主要成果
南京工業大学と共同研究機関が開発した複合固体電解質「PLAP」は、液体を用いない全固体リチウム電池において極めて高い性能を示しました。室温でのイオン伝導率は3.8 × 10⁻⁴ S/cmに達し、対称セルを用いた試験では、10 mA/cm²という厳しい電流密度条件下で750時間のplating/stripping(リチウムの析出・溶解)サイクルを維持しました。また、リン酸鉄リチウム(LFP)を用いたフルセルでは、2,000サイクル後も容量の大部分を保持することが確認されています。
技術・詳細
PLAPは、事前リチウム化(prelithiation)を施したポリウレタンポリマーに、セラミックフィラーであるLAGP(Li₁.₅Al₀.₅Ge₀.₅P₃O₁₂)を配合した材料です。従来のポリウレタン-LAGP系では、ポリマー鎖末端の親電子的な水酸基がリチウムイオンを強く拘束する「界面イオン・トラッピング」が発生し、界面電荷移動抵抗が増大することが課題となっていました。
研究チームは、重合前にスクロースベースのポリエーテルソフトセグメントを水酸化リチウムで処理し、末端水酸基をリチウムアルコキシド基に変換する「末端事前リチウム化」を行うことでこの問題を解決しました。その後、リチウム塩、ナノアルミナ、1〜500 nmのLAGP粉末、ジフェニルメタンジイソシアネートを加え、120 °Cで48時間キュアして成形しています。
最適化されたLAGP含有量40 wt%のメンブレンは、引張強度約5.47 MPa、破断伸び192.4%を記録しました。これはリチウムデンドライトの増殖を抑制する閾値とされる強度を確保しつつ、高い伝導率を両立させた構成です。また、熱分析ではガラス転移温度が約−43 °Cであり、室温で高いセグメント可動性を持つことが示されました。
背景・業界の文脈
全固体電池は、従来の液系電解質を固体導電体に置き換えることで、安全性の向上とエネルギー密度の向上が期待されています。しかし、無機セラミック導電体(LAGPなど)は伝導率が高く安定していますが脆く、電極との接触性に課題があります。一方で固体ポリマー電解質は柔軟で加工性に優れますが、室温でのイオン伝導率が一般的に10⁻⁵ S/cm以下と低く、リチウムイオン輸送数も低いという弱点がありました。これらを混合する複合材が一般的ですが、前述の界面でのイオン拘束が性能向上のボトルネックとなっていました。
今後の展望
本研究により、化学的なアプローチで界面抵抗を低減し、機械的強度とイオン伝導率のトレードオフを克服できることが示されました。特に、未処理の類似材料が10⁻⁶ S/cm程度の伝導率に留まり、100時間以内に激しい分極を示したことと比較して、PLAPの性能向上は顕著です。今後は、この界面制御技術を応用することで、全固体電池の実用化に向けた高速充電性能の向上が期待されます。
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