主要成果
コーネル大学、スタンフォード大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、ストーニーブルック大学、および日本の国立材料研究所(NIMS)の研究チームは、電界を用いて4層グラフェンの層をスライドさせ、積層構造を変更することで、材料を非磁性状態と磁性状態の間で切り替えられることを明らかにしました。特筆すべきは、一度切り替わった状態は電圧を取り除いた後も持続するという点です。
技術・詳細
グラフェンの積層構造にはいくつかの形態があり、最も安定した「ベルナル(Bernal)」積層は非磁性です。一方で、より不安定な「菱面体(rhombohedral)」積層は、磁性や超伝導を含む相関・トポロジカル相を保持する特性があります。研究チームはゲート電圧を用いて、これら2つの状態間の遷移を誘導しました。
わずかにねじれたダブルバイレイヤー(二重二層)グラフェン試料を用いた輸送測定において、広範囲のゲート電圧にわたって、ベルナル主体の状態と、菱面体とベルナルの混合状態との間で双安定的な切り替えが確認されました。この構造変化に伴い、非磁性相から強磁性相への切り替えが起こることが示されています。
また、低温環境下において強磁性相は異常ホール効果を示しました。変位電場を反転させると信号の符号が反転することから、この効果はベルナル領域と菱面体領域の境界から生じている可能性が示唆されています。この構造的な切り替えは高い信頼性で繰り返し行うことが可能です。
背景・業界の文脈
本研究のリードオーサーであるDaniel Brandon氏は、この状態が長時間持続することから、信頼性の高いメモリソースになると述べています。従来の材料では困難であった、電気的な操作による物理的構造の書き換えと、それに伴う磁気特性の制御を同時に実現した点が技術的なポイントとなります。
今後の展望
研究チームは、この手法を「オンデマンドで特性を書き換えられる材料」への道であると考えています。シニアオーサーの安田賢治氏は、電気的に構造を書き換えることで、磁性だけでなく超伝導やその他の量子状態も切り替えられる可能性があると指摘しています。これにより、再構成可能な量子材料や、新しい形態の非揮発性メモリの開発につながることが期待されます。
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