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SK On|全固体電池 企業解説

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COMPANY PROFILE / 全固体電池

SK On
― パイロットプラントを建て、大学と論文を出し続ける「2029年組」

SK OnはSKイノベーションの子会社で、現代自動車・起亜、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、フォードに電池を供給してきた電池メーカーです。 全固体電池では2025年9月に大田のパイロットプラントを竣工し、商用化目標を2030年から2029年へ1年前倒ししたことを自社で公表しています。 硫化物系と高分子・酸化物複合系の2種類を同時に開発し、漢陽大・延世大・ソウル大などと組んだ研究成果を次々に論文として出している点も、この会社の特徴です。 一方で全固体電池の顧客は1社も公表されていません。

構成:韓国DART提出の2025年12月期 事業報告書(2026年3月16日)と2026年6月期 半期報告書(2026年8月14日)、および同社公式プレスリリースを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるSK Onと、全固体電池での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 全固体電池の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 全固体電池にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は全固体電池で何を目指しているか
  9. 全固体電池分野の提携マッピング
  10. 採用している技術方式
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるSK Onと、全固体電池での立ち位置

正式名称エスケーオン株式会社英文名 SK ON CO., LTD.
本社韓国・ソウル特別市
鍾路区
鍾路51 鍾路タワー
成り立ち2021年10月1日
SKイノベーションから分割
非上場。DARTには報告書を提出
この分野での区分電池メーカー親会社の下で電池事業を担う
全固体電池の目標2029年 商用化2025年9月に2030年から1年前倒しと公表
パイロットプラント大田市儒城区
未来技術院内
2025年9月竣工・約4,628平方メートル
方式硫化物系と
高分子・酸化物複合系
2種類を同時に開発
全固体電池の顧客公表なし供給契約・供給先ともに開示されていない
まず押さえるべき1点

全固体電池に取り組む企業は、大きく自動車メーカー・電池メーカー・スタートアップの3種類に分かれます。 SK Onは電池メーカーです 事実。 自社の車に載せる出口を持たないので、全固体電池も自動車メーカーに採用されなければ売上になりません。

ただしSK Onには、同業他社と違う事情が2つあります。 1つは非上場で、SKイノベーションが発行済株式の90.33%を持つ子会社であること 事実。 もう1つは、2024年11月から2025年11月にかけて SKトレーディングインターナショナル・SKエンターム・SKエンムーブを次々に吸収合併し、 いまは石油トレーディング事業と基油・潤滑油事業を併せ持つ会社になっていることです。 そのため会社全体の売上=電池の売上ではありません。この点は第4章で数字を分けて示します。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「エスケーオン株式会社(에스케이온 주식회사)」、英文は SK ON CO., LTD.。 公式サイトの表記は SK on で、onの部分は小文字です。 親会社のSKイノベーション(SK Innovation)とは別法人で、 同じSKグループにはSKエナジー、SKジオセントリック、SKアイイーテクノロジーなどもあります。 本稿で「SK」とだけ書くことはしません。

公式サイト:http://www.sk-on.com/

3. 全固体電池の世界で、この会社はどこにいるか

全固体電池に取り組む企業の3つの類型 同じ「全固体電池をやっている会社」でも、立場と狙いがまったく違う 自動車メーカー 電池メーカー スタートアップ 自社の車に載せるために作る 電池を売るために作る 技術を実証し出資を集める トヨタ/ホンダ/BMW 日産/VW/上汽 ほか SK On/LG Energy Solution サムスンSDI/CATL QuantumScape Factorial/Solid Power ほか 量産の出口を自分で持つ 複数の顧客に供給できる 量産設備を自前で持たない 失敗しても車は売れる 採用されないと売れない 資金が尽きると終わる SK Onもこの真ん中。ただし親会社はSKイノベーションで、電池以外の事業も抱えている しかも硫化物系と高分子・酸化物複合系という2種類の全固体電池を同時に開発している
図1 全固体電池に取り組む企業の3類型と、SK Onの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う23社から例示しています 本稿の計算。SK Onが電池の製造販売を行い、石油・潤滑油事業も併せ持つことは事業報告書の記載に基づきます。

4. 会社の規模

SK Onは電池メーカーなので規模がそのまま体力を意味しますが、 相次ぐ吸収合併によって会社全体の数字と電池事業の数字が大きく離れている点に注意が必要です 事実。 事業報告書は事業部門別の財務情報を分けて開示しているので、そのまま引きます。

事業部門別(連結・百万ウォン)2023年12月期2024年12月期2025年12月期
電池事業 売上高12,897,2126,266,5606,978,231
電池事業 営業損益△581,824△1,127,040△931,381
石油事業 売上高―7,768,18149,013,095
石油事業 営業利益―40,478533,975
基油・潤滑油事業 売上高――756,286
研究開発費 総額300,686277,020312,175
研究開発費 ÷ 売上高2.33%1.97%0.55%

△は損失。石油事業は2024年11月、基油・潤滑油事業は2025年11月の合併以降の期間だけが計上されています。研究開発費の売上比率が2025年に0.55%まで下がったのは、研究開発費が減ったからではなく合併で分母の売上が一気に膨らんだからです。

2026年上半期(1〜6月)ほか金額・数値備考
電池事業 売上高・その他営業収益4兆8,161億ウォン半期報告書ベース
電池事業 営業損益4,725億ウォンの黒字半期報告書では2025年通期を1兆6,500億ウォンの赤字としている。上の表(事業報告書)の△9,314億ウォンとは数字が異なる。半期報告書は「売上高及びその他営業収益」で区分しており、集計の基準が違うとみられる
研究開発費(上半期)962億ウォン全社売上高比 0.21%
電池の生産能力94.3 GWh/年2026年6月末・連結対象法人ベース
平均稼働率36.4%2026年上半期。2025年は48.7%、2024年は43.8%
従業員数3,822人2025年12月31日・韓国国内
筆頭株主SKイノベーション 90.33%2025年12月31日・普通株および第1種転換優先株
ここで注意

上の数字は電池事業全体のものです。 全固体電池の事業規模を示す数字ではありません。 SK Onは全固体電池の売上・投資額・専任人員数をいずれも公表していません 未確定/将来。 2025年9月に竣工したパイロットプラントについても、面積(約4,628平方メートル)は公表されていますが投資額は公表されていません。

また稼働率36.4%という数字にも注意してください。 いま持っている生産設備の3分の1しか動いていない状態です。 全固体電池の量産設備を語る前に、既存設備の埋め戻しが先に来る局面だと読めます。

5. 全固体電池にかけているリソース

金額と人数は非公表ですが、何をリソースとして投じているかは事業報告書と公式プレスリリースから具体的に読み取れます。 以下は4つの観点それぞれについて、一次情報で確認できたか/できなかったかを整理した表です。

リソースの種類内容区分
人(研究組織)研究開発を担うのは未来技術院。素材開発・Platform開発・先行工程開発・製品開発・System開発・未来技術戦略の6機能で構成。全固体電池はこのうちPlatform開発の研究課題に入っている事実
人(人員数)全固体電池の専任人員数。未来技術院の人員数も開示なし非公表
金(全社の研究開発費)2025年12月期 3,121億ウォン、2026年上半期 962億ウォン事実
金(全固体電池の内訳)全固体電池向けの研究開発費、パイロットプラントの投資額非公表
設備大田広域市儒城区の未来技術院内に全固体電池パイロットプラントを2025年9月に竣工。約4,628平方メートル(約1,400坪)。顧客へ供給する試作品を作り、品質と性能を評価・検証する施設と説明。一部のラインではリチウムメタル電池も開発事実
外部への出資2021年に米Solid Powerへ3,000万ドル(約400億ウォン)を出資し、次世代全固体電池の共同開発で合意したと公表事実
技術の導入2024年1月のCES 2024でSolid Powerと技術移転協約を締結。同社の全固体電池セル設計とパイロットライン工程に関する技術を研究開発に使えるようになり、Solid Powerは硫化物系固体電解質をSK Onへ供給する事実
大学・研究機関との連携檀国大学(2023年・酸化物系新固体電解質)、漢陽大学(2025年・リチウムメタル負極の保護膜)、延世大学(2025年・ゲル高分子電解質、2026年・シリコン負極用バインダー)、ソウル大学(2026年・単結晶正極材)。いずれも国際学術誌への掲載を公表。UNISTとは人材育成でも連携事実
素材技術者の視点:「WIPフリー」が意味していること

パイロットプラント竣工の公表で技術的にいちばん重い一文は、 「温間等方圧プレス(WIP, Warm Isostatic Press)フリー技術を国内で初めて適用した」という部分です 事実。

全固体電池は、固体の粒どうしが触れている場所でしか電気が流れません。 だから作るときに強い圧力をかけて粒を密着させる必要があります。 WIPは25〜100℃の環境で電極にあらゆる方向から均一に圧力をかける工程で、 密度と性能は上がるのですが、会社自身が挙げているとおり セルを袋に密封する手間がかかり、連続した自動化ラインを組みにくく、生産性が低いという難点があります。

SK Onは、独自のセル設計と普通のプレス工程でWIPの利点だけを残したと説明しています。 具体的には、活物質と導電材の混合条件・電極組成を見直して電極内部の抵抗を下げ、 電極と固体電解質の接合を改善して界面抵抗を下げた、という筋です。 つまりこの会社は材料側で工夫して、設備側の難工程を消しにいったことになります。 全固体電池の量産で効いてくるのはこういう工程の勝負で、セルの性能表だけでは見えません 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2005年EV用大容量リチウムイオン電池の商用化に着手。大田R&Dセンターに研究開発基盤、忠清南道瑞山に初期生産設備いまのパイロットプラントは、この大田の拠点の延長にある
2021年10月1日SKイノベーションから物的分割してSK Onを設立電池事業が独立した法人になった
2021年米Solid Powerへ3,000万ドルを出資し、次世代全固体電池の共同開発で合意材料・技術の相手を出資という形で押さえた
2023年檀国大学の研究チームと、リチウムイオン伝導度の高い酸化物系の新しい固体電解質を開発。国内外で特許出願硫化物系だけでなく酸化物系も並行していることが分かる
2024年1月10日CES 2024でSolid Powerと技術移転協約。セル設計とパイロットライン工程の技術を受け取り、硫化物系固体電解質の供給を受ける。2025年までに大田へパイロットラインを作る計画を公表この時点で2025年という設備の期限が明示された
2025年5月6日漢陽大学と組み、リチウムメタル負極に保護膜を形成して硫化物系全固体電池の寿命を3倍に。常温で300回以上の充放電を確認(ACS Energy Letters)。延世大学とはゲル高分子電解質の硬化時間と寿命の関係を解明(Angewandte Chemie)この時点の公表計画は「高分子・酸化物複合系2028年、硫化物系2030年」
2025年9月16日大田広域市儒城区の未来技術院内に全固体電池パイロットプラントを竣工(約4,628平方メートル)。商用化目標を2030年から2029年へ前倒し。エネルギー密度はまず800Wh/L、長期で1000Wh/Lを目標と公表。竣工式にはSolid Power韓国支社長も出席設備・時期・数値目標が同時に出た、この会社で最も情報量の多い公表
2026年1月15日延世大学とシリコン負極向けの導電性高分子バインダーPPMAを開発(Nature Communications)。水系プロセスが使え、必要な圧力を80%以上下げられると説明。1月8日にはソウル大学との単結晶正極材の成果も公表(Nature Energy)大学との共同研究が年に何本も出る体制になっている

7. 今後の計画

全固体電池の商用化2029年2025年9月に2030年から前倒しと公表
高分子・酸化物複合系2028年 商用化2025年5月時点の公表
エネルギー密度まず800Wh/L
長期で1000Wh/L
会社が掲げる目標値
電池の生産能力2026年末までに
179GWh/年以上
全固体電池専用の数字ではない

生産能力の179GWhという数字はいま売っている液系電池を含む電池事業全体の計画であり、 全固体電池の量産能力ではありません 事実。 なお2026年5月にはフォードとの合弁事業が終了し、 テネシーの合弁会社はSK Onの単独子会社(SK On Tennessee, LLC)へ、 ケンタッキー第1工場(3.1GWh/年)は売却されています。

確認できなかったこと

次はいずれも事業報告書・半期報告書・公式プレスリリースに記載がありません 未確定/将来。

全固体電池の量産工場の場所/量産能力/投資額/ 顧客と供給契約/価格/搭載される車種。 パイロットプラントの説明にある「顧客へ供給する試作品」という表現は、 試作品を渡す先が存在しうることを示すだけで、相手の社名も契約の有無も公表されていません。

8. この会社は全固体電池で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
技術の一部を外から買って時間を買う戦略をとっているSolid Powerへの出資(2021年)と技術移転協約(2024年)で、セル設計・工程技術・硫化物系固体電解質を外部から得ている推測
2種類を同時に走らせて取りこぼしを防ぐ設計高分子・酸化物複合系(2028年)と硫化物系(2029年)という2つの商用化目標を公表していること推測
大学との共同研究は広報より特許と人材が目的檀国大・漢陽大の成果でいずれも国内外に特許出願済みと明記し、UNISTとは人材育成で連携していること推測
目標を1年前倒ししたのは設備が実際に建ったから2029年への前倒しが、パイロットプラント竣工と同じ日の発表で示されたこと推測
まずはエネルギー密度で殴る製品にする800Wh/L→1000Wh/Lという数値目標が最初に示され、コストや価格の目標は示されていないこと推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

2025年5月の公表では、この会社の全固体電池は 「高分子・酸化物複合系は2028年、硫化物系は2030年」と書かれていました 事実。 ところが同じ年の9月、パイロットプラント竣工の発表で 「2029年までに商用化する。従来目標の2030年より1年早めた」と変わりました 事実。 この4か月で起きた外形的な変化は、大田にパイロットプラントが建ったことだけです。

全固体電池で時期が前倒しされる例はあまり多くありません。 材料の性能が上がっただけなら量産時期は動かせませんが、 工程を回せる設備ができると、量産までの残り工程が読めるようになります。 同じ発表でWIPフリー技術という工程側の成果を強調していることも合わせると、 この前倒しは材料の進歩ではなく作り方の目処が立ったことによる、と本稿は読みます 未確定/将来。

9. 全固体電池分野の提携マッピング

SK Onを中心とした全固体電池の提携関係 2025年事業報告書と公式プレスリリースに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 顧客(自動車メーカー) 材料サプライヤー 研究機関・大学 全固体電池専用ではない関係 SK On 電池メーカー 自動車メーカー(顧客) 全固体電池の供給先は未公表 Solid Power 硫化物系の固体電解質を供給 漢陽大学・延世大学 全固体電池の寿命と界面を共同研究 ソウル大・檀国大・UNIST 材料開発と人材育成で連携 親会社 SKイノベーション(出資比率90.33%)
図2 SK Onを中心とした全固体電池の提携関係。濃紺は顧客にあたる自動車メーカー、オレンジは材料サプライヤー、緑は研究機関・大学、グレーは全固体電池専用ではない関係です。顧客の枠を破線にしているのは、そこに書ける相手が一次情報に1社もないからです 未確定/将来。Solid Powerとの関係は材料供給と技術移転に加えて2021年の出資も含みます。なお現代自動車・起亜、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、フォードは電池事業全体の供給先であって、全固体電池の顧客ではありません。

10. 採用している技術方式

SK Onは全固体電池の方式を2系統とも公表しています 事実。 事業報告書の研究開発実績表にも「硫化物系全固体、高分子/酸化物複合系電池の開発」と明記されています。

項目公表されている内容
方式1:硫化物系Solid Powerから固体電解質の供給を受け、共同で開発。パイロットプラントの新ラインはこちら。商用化目標2029年
方式2:高分子・酸化物複合系ゲル高分子電解質を使う系統。2025年5月時点の商用化目標は2028年
負極リチウムメタルとシリコンの両方を研究。パイロットプラントの一部ラインではリチウムメタル電池も開発
エネルギー密度まず800Wh/Lでの商用化を目標とし、長期で1000Wh/Lに挑戦
製造プロセスWIP(温間等方圧プレス)フリー技術を国内で初めて適用。セル設計と通常のプレス工程で、WIPの利点を残しつつ生産性を上げたと説明
材料側の工夫活物質・導電材の混合条件と電極組成の開発で電極内部抵抗を低減。電極と固体電解質の接合改善で界面抵抗を低減
素材技術者の視点:2系統を並走させることの意味

硫化物系と高分子・酸化物複合系は、難所の種類がまったく違います 未確定/将来。 硫化物系はイオンが速く動き、柔らかいので加圧すれば電極と密着しますが、 水分に触れると有害なガスを出すため、製造から輸送まで乾燥環境を維持する負担が大きい系統です。 一方の高分子・酸化物複合系は、扱いは楽ですが常温でイオンが動きにくく、 ゲル状の高分子を挟んで性能を確保することになります。

延世大学との共同研究でゲル高分子電解質の熱硬化時間を調べ、 60分硬化なら容量低下9.1%、20分硬化なら約34%という差を確認している点は、 この会社が高分子系を実際の製造条件まで踏み込んで詰めていることを示します。 硬化時間は工場のタクトタイムそのものなので、これは学術的な興味ではなく生産設計の話です 事実。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
全固体電池の顧客がゼロ電池メーカーなので採用されて初めて事業になるが、供給先・供給契約はいずれも公表されていない未確定/将来
既存設備の稼働率が低い2026年上半期の平均稼働率は36.4%。生産能力94.3GWh/年に対して実際に動いている分が少ない事実
顧客の離脱が実際に起きた2026年5月にフォードとの合弁事業が終了し、ケンタッキー第1工場(3.1GWh/年)を売却。テネシーの合弁会社は単独子会社になった事実
電池事業は赤字が続いてきた電池事業の営業損益は2023年から2025年まで3期連続の赤字。2026年上半期に4,725億ウォンの黒字へ転じた事実
固体電解質を外部に依存硫化物系の固体電解質はSolid Powerからの供給。相手企業の事業継続と量産能力がそのままSK Onの制約になる推測
2系統並走の負担硫化物系と高分子・酸化物複合系は必要な設備も環境管理もまったく違う。限られた研究開発費を2つに割ることになる推測

12. 用語集

全固体電池
電解質を液体ではなく固体にした電池。発火リスクが低く、高いエネルギー密度が期待される。
硫化物系固体電解質
硫黄を含む固体電解質。イオンが動きやすく柔らかいが、水分に弱く扱いが難しい。
ゲル高分子電解質
高分子に電解液を含ませてゲル状にした電解質。完全な固体ではないが漏れにくい。
WIP
Warm Isostatic Press。常温より高い温度で全方向から均一に圧力をかける成形工程。
リチウムメタル負極
黒鉛の代わりにリチウム金属を負極に使う構成。容量は約10倍だがデンドライトが課題。
デンドライト
充電時にリチウム金属が樹枝状に伸びる現象。進むと短絡の原因になる。
バインダー
電極の粒どうしと集電体を接着させる材料。多く使うと抵抗が上がりやすい。
事業報告書
韓国で一定の要件を満たす会社が金融監督院の電子公示システム(DART)に提出する年次の法定開示書類。
概念図:試作ラインで作った少量のセルを、材料提供元と大学の両側から支える体制AI生成の概念図
図3 SK Onの全固体電池への取り組み方の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. SK On 2025年12月期 事業報告書(韓国・金融監督院DART提出、2026年3月16日)。事業部門別の売上高・営業損益・研究開発費・従業員数・沿革と吸収合併・筆頭株主の持株比率・研究開発担当組織(未来技術院)と研究開発実績(硫化物系全固体、高分子/酸化物複合系電池の開発)・主要顧客・生産能力の計画。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
  2. SK On 2026年6月期 半期報告書(韓国・金融監督院DART提出、2026年8月14日)。2026年上半期の事業部門別売上・営業損益・研究開発費、生産能力94.3GWh/年、平均稼働率36.4%、フォードとの合弁終了とケンタッキー第1工場の売却、SK On Tennessee, LLCへの社名変更。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003034
  3. SK On 公式プレスリリース「SK온, 전고체 배터리 파일럿 플랜트 준공…2029년 상용화 목표」(2025年9月16日)。大田広域市儒城区 未来技術院内のパイロットプラント竣工、約4,628平方メートル、硫化物系とリチウムメタル電池、商用化目標2029年(2030年から前倒し)、800Wh/Lと1000Wh/L、WIPフリー技術、漢陽大学との成果。 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=242&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
  4. SK On 公式プレスリリース「SK온, 美 솔리드파워와 협력 강화…전고체 배터리 개발 가속」(2024年1月17日)。CES 2024でのSolid Powerとの技術移転協約、硫化物系固体電解質の供給、2021年の3,000万ドル出資、2025年までに大田へパイロットラインを作る計画、檀国大学との酸化物系固体電解質。 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=134&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
  5. SK On 公式プレスリリース「SK온, 전고체 신기술 잇단 성과… 국제 학술지서 기술력 인정」(2025年5月6日)。漢陽大学とのリチウムメタル負極保護膜(寿命3倍・常温300回以上、ACS Energy Letters)、延世大学とのゲル高分子電解質の硬化時間と寿命(Angewandte Chemie)、当時の商用化目標(高分子・酸化物複合系2028年、硫化物系2030年)。 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=219&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
  6. SK On 公式プレスリリース「SK온, R&D 성과 잇따라…실리콘 음극 전고체 상용화 해법 제시」(2026年1月15日)。延世大学とのバインダーPPMA(Nature Communications)、水系プロセスと圧力80%低減、ソウル大学との単結晶正極材(Nature Energy)、パイロットプラントと2029年目標の再掲。 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=247&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
  7. SKイノベーション 2025年12月期 事業報告書(韓国・金融監督院DART提出、2026年3月16日)。親会社側の開示。本稿で確認した限り全固体電池に関する記述はなく、次世代電池分野の機会検討に言及するにとどまる。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316000827

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称・設立(2021年10月1日にSKイノベーションから物的分割)・本社所在地事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
SKトレーディングインターナショナル・SKエンターム・SKエンムーブの吸収合併時期事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
2023〜2025年12月期の事業部門別売上高・営業損益・研究開発費事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
SKイノベーションが90.33%を保有する筆頭株主であること事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
従業員数3,822人(2025年12月31日・韓国国内)事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
未来技術院の6機能構成と、全固体電池がPlatform開発の研究課題であること事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
主要顧客が現代自動車・起亜、メルセデス・ベンツ、VW、フォードであること(電池事業全体)事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
2026年末までに179GWh/年以上という生産能力の計画未確定/将来出典1に記載の会社計画であり実績ではない https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
2026年上半期の電池事業売上4兆8,161億ウォン・営業利益4,725億ウォン・研究開発費962億ウォン事実出典2 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003034
生産能力94.3GWh/年と平均稼働率36.4%事実出典2 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003034
2026年5月のフォードとの合弁終了、ケンタッキー第1工場(3.1GWh/年)の売却、SK On Tennessee, LLCへの社名変更事実出典2 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003034
大田広域市儒城区 未来技術院内のパイロットプラント竣工(2025年9月・約4,628平方メートル)事実出典3 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=242&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
商用化目標が2029年であること(2030年から1年前倒し)未確定/将来出典3に記載の会社計画であり実績ではない http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=242&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
エネルギー密度800Wh/L・長期1000Wh/Lという目標、WIPフリー技術の適用事実出典3 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=242&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
Solid Powerへの3,000万ドル出資(2021年)と技術移転協約(2024年1月)、硫化物系固体電解質の供給事実出典4 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=134&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
檀国大学との酸化物系新固体電解質(2023年・特許出願済み)事実出典4 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=134&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
漢陽大学との寿命3倍・常温300回以上、延世大学とのゲル高分子電解質の硬化時間と容量低下事実出典5 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=219&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
2025年5月時点の目標(高分子・酸化物複合系2028年、硫化物系2030年)未確定/将来出典5に記載の会社計画であり実績ではない http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=219&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
延世大学とのPPMAバインダー、ソウル大学との単結晶正極材(2026年1月)事実出典6 http://www.sk-on.com/company/press_view.asp?idx=247&page=1&schtxt=&CompanyCode=010
親会社SKイノベーションの事業報告書に全固体電池の記述が見当たらないこと事実出典7 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316000827
全固体電池の3類型の区分(自動車/電池/スタートアップ)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの23社から例示
全固体電池の売上・投資額・専任人員数、パイロットプラントの投資額未確定/将来いずれも非公表。本稿では推計もしない
全固体電池の顧客・供給契約・量産工場・量産能力・価格・搭載車種未確定/将来出典1〜7に記載なし。報道ベースの数値は採用しない https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260316001423
2種類を並走させて取りこぼしを防ぐ設計だという読み推測2つの商用化目標が併記されていることからの本稿の解釈
大学との共同研究が特許と人材を目的にしているという読み推測特許出願済みという記載とUNISTとの人材育成連携からの本稿の解釈
目標前倒しの理由が設備の完成にあるという読み推測前倒しの発表がパイロットプラント竣工と同日である本稿の観察
まずエネルギー密度で勝負する製品になるという読み推測数値目標が密度だけで、コスト目標が示されていないことからの本稿の解釈
2系統の難所の違いに関する解説推測固体電解質一般の性質と出典5の記述からの本稿の解説
固体電解質の外部依存と、2系統並走の負担というリスク推測提携構造と研究開発費の規模からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月23日/Troy Technical
本稿の数値はすべてSK Onが韓国・金融監督院の電子公示システム(DART)に提出した法定開示書類、および同社公式プレスリリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。