主要成果
メルボルンのCelleo社が開発した「Larkem V40」は、細胞治療におけるボトルネックの一つであるバイアル充填工程を自動化するシステムであり、2026年オーストラリア・グッドデザイン賞のプロダクトデザイン(医療・科学)カテゴリーで受賞した。本システムを導入することで、従来は手作業で半日を要していた40本のバイアル充填作業を、約8分まで短縮できる。また、密閉されたシングルユースキット内で処理が完結するため、空気への露出がなく、高い無菌性を維持できる。
技術・詳細
Larkem V40は、バイアルを含む密閉セットから空気を排出し、その真空状態を液体で置き換える仕組みで動作する。これにより、最大40本のバイアルに対して、精密かつ一貫した容量の充填を同時に行うことができる。充填後、マニホールド化されたバイアルは自動的に密封・分離され、業界標準のバイアルとして後工程に提供される。
本システムの性能については、2つの独立した評価結果が公開されている。Cell and Gene Therapy CatapultによるiPSC(人工多能性幹細胞)細胞バンクへの適用試験では、200本の細胞バンクを作成し、5回の反復試行間で統計的な差がないことが確認された。また、細胞生存率、濃度、解凍後の回復率、多能性についても手作業と同等であった。さらにCCRM NordicによるCAR-TワークフローのQCサンプル提供試験では、手作業と比較して充填容量の精度が向上し、生存率、細胞濃度、表現型、力価は手作業と同等であることが報告されている。
背景・業界の文脈
CAR-T療法などの細胞治療は、患者自身の細胞を採取して数週間かけて修飾・培養し、再び患者に戻す「自己由来(autologous)」の製造プロセスが主流である。そのため、1回ごとの投与が独立した製造ランとなり、製造能力が治療可能な患者数を制限する要因となっている。従来の充填工程は、最も厳格なクラスのクリーンルーム内で、熟練スタッフがピペットを用いて1本ずつ手作業で充填していた。この手法は極めて低速であるだけでなく、バイアルごとのばらつきや、開放系処理による汚染リスクを伴い、貴重な人的リソースを拘束していた。
今後の展望
Larkem V40は、細胞が密閉キットから出ない設計であるため、建設コストが高く供給不足である特殊な高制御スイートではなく、多くの施設が既に保有している低グレードのクリーンルームでの運用が可能となる。Celleo社は、100回以上の科学者やオペレーターへのインタビューに基づき、直感的に操作できるユーザーインターフェースやシングルユースパッケージを開発した。これにより、製造におけるバッチ失敗率の低減と汚染リスクの軽減が期待され、結果として救命治療への患者アクセスを大幅に改善することが見込まれている。
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