主要成果
合成生物学企業のSyntax Bioは、同社のCellgorithmプラットフォームを用いることで、ヒトiPSCを膵β細胞の状態へ4日間で分化させた研究成果を公開しました。この結果は、京都国際会館で開催された「iPSC 20周年シンポジウム(ISSCR iPSC 20th Anniversary Symposium)」にて、口頭発表およびポスター発表(Poster 288)として提示されました。
技術・詳細
Cellgorithmは、CRISPR活性化(CRISPRa)を利用して、ゲノムの切断や編集を行うことなく、細胞が本来持っている遺伝子スイッチをオンにする技術です。ヒトの発生過程における特殊細胞の形成を模倣し、一回の過渡的なDNA指示の導入によって、プログラムされた特定の順序と制御されたタイミングで遺伝子を活性化させます。
研究チームは、29の膵系譜遺伝子から抽出した29のバリアントを含む170以上のCellgorithmバリアントを3つのスクリーニングでテストしました。各バリアントは、5回以下のタイミング設定ステップで最大10個の遺伝子を活性化させます。シングルセルRNAシーケンシングおよびタンパク質発現解析の結果、特定の細胞が4日以内に内分泌前駆細胞および膵β細胞様細胞の状態に誘導されることが確認されました。
一方で、指示に後続段階が含まれていても、細胞が中間段階で停止してしまう「グリッドロック(gridlocks)」現象が発生するケースも確認されており、活性化させる遺伝子の種類とタイミングが分化の成否を分けることが明らかになりました。
背景・業界の文脈
再生医療における細胞製造は、従来、非常に時間がかかり、労働集約的なプロセスであることが大きな課題となっていました。Syntax Bioのアプローチは、数ヶ月を要していた分化プロセスを数日または数週間に短縮し、より信頼性の高いスケールアップ可能な製造を実現することを目指しています。また、このプラットフォームで得られたデータはヒト細胞系譜ツリーのマップとなり、遺伝子指示に対する細胞の反応に関する知見が蓄積されるため、次なる細胞状態への予測精度と分化速度を向上させるフィードバックループを形成しています。
今後の展望
同社は、Breakthrough T1Dの業界発見・開発パートナーシップ(IDDP)による支援を受け、膵β細胞プログラムの「Aim 1(スクリーニングと候補の選定)」を完了しました。現在は「Aim 2」へと移行しており、選定されたCellgorithmの最適化、製造スケールアップのためのプロセス開発、およびメイヨークリニック(Mayo Clinic)との連携による機能評価と前臨床評価に注力しています。これにより、1型糖尿病患者に向けた革新的な細胞治療の実現を目指しています。
元記事: https://finance.yahoo.com/healthcare/articles/syntax-bio-programs-stem-cells-090000290.html
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