主要成果
MITの研究チームは、RNAやDNAなどの遺伝物質を細胞へ届ける配送車両である「脂質ナノ粒子(LNP)」の製造を自動化するプラットフォームを開発しました。このシステムは、LNPの性能を決定づける重要な要因である「サイズ」と「形状」を、前例のない精度で制御できる点が最大の特徴です。研究チームは、この自動化プラットフォームによって得られた膨大なデータを用いて機械学習モデルを構築し、要求されるサイズや形状を実現するためのパラメータをオンデマンドで予測することを可能にしました。
技術・詳細
従来のLNP製造では、脂質溶液とmRNA溶液を急速に混合しますが、この手法では粒子の寸法を制御する手段がほとんどなく、生物学的分布を左右するサイズ管理がボトルネックとなっていました。MITのチームが開発した新プラットフォームは、以下の2段階の混合プロセスを採用しています。
- 第1ステップ:mRNAと脂質を等しい流速で混合し、粒子の核形成と成長を開始させる。
- 第2ステップ:精密に制御された遅延時間の後、追加のバッファーを注入して粒子の成長を停止させる。
この「滞留時間(レジデンスタイム)」を調整することで粒子サイズを直接制御でき、さらに第2ステップで注入するバッファーの組成を変えることで、粒子を球形からアボカドのような細長い形状へと変化させることが可能です。特筆すべきは、これらの調整がナノ粒子の化学組成を変えずに実行できる点です。さらに、このシステムを市販の動的光散乱装置に接続し、リアルタイムでサイズを測定しながら、目標値に達するまで遅延時間などの動作パラメータを自動的に調整するループを構築しました。
背景・業界の文脈
mRNAワクチンなどの成功を支えたLNPは、体内の酵素による分解から脆弱な遺伝物質を保護し、細胞内への取り込みを促進する不可欠な技術です。しかし、LNPの設計はこれまで「科学であると同時に芸術(職人技)」のような側面があり、試行錯誤による開発に多くの時間を要していました。特に、標的とする臓器(肝臓など)によって最適な粒子サイズが異なるため、サイズ制御の不完全さは治療薬の有効性に直結する課題となっていました。
今後の展望
本プラットフォームの導入により、LNPの処方設計は「数週間にわたる反復的な調整」から、あらかじめ望ましい特性を指定して予測的に達成する「工学的な規律」へと進化します。自動化による高速なデータ収集と機械学習の統合は、核酸医薬開発のパイプライン全体を加速させ、より効率的な治療薬のデザインを実現することが期待されます。
元記事: https://bioengineer.org/automated-lipid-nanoparticle-platform-promises-faster-rna-therapy-design/
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