主要成果
吉林大学の張越涛教授、何江華教授、趙武超副教授らの研究チームは、商業用リチウム塩(LiTFSIまたはLiCF₃SO₃)と新型の二機能性N-ヘテロ環オレフィン(NHO)を組み合わせた「リチウム塩駆動ルイスペア重合(LPP)」プラットフォームを構築しました。これにより、ε-カプロラクトン(ε-CL)、δ-バレロラクトン(δ-VL)、rac-ラクチド(rac-LA)の高速かつ可制御な開環重合を実現し、分子量予測が可能で分布の狭い明確なブロック共重合体を合成することに成功しました。特に、触媒として使用したリチウム塩がそのままイオン電荷担体として材料内に保持されるため、後工程での添加なしに、室温イオン導電率が最高1.01×10⁻⁵ S/cmに達するイオン導電性ポリエステル弾性体(ICE)を一段階で製造できる点が大きな成果です。
技術・詳細
本研究では、リチウム陽イオンの多配位能力に起因する「双零級(double zero-order)」の反応動力学特性を明らかにしました。これにより、共重合組成とリチウム塩の負荷量を独立して調整することが可能となり、一鍋法でグラジエント共重合体ベースのICEを合成しています。材料性能については、ICE12において引張強度37.4 MPa、伸び1790%を記録し、ICE11では1.01×10⁻⁵ S/cmの導電率と約1100%の断裂伸長率を両立させました。
また、この材料を柔軟な歪みセンサとして評価したところ、全体的な歪み係数(GF)は1.465となり、大変形時に感度が増す特性を示しました。応答時間は約399 ms、回復時間は約474 msであり、5000回の繰り返し拉伸・放出サイクルにおいても信号応答を維持しました。ただし、長期的な使用においてはベースラインのドリフトが課題として挙げられています。
背景・業界の文脈
従来のイオン導電性弾性体は、後添加によるドーピング不均一や、原位重合における分子量・ネットワーク構造の制御困難といったボトルネックがありました。特にポリエステルベースの材料において、可制御な重合、イオン機能の付与、そして閉環回収(クローズドループリサイクル)を単一のプラットフォームで統合することは困難な課題とされてきました。本研究は、触媒がそのまま機能性成分へと転換される「触媒から機能へ」という設計フレームワークを提示することで、これらの課題を同時に解決しようとしています。
今後の展望
本材料は高い化学的リサイクル性を備えており、MgCl₂触媒を用いた真空蒸留により、単量体(ε-CLおよびδ-VL)を95%以上の収率で回収可能です。また、リチウム塩(LiTFSI)についても82%の収率で分離・回収できることが確認されました。2回の連続的な解重合・再重合サイクル後も、再生されたICE11は顕著な引張強度と高延展性を維持しています。今後はリチウム塩の回収効率の最適化が重点となり、次世代のソフトエレクトロニクスや持続可能な電気化学デバイスへの応用が期待されます。
元記事: https://news.qq.com/rain/a/20261029A02VLA00
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