シリーズ第2部で扱う最新技術がほぼすべて投入されます。

なぜロジックの主役はSiなのか ― 「通す」と「止める」を同じ場所に作れる

電子が速く動ける材料なら、計算チップでも一番よいのでしょうか。ロジックでは、それだけでは足りません。小さな電圧でオン・オフを繰り返す素子を、何十億個も、ほぼ同じ特性で作ることが必要です。

Siの大きな強みは、表面に良質な二酸化シリコン(SiO2)の絶縁膜を作れることです。ゲートはこの膜を通して電場をかけ、Si側のキャリアを制御します。電流が漏れにくく、界面の欠陥によるばらつきを抑えられることが、たくさんのスイッチを集積する土台になります [25]。さらに、300 mmのSiウェハを製造する供給体制があり [30]、1枚のウェハから多くのチップを作る生産技術が積み重なっています。

Siの強みは、電流を制御する界面・絶縁・大量集積の組み合わせ
補図A Siの強みは、電流を制御する界面・絶縁・大量集積の組み合わせ(概念図)
「シリコンチップ」は、全部がSiでできているのではない

チップの中には、電流の通り道になる半導体、通してはいけない所を守る絶縁膜、信号をつなぐ金属があります。先端のゲートには、SiO2だけでなく、漏れを抑えながら電場で制御するためのhigh-k(高誘電率)材料も使われます [25]。材料1種類の性能より、異なる材料を組み合わせて狙った働きを作れることが重要です。

4. メモリ ― 覚えるチップ

メモリは、データを覚えておくチップです。大きく2種類あります。

  • 揮発性メモリ(DRAMなど):電源を切ると内容が消える。速い。コンピューターの作業机にあたる
  • 不揮発性メモリ(NANDフラッシュなど):電源を切っても内容が残る。大容量で安い。本棚にあたる

DRAM ― コンデンサーにためた電荷で覚える

DRAMのダイ写真
1メガビットDRAM(1990年前後の世代)のダイ写真。規則正しく並んだ区画の中に、メモリセルがびっしり詰まっています。
画像:ZeptoBars / Wikimedia Commons / CC BY 3.0

DRAMは、1個のトランジスタと1個のコンデンサーで1ビットを覚えます。コンデンサーに蓄えた電荷量に対応する2つの状態を、0と1として読み分けます。「電子が1個なら1、完全にゼロなら0」という意味ではありません。サムスンの用語解説も、蓄えた電荷が漏れるため、DRAMには定期的なリフレッシュが必要だと説明しています [7] 事実。

コンデンサーは、たまる電荷が少なすぎると0と1を見分けられません。セルを小さくしても電荷の量を保つため、DRAMのコンデンサーは細く深い筒のような形になっています 解説。前工程では、この深い穴を正確に掘る高アスペクト比エッチングと、穴の内側に均一な膜をつけるALD(原子層堆積)が重要になります(第2部で解説します)。

NANDフラッシュ ― 電子を閉じ込めて覚える

SSDの基板
SSD(ソリッドステートドライブ)の基板。並んでいる黒いパッケージがNANDフラッシュメモリで、データの読み書きを管理するコントローラーも載っています。
画像:MatteX / Wikimedia Commons(CC0)

NANDフラッシュは、トランジスタのゲートの下に電子を閉じ込める層を持っています。そこに電子が入っているかどうかで、トランジスタがオンになり始める電圧(しきい値電圧)が変わります。読み出すときは、そのしきい値電圧の違いで0と1を見分けます 解説。

物理のツボ②:絶縁膜の向こうへ、電子はどうやって入るのか

電子を閉じ込める層は、上下を絶縁膜で囲まれています。絶縁膜は電子を通さないはずなのに、どうやって電子を出し入れするのでしょうか。

答えは量子力学のトンネル効果です。電子は粒子であると同時に波でもあります。波は、壁がとても薄ければ、壁の向こう側にもわずかに染み出します。膜そのものを薄くするのではなく、高い電圧で電子が感じるエネルギー障壁の形を変えると、電子が壁を「すり抜ける」確率が急に大きくなります。これで電子を出し入れします 解説。

逆に言えば、電圧をかけていないときは、すり抜ける確率がほぼゼロなので、電子は何年も閉じ込められたままになります。これが「電源を切っても消えない」理由です。ただし、出し入れを繰り返すと絶縁膜が少しずつ傷むので、書き換えの回数には上限があります 解説。

1つのセルで閉じ込める電子の量を細かく分けると、1つのセルに何ビットも覚えさせることができます。3ビット(TLC)なら区別すべき状態は23 = 8段階、4ビット(QLC)なら16段階です 本稿の計算。段階が増えるほど、わずかな電子の量の違いを見分ける必要があります。

3D NAND ― 平らに並べるのをやめて、縦に積む

NANDは、セルを平面で小さくし続けることに限界が来て、セルを縦に何百層も積み上げる「3D NAND」に移りました。各社の公式発表から、積層数の例を挙げます。

  • SKハイニックスは2024年11月21日、321層の1テラビットTLC NANDの量産を始めたと発表しました [8] 事実。
  • キオクシアは2026年7月3日、332層の第10世代BiCS FLASHについて、積層によってビット密度が59%上がったと発表しています。この時点ではサンプル出荷の段階です [9] 事実。
  • サムスンは2024年4月に第9世代V-NANDの量産を始めたと発表しています。ただし、この発表では具体的な層数を明らかにしていません [10] 事実。
2D NANDと3D NANDの構造の違い
図2 2D NANDと3D NANDの構造の違い(概念図)

3D NANDでは、多数の層をまたぐ深い穴を、高い精度で形成する必要があります。すべての層を常に1回で貫くとは限らず、複数の積層部分に分けて接続する作り方もあります。前工程にとっては、成膜とエッチングの極限的な精度が問われる製品です(第2部のエッチングの回で詳しく扱います)。

同じSiでも、メモリでは「漏らさない材料」との組み合わせが主役

DRAMで覚えているのは電荷、NANDで読み分けているのは閉じ込めた電子によるしきい値の変化です。どちらもSiのトランジスタ技術を利用しますが、性能を左右するのはSiだけではありません。

DRAMでは、小さな場所に十分な電荷を蓄えるためのコンデンサー材料と立体形状が重要です。チャージトラップ型の3D NANDでは、Si系チャネルは電子を流す役、保持層は電子を閉じ込める役、絶縁膜は漏れを抑える役を担います。装置メーカーのKOKUSAI ELECTRICの構造例でも、Siチャネル、電荷を保持する窒化膜、複数の絶縁膜が分けて示されています [26]。

写真を長く残したいNANDと、計算中に素早く読み書きしたいDRAMでは、何を優先するかが違います。同じ土台のSiに、違う膜と構造を組み合わせることでも、仕事を作り分けられるのです。

HBM ― DRAMを縦に積んで、AIにデータを送り込む

AIの計算では、GPUがどれだけ速く計算できるかと同じくらい、メモリからどれだけ速くデータを運べるかが重要になります。そこで使われるのがHBM(高帯域幅メモリ)です。DRAMのチップを何枚も縦に積み、シリコンを貫通する電極(TSV)でつないで、GPUのすぐ隣に置きます。

  • 業界標準を決めるJEDECは、2025年4月16日に第4世代のHBM4の規格(JESD270-4)を公表しました。2048ビット幅のインターフェースで、1本あたり最大8 Gb/s、合計で最大2 TB/sの帯域を持ちます [11] 事実。
  • サムスンは2026年2月12日にHBM4の量産と顧客への出荷を始めたと発表しました [12]。マイクロンは2026年3月16日に、36GB・12段積みのHBM4を大量生産中と発表しています [13]。SKハイニックスは、2026年第2四半期にHBM4の大量出荷を始めたと決算で説明しています [14] 事実。

HBMの積層や接続の技術は、後工程シリーズの「HBM」「TSV」「ハイブリッドボンディング」の回で詳しく扱っています。前工程から見ると、HBMの土台は最先端のDRAMのチップそのものです。2026年のメモリ市場の急拡大の背景には、このAI向けの需要があると考えられます 推測。

5. アナログ ― 現実の世界とデジタルをつなぐチップ

オペアンプのダイ写真
アナログICの代表であるオペアンプ(演算増幅器)のダイ写真。ロジックのように同じ形が繰り返されるのではなく、大きさの違うトランジスタや抵抗が、用途に合わせて配置されています。
画像:Mister rf / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

音、温度、光、電池の電圧など、現実の世界の量は、0と1ではなく連続的に変わる値(アナログ)です。アナログ半導体は、こうした値を増幅する、0と1に変換する(AD変換)、電源の電圧を整える(電源IC)といった仕事をします。

アナログでは、ロジック以上に重く見る性能があります。

  • 正確さと安定性:信号をわずかでもゆがめない。温度が変わっても特性がずれない
  • 雑音の少なさ:小さな信号を、雑音に埋もれさせずに取り出す
  • 高めの電圧:電源ICなどは、数ボルト〜数十ボルトを扱う

トランジスタを小さくすると、電圧に耐えにくくなり、素子ごとの特性のばらつきも相対的に大きくなります。そのため、アナログは最先端の微細化をあまり必要とせず、成熟した世代の工程で作られることが多い分野です 解説。その代わり、コストの勝負になります。テキサス・インスツルメンツは、300 mmウェハの工場への投資について、自社のコスト優位をさらに広げるものだと説明しています [15] 事実。

アナログがSiを使う理由 ― わずかな違いを、正確に扱いたい

例えばイヤホンの小さな音声信号を増幅するとき、同じ入力なのに素子ごとに出力がばらばらでは困ります。Siの成熟した製造技術は、抵抗・容量・トランジスタを組み合わせ、特性をそろえたり測定・補正したりする土台になります。電源ICなどでは、低電圧の制御回路と、より高い電圧を扱う素子を同じチップに組み合わせる作り方もあります 解説。

したがって、アナログの材料選びは「電子が一番速いもの」だけでは決まりません。正確さ、雑音、扱える電圧、必要な回路を一緒に作れること、コストを合わせて選びます。すべてのアナログ回路が古い工程を使うわけではなく、高速変換器や高周波回路では別の選択もあります。

6. パワー半導体 ― 電力を切り替えるチップ

IGBTモジュールの内部
カバーを外したIGBTモジュール。四角いチップ(IGBTとダイオード)が並び、太いワイヤで大きな電流を流せるようにつながっています。
画像:Pslawinski / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0

パワー半導体は、電気自動車のモーター、太陽光発電、鉄道、エアコン、データセンターの電源などで、大きな電力を高速にオン・オフして、電圧や周波数を変換するチップです。ここでの「スイッチ」は、ロジックの1 V前後ではなく、EVや産業機器の例では数百〜数千ボルトや大電流を扱います。小型電源から鉄道まで製品の範囲が広く、すべてが同じ電圧・電流ではありません。

インバーターは、電池とモーターの「電力の受け渡し役」

EVの走行用電池が出すのは、+と−が決まった直流です。一方、多くのEVの駆動モーターは、U・V・Wという3系統(三相)の電流で回転する磁界を作り、回転する部分を動かします。そこで、電池とモーターの間にインバーターを置きます [35]。

インバーターの仕事は、電池の直流をもとに、モーターへ流す電流の向き・大きさ・タイミングを制御することです。「直流を交流に変える箱」と呼ぶだけでなく、走るために必要な電気を、その瞬間のモーターの状態に合わせて渡す装置、と考えてください。

EVが走るときと、回生ブレーキのときのエネルギーの流れ
補図D EVが走るときと、回生ブレーキのときのエネルギーの流れ(概念図)

アクセルを踏むと、中で何が変わる?

アクセルは、電池の電気をそのままモーターへ大量に流す機械的なスイッチではありません。運転者が求める駆動力を制御回路へ伝え、制御回路がモーターの回転位置や電流などを見ながら、インバーターを動かします。

インバーターの中では、SiのIGBTやSiC MOSFETなどの電力スイッチを高速にオン・オフし、モーターの各相に電圧をかけます。典型的な三相の構成では、上下2個ずつのスイッチを3組使います。実際には複数チップを並列にしたり、別の回路構成を使ったりする場合もあります。

細かい電圧パルスを作っても、モーターの巻線には電流の急変を抑える性質があります。そのため、電圧のオン時間などを調整しながら、必要な電流を流し、回転磁界と力を制御できます。このパルス幅を調整する方法をPWMと呼びます。

スイッチの速さと、モーターの回転数は同じではない

半導体が細かくオン・オフする切替周波数と、三相電流が作る磁界の回転に関わる電気的な周波数は別です。切替えを速くすれば、そのまま車輪が同じ比率で速く回るわけではありません。モーターの回転は極数や負荷などにも関わり、駆動力と回転速度を合わせて制御します。

ブレーキ時は、モーターが発電機になる

減速時には、車輪の回転がモーターを回し、モーターが電気を作る側になります。インバーターは、その電力を電池へ戻せる直流に変換します。これが回生ブレーキの電気的な流れです [35]。新しくエネルギーを生むのではなく、それまで車が持っていた運動エネルギーの一部を回収しています。電池の充電状態や温度などで回収量は制限され、摩擦ブレーキも併用されます。

ここまで見ると、SiCが使われる場所がはっきりします。SiCはモーターの磁石や電池の材料の名前ではなく、この電力変換を繰り返すスイッチの材料です。

求められるのは、次の3つです。

  1. 高い電圧に耐える(オフのとき、壊れずに電圧を受け止める)
  2. オンのときの抵抗が小さい(電流を流したときの損失、つまり発熱が小さい)
  3. 速く切り替えられる(切り替えの途中で生じる損失が小さい)

代表的なパワー半導体

  • パワーMOSFET:概論①のMOSFETを、大電流・高電圧向けにした構造。速く切り替えられる
  • IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ):MOSFETのように電圧で制御でき、大電流を流せる。インフィニオンは、モーター制御、再生可能エネルギー、産業機器、電源などに使われると説明しています [16] 事実
  • SiC(炭化ケイ素)MOSFET、GaN(窒化ガリウム)トランジスタ:シリコンよりバンドギャップの大きい材料(ワイドギャップ半導体)を使ったもの

EVでSiCが役立つ理由を、3つの場面で見る

EVのスイッチは、電気を通している間だけ頑張ればよいわけではありません。走行中には、高い電圧を止める・大きな電流を通す・その間を切り替えることを何度も繰り返します。それぞれで損失や制約が生じます [36]。

スイッチの場面困ることSiC MOSFETが役立つ点
オフで止める電流を止めても、高い電圧を受け止める必要がある強い電場に耐えられ、耐圧を担う層を薄くできる
オンで通す大電流が抵抗を通ると、電気が熱になる同じ耐圧で抵抗を抑えやすく、導通損失の低減を狙える
オン・オフを切り替える切替え途中には素子に電圧がかかる一方で電流も流れ、エネルギーを失うSiのIGBTに比べ、切替え損失を抑えられる場合がある
SiCの利点を、オフ・オン・切替え中から考える
補図E SiCの利点を、オフ・オン・切替え中から考える(概念図)

オンの損失は、抵抗が小さいほど減らせます。MOSFETの導通損失は、おおむね「電流の2乗×オン抵抗」で考えられます。電流が大きいEVでは、抵抗を抑える意味が大きくなります。ただし抵抗は温度でも変わります。

切替えの損失は、抵抗の話だけでは説明できません。SiのIGBTでは、オフにするときに内部に蓄えられたキャリアが残り、電流の切れ際に損失が生じることがあります。SiC MOSFETは通常の導通で主に電子を利用するため、この種の蓄積電荷の影響を抑えやすく、素子構造と合わせて切替え損失の低減につながります [36][40]。一方、容量の充放電、駆動回路、配線などの損失は残るので、SiCなら無損失という意味ではありません。

損失が減れば、電池のエネルギーを走行へ回しやすくなり、同じ出力で冷却の負担を減らす余地も生まれます。 冷却器を小さくするか、同じ冷却で出力に余裕を持たせるかは設計次第です。航続距離への効果も、車両の重さや走り方、モーターなどを含む全体で決まります。

物理のツボ③:なぜSiCやGaNは、高い電圧に強いのか

半導体に強い電場をかけると、加速された電子が原子にぶつかって新しい電子と正孔をたたき出し、それがさらに次をたたき出して、電流がなだれのように増えます(なだれ降伏)。この現象が起きる電場の強さを絶縁破壊電界といいます。

バンドギャップが大きい材料ほど、電子を価電子帯からたたき出すのに大きなエネルギーが必要なので、絶縁破壊電界が大きくなります。三菱電機の技術資料では、次のように整理されています [17]。

材料バンドギャップ絶縁破壊電界
シリコン(Si)1.12 eV0.3 MV/cm
炭化ケイ素(4H-SiC)3.26 eV3 MV/cm
窒化ガリウム(GaN)3.42 eV3 MV/cm

(バンドギャップの値は、概論①で使ったIoffe研究所のデータと少し違います。出典によって測定条件や採用値が異なるためです。)

では、絶縁破壊電界が10倍だと何が良いのでしょうか。パワー半導体は、オフのときに電圧を受け止める厚い層(ドリフト層)を持っています。電場が三角形に分布すると単純化すると、1000 Vに耐えるのに必要な厚さは、シリコンで約67 µm、SiCで約6.7 µmです 本稿の計算。

同じ1000 Vに耐えるためのドリフト層の厚さ(SiとSiC)
図3 同じ1000 Vに耐えるためのドリフト層の厚さ(SiとSiC)(概念図)

図3の形や長さは縮尺を表しません。厚さの比は、約67 µmと約6.7 µmという数値で比較してください。

層が10分の1の薄さで済むうえ、電場に強いので不純物を多く入れてキャリアを増やすこともできます。電流が通る道が短く、しかも通りやすくなるので、同じ耐圧で比べたときのオン抵抗を大きく下げられます 解説。これが、SiCで導通損失を減らせる物理的な理由の一つです。ただし、完成した素子の抵抗にはチャネルや接触部なども寄与し、装置全体の損失と大きさは回路や放熱設計にも左右されます。

材料の指標と、製品の性能を分けて見る

この効果をまとめた指標がバリガ性能指数(BFOM)です。誘電率 × 移動度 × 絶縁破壊電界3 で表され、値が大きいほど、同じ耐圧でオン抵抗を小さくできる材料です 解説。絶縁破壊電界が3乗で効くのがポイントです。三菱電機の資料では、シリコンを1としたとき、4H-SiCが667、GaNが833とされています [17] 事実。

ただし、このBFOMは理想化した単極性デバイスのドリフト層を比べる指標です。完成したGaN HEMTとSiC MOSFETの優劣や、製品の損失比をそのまま示しません。材料の加工、欠陥、素子構造、信頼性、コストまで含めて選ぶ必要があります。GaNにもp型は存在し、p-GaNゲートを用いた実用デバイスがあります [27]。Siの熱酸化膜の作り方を、そのまま他材料へ移せるわけではない、という違いと分けて理解しましょう。

計算の前提

厚さ W は、耐える電圧 V と絶縁破壊電界 Ec から、W = 2V / Ec で計算しました(電場がドリフト層の中で直線的に減り、最大値が Ec になると仮定)。実際の設計では、電場の形や安全余裕によって値が変わります。

直径6インチのSiCウェハ
搬送ケースに入った直径6インチ(約150 mm)のSiCウェハ2枚。大きさの目安としてボールペンが置かれています。
画像:FDominec / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

実際の採用例として、STマイクロエレクトロニクスは2024年9月、電気自動車のトラクションインバーター(モーターを動かす電力変換器)向けの第4世代SiC MOSFETを発表し、これまでに500万台を超える乗用車にSiCデバイスを供給してきたと説明しています [18] 事実。GaNについては、インフィニオンが2026年3月、台湾の電源メーカーChiconyによるノートパソコン用アダプターへの採用を発表しています [19] 事実。

実車の例:2023年のLEXUS RZ

デンソーは2023年3月31日、SiCパワー半導体を使うインバーターを、BluE Nexusの電動駆動モジュール「eAxle」を通じて、2023年3月30日発売のLEXUS RZへ搭載すると発表しました [38]。電池からモーターへの電力を受け渡す実際の製品で、SiCが使われている例です。

同発表では、従来のSiパワー半導体を用いたインバーターに対し、特定の走行条件でインバーターの電力損失を半分以下にしたと説明しています [38]。車全体の消費電力や、必要な電池の量が半分になったという意味ではありません。また、これは当時の製品・比較条件の発表であり、すべてのRZの仕様や、あらゆるEVに同じ効果を当てはめるものではありません。

「損失が半分」を、仮の数字で考える

電池から取り出すエネルギーを100とし、インバーターで4を熱などとして失うなら、次へ渡せるのは96です。仮にその損失が4から2へ減れば、次へ渡せるのは98になります 本稿の計算。これは説明用の仮定で、上記の車両の実測値ではありません。「失っていた部分が半分」と「車全体で使うエネルギーが半分」は、分けて考えます。

EV以外にもある ― エアコン、工場、ポンプ、電車

インバーターは、必要に合わせてモーターの回転や力を変えたい装置でも使われます [37][41]。

身近な装置・設備インバーターが調整する仕事SiCとのつながり
エアコン圧縮機のモーターを、必要な冷暖房量に合わせて動かす電力変換の損失低減は有益。ただしSiC採用は製品次第で、Si系も使う
工場の搬送装置コンベヤーなどを必要な速さ・力で動かす出力、運転時間、コストなどから素子を選ぶ
ポンプ・送風機必要な水量・風量に合わせて回転を下げる回転制御による省エネに加え、変換器自体の損失も検討する
電車走行モーターを駆動し、減速時には回生する高電圧・大電力向けSiCモジュールの実用例がある [39]

特にファンやポンプでは、必要な流量が少ないときに回転自体を下げることが、省エネに役立つ場合があります [37]。これはモーターを必要な分だけ働かせる効果です。それとは別に、SiCは電力を変換する装置内部の無駄を減らす効果を狙います。この2段階を分けると、「インバーターだから省エネ」と「SiCを使うと損失を減らせる」の違いが分かります。

すべてのモーター装置にSiCが必要なわけではありません。小出力の装置やコストを重く見る用途ではSi系が適する場合もあります。SiCの利点を使い切るには、駆動回路、配線、放熱、ノイズやモーター絶縁への配慮まで含めた設計が必要です。

SiCはEV、GaNは小型電源で注目される ― 同じ「広いギャップ」でも使い方が違う

EVのインバーターでは、高い電圧をオフ時に止め、モーターへ大きな電流を何度も流します。耐圧のために厚くした層が、オン時の抵抗になるという悩みに、SiCの大きな絶縁破壊電界が役立ちます。電流をウェハの厚み方向へ流す縦型SiC MOSFETは、高電圧・大電流向けの選択肢です。

一方、小型電源のGaN系HEMTは、異なる材料の界面に薄い電子の通り道を作り、ゲートで制御します(9章の図5)。高い耐電圧と、切替えに必要な電荷を小さくする構造を組み合わせることで、高速な電力変換を狙います [27]。回路条件が合えば高周波化が磁性部品などの小型化にもつながりますが、放熱やノイズへの対策も必要です。

「SiCならどの電源でも有利」「GaNなら必ず小さくなる」ではありません。扱う電圧・電流・切替周波数と、素子・回路・部品の合計で判断します。SiのMOSFETやIGBTも、性能・信頼性・コストが合う所で使われ続けます。

SiCは、結晶を作るのも、加工するのもシリコンより難しい材料です。前工程でも、イオン注入とその後の高温アニール、SiC専用のエピタキシャル成長など、シリコンとは違う工程が必要になります 解説。この違いは、第3部の「パワー半導体の前工程が特殊な理由」で詳しく扱います。

7. センサー ― 光や動きを感じるチップ

イメージセンサー ― 光を電子に変える

CMOSイメージセンサー
ガラスのパッケージに入ったCMOSイメージセンサー(約4×4.5 mm)。中央の、金色の線で囲まれた部分が光を受ける領域です。
画像:Phiarc / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

スマホのカメラに入っているCMOSイメージセンサーは、何百万〜何千万個もの小さなフォトダイオード(pn接合)を並べたチップです。概論①で見たように、pn接合に光が当たると電子と正孔のペアが生まれます。その電子をため、量を読み出すことで、画素ごとの明るさを測ります 解説。

イメージセンサーは、構造の工夫で大きく進化してきました。ソニーセミコンダクタソリューションズは、2009年に裏面照射型、2012年に積層型のCMOSイメージセンサーを商品化したと説明しています [20] 事実。

  • 裏面照射型:それまでは、光が配線のすき間を通ってフォトダイオードに届いていました。ウェハを裏返して裏側から光を当てることで、配線に邪魔されずに光を受けられるようにした構造です 解説。
  • 積層型:光を受ける画素のチップと、信号を処理する回路のチップを別々に作って重ね合わせた構造です 解説。

裏面照射型では、ウェハを数µmまで薄くする工程が必要になります。前工程と後工程の境目にある技術が、センサーの性能を決めている例です 解説。

カメラにSiを使う理由 ― 可視光を電荷に変え、読み出す回路と組み合わせやすい

可視光の光子は、Siの価電子帯から伝導帯へ電子を励起できるエネルギーを持ちます。吸収された光から電子と正孔を作り、電荷を集めて明るさを読み出せます。さらにSiのCMOS回路と組み合わせれば、画素の信号を増幅・読み出しする仕組みを集積できます [32]。

ここで大事なのは、光をよく受け取ることと、効率よく光を出すことは別だという点です。Siは間接遷移型なのでLEDの主な発光材料には向きませんが、受光には使えます。配線の配置や薄化で光の届き方を改善する裏面照射は、材料を替えずに構造を工夫する例です。

表面照射型と裏面照射型のイメージセンサーの違い
図4 表面照射型と裏面照射型のイメージセンサーの違い(概念図)

MEMS ― 動く部品を、半導体の工程で作る

MEMSジャイロスコープの電子顕微鏡像
研究用に作られた音叉型MEMSジャイロスコープの電子顕微鏡像(左からチップ全体、部分拡大、櫛の歯のような電極)。シリコンを削って、動くおもりとばねを作っています。
画像:Minh Ngoc Nguyen et al.(論文誌 Micromachines, 2017)/ Wikimedia Commons / CC BY 4.0

MEMS(微小電気機械システム)は、半導体の製造技術を使って、シリコンの中に動く構造(小さなおもりやばね)を作ったものです。スマホの傾きや揺れを感じる加速度センサーやジャイロスコープ(角速度センサー)、マイクなどに使われています。

物理のツボ④:MEMSジャイロスコープは、なぜ回転がわかるのか

アナログ・デバイセズの技術記事は、MEMSジャイロスコープがコリオリ加速度を使って回転の速さ(角速度)を測ると説明しています [21] 事実。

回っている円盤の上で、中心から外へ向かって歩くと、横向きに押されるように感じます。これがコリオリ力です。MEMSジャイロスコープの中では、小さなおもりを一定の方向に細かく振動させています。そこに回転が加わると、振動と直角の方向にコリオリ力がはたらき、おもりがわずかに横へずれます。

このずれを、櫛の歯のように向かい合った電極のあいだの静電容量(コンデンサーの容量)の変化として読み取ります。電極のすき間が変わると容量が変わる、というコンデンサーの基本的な性質を使っています 解説。

MEMSにSiを使う理由 ― 電子的な性質に加え、ばねとして使える

MEMSでは、Siを「電気の通り道」だけでなく、微小なばね・おもりを作る機械材料としても使います。結晶の弾性的な性質と、半導体製造で培った微細加工を利用し、狙った形を多数そろえて作れることが役立ちます [31]。一方で、形状や表面の状態は壊れやすさにも影響するため、Siなら無条件に丈夫というわけではありません。

カメラでは光が電荷を生み、MEMSでは小さな構造の動きが電気信号に変わる。同じSiでも、利用している性質が違うことが分かります。

8. 光半導体 ― 光を出すチップ

光っている緑色LED
InGaN(窒化インジウムガリウム)/GaN系の緑色LEDが光っている様子の接写。
画像:Mister rf / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0

概論①で見たように、直接遷移型の半導体では、電子と正孔が再結合したときのエネルギーが光として出ます。これを使うのがLEDや半導体レーザーです。

物理のツボ⑤:バンドギャップが、光の色を決める

単純化したバンド端の発光では、出る光子のエネルギーはバンドギャップEgに近くなります。実際の発光層では、量子井戸や組成などの効果も加わります。光のエネルギーと波長 λ の関係から、次の便利な式が使えます。

λ(nm)≈ 1240 / Eg(eV)

概論①のバンドギャップの値を入れてみましょう 本稿の計算。

材料バンドギャップ対応する波長光の種類
GaN3.39 eV約366 nm紫外線
GaAs1.424 eV約871 nm近赤外線
Si1.12 eV約1107 nm赤外線(ただしSiは間接遷移型でほとんど光らない)

人の目に見える光は、おおよそ400〜700 nmです。GaNにインジウムを混ぜたInGaNは、混ぜる量でバンドギャップを小さくでき、青や緑の光を出せます 解説。

2014年のノーベル物理学賞は、赤﨑勇、天野浩、中村修二の3氏に、「明るく省エネルギーな白色光源を可能にした、高効率な青色LEDの発明」に対して贈られました [22] 事実。青色が実現したことで、赤・緑・青の3色がそろい、また青色LEDと蛍光体を組み合わせて白色の照明が作れるようになりました 解説。

光半導体は、通信でも重要です。データセンターでは、電気信号を光に変えて送る技術が増えています。たとえばコヒレントは2025年9月、光電融合(CPO)とシリコンフォトニクス向けのInP(リン化インジウム)レーザーのサンプル出荷を発表しています [23] 事実。シリコンは光をほとんど出せないため、光源にはInP系などの化合物半導体を組み合わせます(後工程シリーズの「シリコンフォトニクス」「Co-packaged Optics」の回で扱っています)。

青色LEDと通信レーザーは、なぜ違う材料なのか

青や緑に光るLEDには、その色の光子エネルギーに合う発光層が必要です。InGaNではインジウムの割合などを調整して発光エネルギーを変え、GaN系の周囲の層と組み合わせて、電子と正孔を発光領域へ導きます。材料の名前だけでなく、どの層が光るのかを見るのがポイントです。

光ファイバー通信では、用途に応じて1.3 µm帯や1.55 µm帯などの近赤外光を使います。InP系は、光デバイス用の異なる結晶層を重ねる土台になります [33]。例えば、InGaAsPなどを発光層として使う構成があり [34]、受光にはInGaAsの吸収層をInP基板と組み合わせる構成があります [28]。

発光・受光する層と、支える基板を分けて見る
補図B 発光・受光する層と、支える基板を分けて見る(概念図)
「InPレーザー」は、純粋なInPだけが光るという意味ではない

製品の材料名には、基板や材料群を代表する名前が使われることがあります。実物は、発光・受光を担当する層、キャリアを閉じ込める層、電流を供給する層などの積み重ねです。異なる材料の原子の並びの周期(格子定数)を近づけることも、良い結晶層を重ねるために重要です [28][33]。

9. 高周波(RF) ― 電波を扱うチップ

携帯電話の高周波電力増幅器の内部
古い携帯電話から取り出した高周波電力増幅器の内部を、顕微鏡で写したもの。電波を強くして送り出すトランジスタの部分です。
画像:Circuit Chaos / Wikimedia Commons(CC0)

スマホや基地局は、数GHz(1秒間に数十億回)で振動する電波を扱います。ここで使われる高周波(RF)半導体には、速く反応すること(電子が動きやすいこと)と、大きな出力を出せること(高い電圧に耐えること)が求められます。

  • GaAs(ヒ化ガリウム):シリコンより電子が動きやすく、スマホの電力増幅器などで長く使われてきた材料です 解説。
  • GaN(窒化ガリウム):高い電圧に強く、動きやすい電子の層を作れるため、大出力の基地局などに使われます。MACOMは、5G基地局向けの、SiC基板上にGaNを成長させたHEMT(高電子移動度トランジスタ)の増幅器を製品化しています [24] 事実。
GaNのHEMT
窒化ガリウム(GaN)の高電子移動度トランジスタ(HEMT)の部品。大きさの比較のために、1セント硬貨と並べています。
画像:FBH/P.Immerz(Ferdinand-Braun-Institut)/ Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
物理のツボ⑥:HEMTは、なぜ電子が速く動けるのか

キャリアの動きやすさは、結晶の振動、欠陥、界面、不純物のイオンなどによる散乱に左右されます。ドーピングでキャリアを増やすと、イオンによる散乱が増える場合もあります。すべての通常のトランジスタが同じ構造というわけではありません。

HEMTでは、バンドギャップの違う2つの半導体(GaNの場合はAlGaNとGaN)を重ね合わせます。すると、境目のすぐ下に、電子だけが薄い層になって集まります(二次元電子ガス)。GaN系では、結晶の性質(分極)によって、不純物を入れなくても境目に電子が集まります。GaN系では伝導チャネルへの意図的なドーピングを抑えながら、多くの電子を集められることが利点です [27]。散乱がなくなるわけではなく、界面や結晶の質、発熱も性能を左右します。

GaN HEMTの断面と二次元電子ガス
図5 GaN HEMTの断面と二次元電子ガス(概念図)

GaAsとGaN ― 電子が動きやすいだけでは、送信機は選べない

スマホの送信部は、電池の限られた電力で、情報を乗せた電波をできるだけ忠実に強くしたい部品です。GaAs系では、電子の輸送特性に加え、HBTなどの素子構造と小型化の技術が役立ちます。日清紡マイクロデバイスも、GaAs HBTを小さな面積で電流を扱うパワーアンプに使う理由を説明しています [29]。

基地局のように出力が大きい場合は、GaNの強い電場への耐性と界面チャネルを利用し、発熱を逃がすためSiC基板と組み合わせるGaN-on-SiCなどが選択肢になります [24][27]。GaNは電気的に働く層、SiCは結晶を支え熱を逃がす基板という役割分担です。

スマホと基地局で、電波の増幅器に求めるものが違う
補図C スマホと基地局で、電波の増幅器に求めるものが違う(概念図)
同じ「GaN」でも、LEDとHEMTは違う構造

LEDではInGaNなどの発光層で電子と正孔を再結合させ、HEMTではAlGaN/GaN界面付近の電子を横へ流します。電源用と高周波用のHEMTでも、耐圧、容量、線形性、放熱などの設計目標が違います。名前が同じ材料でも、同じチップをそのまま別用途へ移すわけではありません。

10. 材料で見る半導体の地図

ここまでの話を、材料の側から整理します。

材料強み(物理的な理由)主な役割
シリコン(Si)大きく完全な結晶が安く作れる。良質な酸化膜ができるロジック、メモリ、アナログ、イメージセンサー、MEMS、多くのパワー半導体
SiCバンドギャップと絶縁破壊電界が大きい。熱をよく逃がす [17]高電圧のパワー半導体(電気自動車、鉄道、太陽光)
GaN系強い電場に耐える。AlGaN/GaN界面の電子チャネル、InGaN発光層などを用途で作り分けるGaN系LED、高周波(基地局)、小型の電源
GaAs電子が動きやすい。直接遷移型高周波、赤外の発光素子
InP系InP基板に、通信波長に合う発光・吸収層を組み合わせられる光通信のレーザーや受光素子

(「強み」の列は、本文と概論①で説明した物理を整理したものです 解説。)

シリコンが圧倒的に多くの役割を担っているのは、性能が最も良いからではありません。大きく、欠陥の少ない結晶を、安く大量に作れるからです。Siでは300 mmウェハの製造基盤が整っています [30]。ただし、ウェハの直径だけで材料を決めるわけではありません。Siも高電圧や高周波に使われますが、化合物半導体は、その用途でSiより有利な耐圧・損失・発光特性などを得たい場所に選ばれます。

材料を選ぶ、3つの問い

  1. 何をしたい? 計算、記憶、受光、発光、電力変換、電波の増幅で、必要な働きを決める。
  2. 何が一番困る? 漏れ、発熱、光が出ない、電圧に耐えない、雑音が大きいなど、制約を見つける。
  3. 材料と構造をどう組み合わせる? ギャップ、絶縁破壊電界、キャリアの輸送、熱、界面、製造技術で解決する。

例えば、Siより電子が動きやすいという理由だけで、スマホのCPUを丸ごとGaAsに置き換えることはできません。反対に、Siが量産しやすいという理由だけで、効率よく光る青色LEDもSiで作れるわけではありません。材料選びは万能選手を探すことではなく、仕事に必要な性質を組み合わせることです。

11. まとめ ― 種類が違えば、前工程も違う

この回で見た違いを、前工程の観点で整理します。

種類前工程で特に重要なことシリーズで扱う回
ロジック最先端の微細化(EUV、GAA、微細配線、裏面電源)フォトリソ、エッチング、配線、トランジスタ構造
DRAM深い穴のコンデンサー、微細化エッチング、ALD、メモリ構造
3D NAND数百層の積層と、深い穴の一括加工CVD、エッチング、メモリ構造
アナログ成熟した工程での安定性・ばらつきの少なさ・コストイオン注入、計測と歩留まり
パワー(SiC・GaN)材料そのもの(結晶成長、エピ)と高温プロセスウェハ、イオン注入、パワー半導体の回
イメージセンサー裏面照射のための薄化、ウェハの貼り合わせ成膜、CMP
MEMS動く構造を作るための深掘りエッチングエッチング

次の回(概論③)では、半導体がどんな流れで作られ、どんな会社が関わっているのかを見ます。設計から前工程、後工程までの全体の流れと、ファウンドリ・装置メーカー・材料メーカーといった産業の構造を整理します。

12. 確認クイズ

  1. WSTSの2025年の実績で、構成比が最も大きい2つの区分は何でしょうか。

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    ロジック(37.6%)とメモリ(28.9%)です。2つで約3分の2を占めます(本文2章)。

  2. ロジック回路の電源電圧を1.0 Vから0.8 Vに下げると、動的な電力はおよそ何%減るでしょうか。

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    動的な電力は V2 に比例するので、0.82 = 0.64倍、つまり約36%減ります(本文3章)。

  3. DRAMが定期的にリフレッシュを必要とするのはなぜでしょうか。

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    コンデンサーにためた電荷が少しずつ漏れてしまうからです(本文4章)。

  4. NANDフラッシュで、絶縁膜に囲まれた層に電子を出し入れできるのは、どんな物理現象によるものでしょうか。

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    量子力学のトンネル効果です。高い電圧をかけると、電子が薄い絶縁膜をすり抜ける確率が大きくなります(本文4章)。

  5. 1つのセルに4ビット(QLC)を覚えさせるには、何段階の状態を区別する必要があるでしょうか。

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    24 = 16段階です(本文4章)。

  6. SiCがシリコンより高い電圧のパワー半導体に向いているのはなぜでしょうか。

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    絶縁破壊電界が約10倍大きいため、電圧を受け止める層を約10分の1に薄くでき、オン抵抗を大きく下げられるからです(本文6章)。

  7. MEMSジャイロスコープは、どんな力を使って回転を検出しているでしょうか。

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    コリオリ力(コリオリ加速度)です。振動するおもりが、回転によって直角方向にずれるのを静電容量の変化で読み取ります(本文7章)。

  8. バルクGaNの3.39 eVを、単純なバンド端発光の式に入れると何nmでしょうか。市販の青色LEDと同じと考えてよいでしょうか。

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    λ ≈ 1240 ÷ 3.39 ≈ 366 nmで、紫外線です。青色LEDの発光層はInGaNなどであり、その組成や層構造で発光を調整します。バルクGaNの値を製品の発光波長にそのまま当てはめません(本文8章)。

  9. Siがロジックやメモリで広く使われる理由を、電子の速さ以外で2つ挙げてください。

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    良質な絶縁膜や界面を作れること、CMOSを大量にそろえて作る製造技術、Siウェハの供給基盤などです(本文3・4章)。

  10. GaNのLEDとGaN HEMTは、同じ構造でしょうか。

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    違います。LEDは発光層で再結合させ、HEMTは界面の電子チャネルを制御して電流を流します(本文8・9章)。

  11. InP系の光通信デバイスで、基板と発光・受光層を分けて考えるのはなぜでしょうか。

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    光の波長に合う発光・吸収層と、それを良い結晶として支える基板を組み合わせるからです。InP系という名前は、純粋なInPだけでできていることを意味しません(本文8章)。

  12. SiCの材料指標がSiより大きければ、完成した装置の損失も同じ比率で減るでしょうか。

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    いいえ。理想化したドリフト層の指標と、素子・配線・駆動回路・放熱を含む装置全体の性能は別です(本文6章)。

  13. EVのインバーターは、電池とモーターの間で何をしますか。

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    電池の直流をもとに、モーター各相の電流の向き・大きさ・タイミングを制御します。回生時にはモーターの発電電力を電池へ戻せる直流に変換します(本文6章・補図D)。

  14. インバーターの損失が半分になると、車全体の電費も半分になるのでしょうか。

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    いいえ。減るのは元々インバーターで失っていた部分です。車全体の効果は、走行条件や他の装置の損失も含めて決まります(本文6章・補図E)。

13. 用語集

SiO2
二酸化シリコン。Si表面の保護や絶縁に使われる。
high-k
高誘電率材料。ゲートを電場で制御しつつ漏れを抑えるために使う絶縁材料。
活性層
発光や受光など、デバイスの中心の働きを担う層。
基板
その上に結晶層や素子を作る土台。基板と活性層は同じ材料とは限らない。
InGaAs
インジウム・ガリウム・ヒ素からなる化合物半導体。近赤外の受光層などに使う。
WSTS
世界半導体市場統計。世界の主要な半導体メーカーが参加し、市場の統計と予測を公表する団体。
ロジック
0と1の論理演算をするチップ。GPU、SoC、特定用途向けのASICなど。
マイクロ
WSTSの区分の一つ。CPU(MPU)、マイコン(MCU)、DSPなど。
SoC
システム・オン・チップ。CPU、GPU、通信回路などを1つのチップにまとめたもの。
動的な電力
回路が0と1を切り替えるときに使う電力。C×V2×f に比例する。
リーク電流
トランジスタがオフのときにも漏れて流れる電流。
揮発性/不揮発性メモリ
電源を切ると内容が消えるメモリ/消えないメモリ。
DRAM
1個のトランジスタと1個のコンデンサーで1ビットを覚える揮発性メモリ。
リフレッシュ
DRAMで、漏れていく電荷を補うために定期的に読み直して書き直す動作。
NANDフラッシュ
電子を閉じ込める層を持つトランジスタで覚える不揮発性メモリ。SSDやスマホの記憶装置に使う。
トンネル効果
粒子が、エネルギー的には越えられないはずの薄い壁をすり抜ける量子力学の現象。
TLC/QLC
1つのセルに3ビット/4ビットを覚えさせる方式。
3D NAND
メモリセルを縦に何百層も積み上げたNANDフラッシュ。
HBM
高帯域幅メモリ。DRAMチップを縦に積みTSVでつなぎ、GPUの隣に置くメモリ。
JEDEC
半導体メモリなどの業界標準規格を定める団体。
アナログ半導体
連続的に変わる信号を扱う半導体。増幅器、AD変換器、電源ICなど。
AD変換
アナログの値をデジタル(0と1)の値に変換すること。
電源IC
電池などからの電圧を、回路が必要とする電圧に変換・安定化するIC。
パワー半導体
大きな電力をオン・オフして変換する半導体。
パワーMOSFET
大電流・高電圧向けのMOSFET。
IGBT
絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ。電圧で制御し大電流を流せる。
ワイドギャップ半導体
シリコンより大きなバンドギャップを持つ半導体。SiC、GaNなど。
絶縁破壊電界
なだれ降伏が起き、絶縁が破れてしまう電場の強さ。
なだれ降伏
加速された電子が次々に電子と正孔をたたき出し、電流が急増する現象。
ドリフト層
パワー半導体で、オフのときに高い電圧を受け止める層。
オン抵抗
トランジスタがオンのときの抵抗。小さいほど損失(発熱)が少ない。
トラクションインバーター
EVや鉄道の走行モーターへ渡す電力を制御する装置。EVでは電池の直流からモーター用の三相電力を作り、回生時には電力を電池へ戻す。
三相
U・V・Wなど、タイミングがずれた3系統の電流・電圧を使う方式。
PWM
パルス幅変調。電圧パルスのオン時間などを変えて、モーターへ流す電流などを制御する方法。
回生ブレーキ
車輪の運動エネルギーの一部をモーターで電気に変え、電池などへ戻す減速方法。
導通損失
オンの素子を電流が通るときに生じる損失。
スイッチング損失
オン・オフの切替え時に生じる損失。
eAxle
モーター、インバーター、減速機などをまとめた電動駆動モジュール。
CMOSイメージセンサー
フォトダイオードと読み出し回路をCMOSの工程で作ったイメージセンサー。
フォトダイオード
光を電流に変えるpn接合。
裏面照射型
ウェハの裏側から光を当て、配線に邪魔されずに受光する構造。
積層型(イメージセンサー)
画素のチップと回路のチップを重ね合わせた構造。
MEMS
微小電気機械システム。半導体の工程で、動く構造をシリコンの中に作ったもの。
コリオリ力
回転している系の中で動く物体に、運動方向と直角にはたらく見かけの力。
静電容量
コンデンサーの電荷のためやすさ。電極のすき間が変わると変化する。
LED
発光ダイオード。pn接合で電子と正孔を再結合させて光を出す。
InGaN
窒化インジウムガリウム。インジウムの量でバンドギャップを調整でき、青や緑の光を出す。
CPO
光電融合(Co-packaged Optics)。光の送受信部品を演算チップのすぐ近くに置く技術。
InP
リン化インジウム。光通信用の基板や層構造に使う。InP系素子では発光・受光を別の組成の層が担う場合がある。
高周波(RF)半導体
電波の周波数(MHz〜GHz)の信号を扱う半導体。
GaAs
ヒ化ガリウム。電子が動きやすい化合物半導体。
HEMT
高電子移動度トランジスタ。二次元電子ガスで電子を速く動かすトランジスタ。
二次元電子ガス
異なる半導体の境目に、電子が薄い層状に集まったもの。
分極
結晶の中で、正と負の電荷の中心がずれている状態。GaN系では境目に電子を集める。

14. 参考資料(一次情報)

  1. WSTS日本協議会(JEITA掲載)「WSTS 2026年春季 半導体市場予測(2026年6月2日)」 — https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20260602WSTS.pdf
  2. WSTS「Q2 2026 Release(2026年8月6日)」 — https://www.wsts.org/esraCMS/extension/media/f/WST/7745/WSTS-Q2-Release-2026-08-06.pdf
  3. SIA(米国半導体工業会)「Global Annual Semiconductor Sales Increase 25.6% to $791.7 Billion in 2025」 — https://semiconductors.org/global-annual-semiconductor-sales-increase-25-6-to-791-7-billion-in-2025/
  4. NVIDIA「NVIDIA Blackwell Platform Arrives to Power a New Era of Computing(2024年3月18日)」 — https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-blackwell-platform-arrives-to-power-a-new-era-of-computing
  5. Apple「Apple introduces M4 chip(2024年5月7日)」 — https://www.apple.com/newsroom/2024/05/apple-introduces-m4-chip/
  6. Texas Instruments「CMOS Power Consumption and Cpd Calculation(SCAA035B)」 — https://www.ti.com/lit/an/scaa035b/scaa035b.pdf
  7. Samsung Semiconductor「Semiconductor glossary: DRAM」 — https://semiconductor.samsung.com/support/tools-resources/dictionary/semiconductor-glossary-dram/
  8. SK hynix「SK hynix Starts Mass Production of World's First 321-High NAND(2024年11月21日)」 — https://news.skhynix.com/en/sk-hynix-starts-mass-production-of-world-first-321-high-nand/
  9. キオクシア「Kioxia Commences Sample Shipments of 10th-Generation BiCS FLASH Devices(2026年7月3日)」 — https://www.kioxia.com/en-jp/about/news/2026/20260703-1.html
  10. Samsung Semiconductor「Samsung Electronics Begins Industry's First Mass Production of 9th-Gen V-NAND」 — https://semiconductor.samsung.com/news-events/news/samsung-electronics-begins-industrys-first-mass-production-of-9th-gen-v-nand/
  11. JEDEC「JEDEC and Industry Leaders Collaborate to Release JESD270-4 HBM4 Standard(2025年4月16日)」 — https://www.jedec.org/news/pressreleases/jedec%C2%AE-and-industry-leaders-collaborate-release-jesd270-4-hbm4-standard-advancing
  12. Samsung「Samsung Ships Industry-First Commercial HBM4 With Ultimate Performance for AI Computing(2026年2月12日)」 — https://news.samsung.com/global/samsung-ships-industry-first-commercial-hbm4-with-ultimate-performance-for-ai-computing
  13. Micron「Micron in High-Volume Production of HBM4 Designed for NVIDIA Vera Rubin(2026年3月16日)」 — https://investors.micron.com/news/press-release/2026/Micron-in-High-Volume-Production-of-HBM4-Designed-for-NVIDIA-Vera-Rubin-PCIe-Gen6-SSD-and-SOCAMM2-03-16-2026/default.aspx
  14. SK hynix「SK hynix Announces 2Q26 Financial Results(2026年7月29日)」 — https://news.skhynix.com/en/q2-2026-business-results/
  15. Texas Instruments「Texas Instruments breaks ground on new 300-mm semiconductor wafer fabrication plants in Sherman, Texas(2022年5月18日)」 — https://www.ti.com/about-ti/newsroom/news-releases/2022/2022-05-18-texas-instruments-breaks-ground-on-new-300-mm-semiconductor-wafer-fabrication-plants-in-sherman--texas.html
  16. Infineon「Different types of IGBT」 — https://www.infineon.com/knowledge-centre/different-types-of-igbt
  17. 三菱電機「Physical properties of SiC(SiC lecture series 04)」 — https://www.mitsubishielectric.com/semiconductors/powerdevices/topics/sic/lecture_series/04_e.pdf
  18. STMicroelectronics「STMicroelectronics unveils new generation of silicon carbide power technology tailored for next-generation EV traction inverters(2024年9月24日)」 — https://newsroom.st.com/media-center/press-item.html/c3283.html
  19. Infineon「Infineon CoolGaN Transistors G5 are adopted by Chicony(2026年3月6日)」 — https://www.infineon.com/market-news/2026/infpss202603-064
  20. Sony Semiconductor Solutions「History of Sony's Semiconductors」 — https://www.sony-semicon.com/en/company/history/
  21. Analog Devices「MEMS Gyroscope Provides Precision Inertial Sensing in Harsh, High Temperature Environments」 — https://www.analog.com/en/resources/technical-articles/mems-gyroscope-provides-precision-inertial-sensing.html
  22. Nobel Prize Outreach「The Nobel Prize in Physics 2014」 — https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2014/summary/
  23. Coherent「Coherent Samples Low-Noise 400mW CW Lasers(2025年9月25日)」 — https://www.coherent.com/news/press-releases/coherent-samples-low-noise-400mw-cw-lasers
  24. MACOM「WGC18630(GaN-on-SiC HEMT, 5G基地局向け)」 — https://www.macom.com/products/product-detail/WGC18630
  25. Intel「High-k and Metal Gate Transistor Research」 — https://www.intel.com/pressroom/kits/advancedtech/doodle/ref_HiK-MG/high-k.htm
  26. KOKUSAI ELECTRIC「IR Day 2024(3D NANDの構造例、25頁)」 — https://www.kokusai-electric.com/sites/default/files/2024-07/IR_Day_J_02.pdf
  27. Infineon「GaN HEMT Structure: Architecture, Physics & Operation」 — https://www.infineon.com/product-information/gan-hemt-structure-architecture-physics-operation
  28. Hamamatsu Photonics「Compound opto-semiconductor photosensors」 — https://www.hamamatsu.com/content/dam/hamamatsu-photonics/sites/documents/99_SALES_LIBRARY/ssd/compound_kird9004e.pdf
  29. 日清紡マイクロデバイス「GaAs半導体製品の歴史(前半)」 — https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/products/rf-device/column/02.html
  30. Siltronic「Sites(300 mmシリコンウェハ・インゴットの製造)」 — https://www.siltronic.com/en/our-company/sites.html
  31. NIST「Fracture strength of micro- and nano-scale silicon components」 — https://www.nist.gov/publications/fracture-strength-micro-and-nano-scale-silicon-components
  32. Sony Semiconductor Solutions「Common Technology of Image Sensors」 — https://www.sony-semicon.com/en/technology/is/index.html
  33. IQE「Indium Phosphide substrates」 — https://www.iqep.com/products/substrates/inp/
  34. Journal of Semiconductors(著者らの研究論文)「Fabrication and optimization of 1.55-µm InGaAsP/InP high-power semiconductor diode laser(2015)」 — https://www.jos.ac.cn/article/doi/10.1088/1674-4926/36/9/094010
  35. DENSO「Power Control Unit(駆動と回生の電力変換)」 — https://www.denso.com/global/en/products/lineup/pick-up/pcu/
  36. Texas Instruments「Reducing Power Loss and Thermal Dissipation in SiC Traction Inverters(SSZT070)」 — https://www.ti.com/document-viewer/lit/html/SSZT070
  37. 三菱電機「インバータ運転の省エネ効果」 — https://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/11478?site_domain=default
  38. DENSO「デンソー初、SiCパワー半導体を用いたインバーターを開発(2023年3月31日)」 — https://www.denso.com/jp/ja/newsroom/news/2023/20230331-01/
  39. Mitsubishi Electric「High Voltage SiC Power Modules(Railway Traction / Motion Control)」 — https://www.mitsubishielectric.com/semiconductors/powerdevices/products/power-module/hv-sic-module/
  40. Toshiba Electronic Devices & Storage「2nd Generation Features of SiC MOSFETs(IGBTとの切替え特性比較)」 — https://toshiba.semicon-storage.com/ap-en/semiconductor/product/mosfets/sic-mosfets/articles/features-of-sic-mosfets.html
  41. Mitsubishi Electric「Inverter Basics(Purpose for Using the Inverter)」 — https://www.mitsubishielectric.com/fa/service-support/global/e-learning/pdf/eng/3-FREQROL_Basics_800_Mainte_na_eng.pdf

15. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
WSTS春季予測(2026年6月2日)の区分別の2025年実績・2026年予測・前年比、合計7,956億ドル→1兆5,112億ドル(+89.9%)WSTS日本協議会 [1]事実/2026年は未確定/将来
WSTSが2026年8月6日の更新で2026年通年を約1兆6,550億ドルと計算WSTS Q2 Release [2]("the calculation for the full-year 2026 market reaches 1,655 billion US dollars")未確定/将来
SIAによる2025年の世界売上 7,917億ドル(+25.6%)SIA [3]事実
Blackwell世代のGPUが2,080億トランジスタ、TSMC 4NPNVIDIA [4]事実
M4が280億トランジスタ、第2世代3nmApple [5]事実
動的な電力が C×V2×f の形で表されるTI SCAA035B [6](PT = Cpd × VCC2 × fI × NSW)事実
DRAMの電荷は漏れるため定期的なリフレッシュが必要Samsung [7]事実
SKハイニックスが2024年11月21日に321層の1Tb TLC NANDの量産開始SK hynix [8]事実
キオクシアの332層 第10世代BiCS FLASH、ビット密度59%向上、サンプル出荷段階Kioxia [9]事実
サムスンが2024年4月に第9世代V-NANDの量産開始(層数は非公表)Samsung [10]事実
JEDECが2025年4月16日にHBM4(JESD270-4)を公表。2048ビット、最大8 Gb/s、最大2 TB/sJEDEC [11]事実
サムスンが2026年2月にHBM4の量産・出荷を開始Samsung [12]事実
マイクロンが2026年3月16日にHBM4 36GB 12段の大量生産を発表Micron [13]事実
SKハイニックスが2026年第2四半期にHBM4の大量出荷を開始SK hynix [14]事実
TIが300 mm工場への投資をコスト優位の拡大と説明TI [15]("further extend the company's cost advantage")事実
IGBTの用途(モーター制御、再生可能エネルギー、産業機器、電源)Infineon [16]事実
Si・4H-SiC・GaNのバンドギャップと絶縁破壊電界(0.3/3/3 MV/cm)、BFOM(Si=1、4H-SiC 667、GaN 833)三菱電機 [17](Table 1、表は画像のため目視で確認)事実
STが第4世代SiC MOSFETを発表、500万台超の乗用車にSiCを供給ST [18]事実
インフィニオンのGaNがノートパソコン用アダプターに採用Infineon [19]事実
ソニーが2009年に裏面照射型、2012年に積層型を商品化Sony [20]事実
MEMSジャイロスコープはコリオリ加速度で角速度を測るADI [21]事実
2014年ノーベル物理学賞(赤﨑・天野・中村、高効率青色LED)ノーベル財団 [22]事実
コヒレントがCPO・シリコンフォトニクス向けInPレーザーのサンプルを発表Coherent [23]事実
MACOMの5G基地局向けGaN-on-SiC HEMTMACOM [24]事実
構成比、ロジック+メモリで約3分の2、増加分の約80%がメモリ、電圧0.8倍で電力約36%減、TLC 8段階・QLC 16段階、ドリフト層 Si 約67 µm・SiC 約6.7 µm、発光波長(GaN 約366 nm など)上記の出典値と、本文に明記した前提・式による計算本稿の計算
DRAMの深い筒型コンデンサー、NANDのしきい値電圧での読み出し、トンネル効果、アナログが成熟工程を使う理由、オン抵抗が下がる理由、裏面照射・積層の構造、HEMTの二次元電子ガス、材料の強みの整理物理と工学の一般原理からの説明解説
2026年のメモリ市場の急拡大の背景にAI向け需要がある本稿の見立て推測
Siのゲート絶縁膜とhigh-k、300 mmの製造基盤Intel [25]、Siltronic [30]事実
3D NANDのSiチャネル・電荷保持窒化膜・絶縁膜の役割分担KOKUSAI ELECTRIC [26]解説
GaNの分極と2DEG、p-GaNゲート構造Infineon [27]事実
InGaAs受光層とInP基板、光材料の整合、InGaAsP/InPの発光構造の例Hamamatsu [28]、IQE [33]、研究論文 [34]事実
GaAs HBTをパワーアンプに使う理由日清紡 [29]事実
Siの機械特性とMEMS、Si受光部とCMOS読み出しNIST [31]、Sony [32]解説
EVのインバーターによる直流・交流変換と回生時の電池への電力回収DENSO [35]事実
SiCによる導通損失・切替え損失と発熱の低減、IGBTの蓄積電荷との違いTI [36]、Toshiba [40]、本稿の回路・物理の説明解説
モーター回転を必要量へ調整する省エネ効果と、変換器の損失低減は別の効果三菱電機 [37][41]、本稿による整理解説
2023年のLEXUS RZ向けSiCインバーター、特定走行条件で従来Si比の損失を半分以下DENSO [38]。車全体の電費半減とはしていない事実
鉄道駆動向けの高電圧SiCモジュールMitsubishi Electric [39]事実
エネルギー100、損失4→2、出力96→98の例説明用の仮定による計算。実製品の測定値ではない本稿の計算

最終更新:2026年10月31日/市場統計はWSTS(世界半導体市場統計)、製品の状況は各社の公式発表、物性値は三菱電機の技術資料を出典としています。物理の一般原理の説明と、本稿の計算・推測は、本文中のタグで区別しています。図はImage Genで作成した学習用概念図です。寸法・粒子数・膜厚などは実物と一致しません。写真はWikimedia Commonsの自由ライセンス画像で、各キャプションに作者とライセンスを記載しています。