主要成果
ベルギーのアントウェルペン大学のFilip Meysman氏らによる研究チームは、微生物が金属有機構造体(MOF)を合成していることを世界で初めて発見しました。このMOFは「Candidatus Electrothrix gigas」という細菌によって作られており、金属に匹敵するとされる「並外れた」電気伝導性を備えています。この構造体は、細菌が深海という過酷な環境で生存するために不可欠な役割を果たしています。
技術・詳細
この細菌は、ニッケルをベースとし、有機ジチオレン配位子で連結されたMOFを用いて、センチメートル単位の長さを持つフィラメント(導電性ケーブル)を生成します。化学者が合成に用いる基本構成要素と酷似していますが、その超分子構造は極めてユニークです。具体的には、人間が作る材料では見られない「もつれ合ったMOFナノリボンの束」という構造を構築しています。
この特殊なアーキテクチャは、共役と非局在化によって電子輸送を最適化しており、単一の細菌の長さの約10,000倍に相当する、数センチメートルという極めて長い距離での電子輸送を可能にしています。導電性能については、最高水準の合成ポリマーと同等であり、ほとんどの合成MOFを上回る効率を実現しています。
背景・業界の文脈
「ケーブル細菌」と呼ばれるこのグループは、約6億年前に誕生し、以来MOFを合成してきたと考えられています。彼らはこの導電性ケーブルを海底の堆積物深くへと伸ばし、そこにある硫化物を酸化させて電子を取り出します。これにより、通常では到達不可能なエネルギー源や電子源にアクセスし、数センチメートル離れた場所にある電子供与体と受容体の間で酸化還元反応を行うことができます。これは生存における決定的な進化的優位性となっています。
また、研究チームは導電性構造を利用する90種類の異なる細菌種を特定しており、異なる環境のケーブル細菌間で同様の分光学的シグネチャーが検出されたことから、この超分子構造は同ファミリーの多くの微生物に共有されていることが示唆されています。
今後の展望
生物由来のMOFの発見は、導電性構造を構築するための新しいバイオツールの提示となり、新規ハイブリッドバイオマテリアルの開発に強いインスピレーションを与えます。現在、Meysman氏らのグループはこれらの導電性ワイヤーの製造方法を研究しており、この導電性材料を商業化するためのスタートアップの準備も進めています。この成果は、持続可能かつ効率的な電子材料の設計を刺激することが期待されています。
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