RetroTAC|PROTACsの合成容易性を高速予測するAIモデルの性能と課題

arXiv (Preprint) スウェーデン
概要
PROTACs(標的タンパク質分解誘導剤)の合成容易性を、ルート由来のスコアから直接予測する機械学習サロゲートモデル「RetroTAC」が開発されました。このモデルはアンサンブル手法を用いており、ホールドアウト分子においてRMSE 0.13、R² 0.65を達成しています。計算コストの高い逆合成解析を介さずに合成可能性を高速に優先順位付けできるため、仮想ライブラリのスクリーニング効率を大幅に向上させます。
詳細

主要成果

研究チームは、PROTACsの合成容易性を予測する高速な機械学習モデル「RetroTAC」を開発しました。RetroTACは、合成ルートの深さ(ステップ数)の短さと、分子断片のバランスの良い結合を評価する「ルート由来スコア」を、分子構造から直接予測するサロゲートモデルです。検証の結果、高スコアと予測された候補分子は、平均ルート由来合成容易性が0.73であったのに対し、低スコア候補は0.31にとどまりました。また、テストされた検索設定において、高スコア候補の98.75%が完全に解決された一方、低スコア候補では51.00%にとどまり、予測の有効性が示されました。

技術・詳細

RetroTACは、相補的なモデルを組み合わせたアンサンブル構成となっており、ホールドアウト分子に対してRMSE 0.13、R² 0.65という精度を実現しています。本手法の核心は、人間が解釈可能なPROTACs向けのルート由来スコアを定義し、それを予測させる点にあります。従来の逆合成計画ツールは、ステップ数や収束性、使用するビルディングブロックなどの詳細な証拠を提供しますが、計算コストが非常に高く、特にPROTACsのような巨大で複雑な分子では処理に時間を要します。RetroTACは推論時にプランナーを呼び出さず、単一の分子プロパティ予測として処理するため、高速なフィルタリングが可能です。

背景・業界の文脈

PROTACsは、標的タンパク質とE3ユビキチンリガーゼを繋ぐヘテロ二機能性分子であり、従来の阻害剤では困難だったタンパク質の分解を誘導できます。しかし、その構造は「標的結合部位(ウォーヘッド)」「リンカー」「E3リガーゼリガンド」の3つのモジュールからなるため、従来の小分子医薬よりも大きく柔軟であり、合成がボトルネックとなっていました。既存の合成容易性スコアは小分子向けに開発されており、モジュール結合による合成というPROTACs特有の性質を過小評価し、複雑さによるペナルティを過剰に課す傾向がありました。また、DeepPSAやFSscoreといったPROTACs特化型の既存モデルもありますが、ルート由来のスコアとの直接的な比較や、汎用的なルート解析との統合に課題がありました。

今後の展望

研究チームは、ShallowTreeによって生成された約20,000件のPROTACs合成ルートおよびRetroTACのアンサンブルモデルをオープンに公開しています。これにより、生成AIなどで大量に列挙される仮想的な分解誘導剤ライブラリの中から、合成可能な候補を高速に優先順位付けすることが可能になります。明示的な逆合成計画は、RetroTACで絞り込まれた少数の候補分子に対してのみ適用することで、計算リソースを最適化し、創薬プロセスを加速させることが期待されます。

元記事: https://arxiv.org/html/2610.13639v1

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