🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

均等化発電原価|ペロブスカイト太陽電池 技術解説

技術・機関・企業解説の一覧へ戻る

TECHNOLOGY EXPLAINER

均等化発電原価(LCOE)
― 効率より寿命が効く、という計算

国の発電コスト検証は、2040年のペロブスカイト太陽電池の発電コストを参考値として15.3円/kWh(政策経費なし)と試算しています。 その前提は、建設費20.4万円/kW、設備利用率14%、稼働年数20年です。 この記事では、公的機関の公表値をもとに、LCOEの中身を分解し、寿命・劣化・効率・割引率を動かすと何円変わるかを、前提を明記して計算します。

構成:資源エネルギー庁「発電コスト検証に関するとりまとめ」(2025年2月)、経済産業省「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)、IRENA「Renewable Power Generation Costs in 2024」を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

暗い卓上に、無地の暗い色の小さな板と、砂が落ちている無地の砂時計が並べて置かれている概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。「発電コストは、何年発電し続けられるかで決まる」という考え方を雰囲気として表現したものです。実在の製品・装置を示すものではありません。
この記事の構成
  1. LCOEとは何か(3行でつかむ)
  2. 国の目標 ― 20円、14円、そして自立化
  3. 発電コスト検証の参考値 ― 15.3円/kWhの中身
  4. 本稿の計算:公表された諸元から15円台を再現する
  5. 本稿の計算:寿命・劣化・効率・割引率を動かすと
  6. 素材技術者の視点①:寿命が10年なら、LCOEは約1.6倍
  7. 素材技術者の視点②:効率の価値は「面積あたりのコスト」を通じて効く
  8. 素材技術者の視点③:工事費と重さ ― パネル以外のコスト
  9. 世界の太陽光との位置関係
  10. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  11. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料・プロセス上の読み取りは「解説」として区別しています。 調査会社による市場規模・価格の推計は使っていません。

1. LCOEとは何か(3行でつかむ)

  • 定義:均等化発電原価(LCOE)は、発電所を建てて動かし、廃棄するまでにかかる費用の総額を、生涯の発電量で割った1 kWhあたりのコストです。資源エネルギー庁の発電コスト検証は、モデルプラントについて建設から廃棄までのライフサイクル全体の総費用を、割引率(実質)で現在価値に換算して計算するとしています事実
  • 割引率:同検証は、結果の継続性の観点から割引率(実質)を一律3%としています事実
  • ペロブスカイトの扱い:同検証は、ペロブスカイト太陽電池を技術が開発途上で費用の予見性が必ずしも高くないとして、メーカーの見通しをもとに一定の仮定を置いた参考値として試算しています事実
LCOEの考え方(模式図) 分子:生涯の費用(現在価値) 資本費(建設費・固定資産税・廃棄費用)+ 運転維持費 (+ 政策経費:検証では「あり」「なし」の両方を示す) 将来の支出は割引率で割り引く 分母:生涯の発電量(現在価値) 出力 × 設備利用率 × 8,760時間 × 稼働年数 将来の発電量も同じ割引率で割り引く = LCOE (円/kWh) 材料が効くところ 分子:パネル費・工事費・廃棄 分母:効率・劣化・寿命 ※ 費用の区分と「割引率で現在価値に換算する」考え方は、資源エネルギー庁の発電コスト検証[参考資料1]の記載によります。 ※ 右上の「材料が効くところ」は本記事による整理です。
図1 概念図(ベクター作図)。費用の区分と現在価値化の考え方は、資源エネルギー庁の発電コスト検証[参考資料1]の記載によります。「材料が効くところ」は本記事による整理です。

2. 国の目標 ― 20円、14円、そして自立化

経済産業省などの官民協議会がまとめた「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)は、発電コストについて次の目標を掲げています未確定/将来。

時期戦略の記載
2025年(度)までGI基金で掲げる20円/kWhが可能となる技術を確立(一定条件下で発電コスト20円/kWh以下を実現する要素技術の確立)
2030年(度)まで14円/kWhが可能となる技術を確立。生産体制は2030年を待たずにGW級の構築を目指す
2040年自立化が可能な発電コスト(10円/kWh〜14円/kWh以下)の実現を目指す。10円/kWhは「研究開発の進展等により大幅なコスト低減をする場合」

記載そのものは事実(次世代型太陽電池戦略[参考資料2])ですが、内容は目標であり、達成は確認されていません未確定/将来。GI基金の「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」は648億円と記されています。

3. 発電コスト検証の参考値 ― 15.3円/kWhの中身

資源エネルギー庁の発電コスト検証ワーキンググループ(2025年2月のとりまとめ)は、ペロブスカイト太陽電池の2040年の発電コストを、 政策経費ありで16.4円/kWh、政策経費なしで15.3円/kWhと試算し、参考値として示しています事実。

諸元値検証資料の説明
建設費20.4万円/kW設備費(パネル費用)14.3万円/kW+工事費等6.1万円/kW。官民協議会に参画するメーカー6社のコスト見通しと、事業用太陽光(屋根設置)の2023年設置のFIT/FIP案件の定期報告をもとに分析
廃棄費用0.6万円/kW同上
運転維持費0.37万円/kW/年事業用太陽光(屋根設置)のFIT/FIP案件の中央値
設備利用率14%2023年設置の太陽光パネルの効率を20%と仮定し、メーカー6社の効率の見通しと屋根設置案件の中央値から分析
稼働年数20年メーカー6社の見通しの中央値(事業用太陽光の検証では25年・30年)
モデルプラント250 kW・屋根置き事業用太陽光のモデルプラントと同じ規模。同一条件で比べるため屋根置きを想定
生産規模の前提各社 年約1 GW2040年に一定規模の年間生産体制を実現した場合のメーカーの見通しにもとづく

すべて事実(発電コスト検証に関するとりまとめ[参考資料1]。同じ諸元は次世代型太陽電池戦略[参考資料2]にも掲載)。検証資料は、壁や窓に設置すると日射量が減るため設備利用率が下がること、実際の発電コストは規模・設置形態・封止材の種類などで大きく変わりうることに留意を求めています。

発電コスト検証の公表値(円/kWh) 上:ペロブスカイト2040年(参考値)の内訳 下:太陽光の2023年・2040年の値(政策経費なし) ペロブスカイト 2040 建設費 11.2 運転 3.0 固定資産税 1.0 廃棄 0.2 15.3 太陽光(事業用)2023 10.0 太陽光(事業用)2040 6.6〜8.4 太陽光(住宅用)2023 14.0 太陽光(住宅用)2040 7.6〜10.4 ※ すべて発電コスト検証[参考資料1]の公表値。棒の長さは円/kWhに比例(1円=32 px)。2040年の太陽光は幅で示されています。 ※ 稼働年数はペロブスカイト20年、太陽光(事業用・住宅用)は2040年の表で25年。設備利用率・規模も異なり、同じ前提の比較ではありません。 ※ ペロブスカイトの内訳は四捨五入のため合計が一致しない場合があります(政策経費を含めると16.4)。
図2 概念図(ベクター作図)。すべて資源エネルギー庁の発電コスト検証[参考資料1]の公表値です。稼働年数・設備利用率・規模などの前提は電源ごとに異なり、同じ条件での比較ではありません。棒グラフとして並べたのは本記事による作図です。

内訳は、建設費11.2円、固定資産税1.0円、廃棄費用0.2円、運転維持費3.0円(計15.3円、政策経費なし)で、政策経費としてIRR相当政策経費1.1円、予算関連政策経費0.03円が加わって16.4円です。 次世代型太陽電池向けのFIT/FIPの新区分はまだ検討中でIRRが設定されていないため、便宜上、事業用太陽光のIRR水準である4%で計算したとしています事実。 同じ検証で、太陽光(事業用)は2023年に10.0円/kWh(政策経費なし)、2040年に6.6〜8.4円/kWh、太陽光(住宅用)は2023年に14.0円/kWh、2040年に7.6〜10.4円/kWhです事実。

4. 本稿の計算:公表された諸元から15円台を再現する

本稿の計算:諸元から LCOE を組み立てる

前提(公表諸元+本稿の単純化)本稿の計算

  • 建設費20.4万円/kW、運転維持費0.37万円/kW/年、廃棄費用0.6万円/kW(稼働年数の最後に支出)、設備利用率14%、稼働年数20年、割引率3%(いずれも公表値)
  • 発電量は毎年一定(劣化なし)、固定資産税は計算に含めない(本稿の単純化)

計算

  • 年間発電量:1 kW × 8,760 h × 0.14 = 1,226.4 kWh
  • 割引率3%・20年の資本回収係数 = 0.0672。建設費:204,000円 × 0.0672 ÷ 1,226.4 kWh = 約11.2円/kWh
  • 運転維持費:3,700円 ÷ 1,226.4 kWh = 約3.0円/kWh
  • 廃棄費用:6,000円を20年後に払う現在価値(約3,322円)を年あたりに直して = 約0.2円/kWh
  • 合計 = 約14.4円/kWh(固定資産税を含めない)

検証資料の内訳(建設費11.2・運転維持費3.0・廃棄費用0.2円)と一致し、公表値の固定資産税1.0円を足すと約15.4円で、15.3円とほぼ同じになります。 前提と限界:固定資産税の算定方法は検証資料の詳細を本稿では確認していないため、公表値をそのまま足しています。以下の感度計算は、この固定資産税を除いた14.4円を基準にします。

5. 本稿の計算:寿命・劣化・効率・割引率を動かすと

本稿の計算:1つずつ動かしたときの LCOE(固定資産税・政策経費を含めない)

前提:第4章の基準(14.4円/kWh)から、1つの諸元だけを変える本稿の計算

動かした諸元値LCOE(円/kWh)基準との差
稼働年数10年22.9+8.6(約1.6倍)
稼働年数15年17.2+2.8
稼働年数25年12.7−1.7
稼働年数30年11.6−2.8
劣化(毎年の出力低下)年0.5%15.0+0.6
劣化年1%15.6+1.3
劣化年2%17.0+2.6
設備利用率12%16.8+2.4
設備利用率10%20.1+5.7
割引率0%11.6−2.8
割引率5%16.5+2.1
割引率8%20.1+5.7
設備費6万円/kW9.8−4.6

設備費6万円/kWは、次世代型太陽電池戦略が「発電コスト10円/kWh水準の達成に必要な設備費(約6万円/kW)」と書いている値です事実。 本稿の計算では9.8円(固定資産税を除く)となり、戦略の「10円/kWh水準」と桁がそろいます。

前提と限界:劣化は毎年一定の割合で出力が下がると仮定し、割引率3%で割り引いた発電量に反映しました。設備利用率10%・12%は壁面などを想定した本稿の仮定で、公表値ではありません。 1つずつ動かした感度であり、実際には複数の諸元が同時に動きます。

どの諸元が LCOE を動かすか(本稿の計算、基準 14.4円/kWh) 棒は、各諸元を表の範囲で動かしたときの LCOE の幅。縦線が基準 10 14 18 22 26 円/kWh 稼働年数 30→10年 11.6〜22.9 設備利用率 14→10% 14.4〜20.1 割引率 0→8% 11.6〜20.1 劣化 0→年2% 14.4〜17.0 設備費 14.3→6万円/kW 9.8 ※ 基準の諸元は発電コスト検証[参考資料1]の公表値。固定資産税・政策経費は含めていません。横軸は 1円=25 px。 ※ 値はすべて本記事が算出したもので、公表値ではありません。設備利用率10%や劣化率は本稿の仮定です。 ※ 設備費6万円/kWは次世代型太陽電池戦略[参考資料2]が10円/kWh水準に必要とした値です。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。基準の諸元は資源エネルギー庁の発電コスト検証[参考資料1]、設備費6万円/kWは次世代型太陽電池戦略[参考資料2]の記載によります。LCOEの値はすべて本記事が算出したもので、公表値ではありません。1つの諸元だけを動かした感度です。

6. 素材技術者の視点①:寿命が10年なら、LCOEは約1.6倍

素材技術者の読みどころ:「長く持つ」は、効率数ポイントより重い

第5章の計算で、LCOEを最も大きく動かしたのは稼働年数でした。 稼働年数が20年から10年になると、LCOEは14.4円から22.9円(約1.6倍)になります本稿の計算。 国の検証がペロブスカイトの稼働年数を20年とし、事業用太陽光(25年・30年)より短く置いているのは、メーカー6社の見通しの中央値によるものです事実。

ここから読めるのは、LCOEの観点では「劣化しない材料」への改良が、効率の上積みと同じか、それ以上の価値を持つということです。 年1%の劣化は+1.3円、年2%なら+2.6円です。第7章で見るように、効率を15%から20%に上げたときの低下は約2.0円なので、年2%の劣化による増加は、効率5ポイント分の改善を上回ります本稿の計算。 封止材・バリアフィルム・電荷輸送層の耐久性を上げる材料開発は、そのままkWhあたりのコストの削減として評価できる、ということです(本記事による解説)。 耐久性の評価方法は、本シリーズ「屋外試験と耐久性評価」編、「封止とバリア層」編で扱いました。

7. 素材技術者の視点②:効率の価値は「面積あたりのコスト」を通じて効く

素材技術者の読みどころ:効率が上がると、同じ面積で多くのkWを売れる

設備費は「円/kW」で表されますが、材料費や製造費の多くは面積(m²)に比例して発生します。 次世代型太陽電池戦略は、需要推計の前提として屋根・壁面の発電容量を150 W/m²(=変換効率15%)と置いています事実。

本稿の計算:設備費14.3万円/kWを、150 W/m²のパネルの面積あたりに直すと 約21,450円/m²。 この面積あたりのコストが変わらないまま効率だけが上がると仮定すると、設備費と LCOE(固定資産税を除く)は次のようになります本稿の計算。

  • 効率15%:設備費14.3万円/kW → LCOE 約14.4円
  • 効率18%:設備費約11.9万円/kW → LCOE 約13.1円
  • 効率20%:設備費約10.7万円/kW → LCOE 約12.4円

前提と限界:工事費等(6.1万円/kW)と運転維持費は効率によらず一定としましたが、実際には面積に比例する工事費もあり、効率向上の効果はもう少し大きくなりえます。 効率15%を20%にしても下がるのは約2円で、稼働年数を20年から10年に縮めたときの増加(約8.6円)には遠く及びません。

効率の研究が無意味だという話ではなく、効率は「面積あたりのコスト」を通じて効き、寿命は「分母の年数」を通じて直接効くという、効き方の違いです。 素材の開発目標を決めるとき、効率を1ポイント上げる開発と、劣化率を年1%下げる開発を、同じ円/kWhの物差しで比べられるということです(本記事による解説)。

8. 素材技術者の視点③:工事費と重さ ― パネル以外のコスト

暗い卓上に、薄く軽そうな無地のシートと、厚く重そうな無地の板が並べて置かれている対比の概念イメージ
図4 概念図(AI生成イメージ)。「軽い・薄い」ことが施工の手間や設置場所を変える、という考え方を雰囲気として表現したものです。実在の製品・材料・寸法を示すものではありません。
素材技術者の読みどころ:建設費の3割は、パネルではない

次世代型太陽電池戦略は、FIT/FIPの定期報告データによると屋根設置太陽光の施工コストは資本費全体の約30%で、 パネルのコスト低減だけでなく施工コストの削減余地も検討する必要があるとしています。 また、IRENAのレポートを引いて、日本は他国と比べて資本費に占める施工コストの割合が高いことが示されている、とも書いています事実。 発電コスト検証の諸元でも、建設費20.4万円/kWのうち工事費等が6.1万円/kW(約30%)です事実。

同戦略は、フィルム型について製造・運搬・設置・施工・回収・交換・廃棄・リサイクルなどのライフサイクル全体での付加価値を捉えて競争力を目指すとしています事実。

軽くて曲がる材料は、架台・補強・重機・人手といった施工のコスト構造そのものを変えうる、ということです。 粘着・固定・防水の部材(接着剤、テープ、シーリング)は、発電層の材料と同じくらいLCOEに効く「隠れた主役」になりえます(本記事による解説)。 ただし、施工方法ごとのコスト差を示す公的な数値は、本稿では確認できていません。

9. 世界の太陽光との位置関係

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の「Renewable Power Generation Costs in 2024」は、2024年に新設された事業用太陽光の世界の加重平均LCOEを0.043米ドル/kWhとし、 2010年の0.417米ドル/kWhから90%低下、設置費用は5,283米ドル/kWから691米ドル/kWへ87%低下したとしています。 中国では0.033米ドル/kWh、インドでは約0.038米ドル/kWhでした事実。

同レポートは、再エネは資本集約的でLCOEは資金調達の条件に非常に敏感だとし、2024年のIRENAの加重平均資本コスト(WACC)の想定は欧州の3.8%からアフリカの12%まで幅があったと書いています事実。 第5章の計算でも、割引率を3%から8%にするとLCOEは14.4円から20.1円になりました本稿の計算。

IRENAの値は地上設置の大規模案件の実績、日本の検証値は屋根置き250 kWのモデルプラントの試算で、通貨・割引率・規模・設置形態が異なります。本記事では両者を換算して比べることはしません。 ペロブスカイトが大規模な地上設置でシリコンと価格競争するのか、シリコンが置けない場所に入るのか——その位置づけの違いが、目標とすべきLCOEを変えます(本記事による解説)。

10. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) 参考値である

発電コスト検証は、ペロブスカイトの試算を「現段階での試算値」であり参考値として扱うとしています。 メーカーのコスト見通しの設置形態や規模にはばらつきがあり、必ずしも250 kWの屋根設置を想定したものではない、とも注記しています事実。

(2) 稼働年数20年は見通しの中央値

20年はメーカー6社の見通しの中央値で、屋外での20年の実績ではありません未確定/将来。 屋外実証の最長報告は3年程度です(本シリーズ「屋外試験と耐久性評価」編)。

(3) 本稿で確認できなかったこと

NREL の Annual Technology Baseline(ATB)のペロブスカイト関連の公表値は、本稿の作業環境からNRELのサイトにアクセスできなかったため参照していません。 固定資産税の算定式、壁面・窓設置での設備利用率の公的な値、施工方法別のコストも、本稿の調査範囲では確認していません。

この記事のまとめ
  • 国の目標は、2025年20円、2030年14円、2040年に10〜14円/kWh以下(自立化)です未確定/将来
  • 発電コスト検証の2040年参考値は15.3円/kWh(政策経費なし)・16.4円/kWh(あり)。前提は建設費20.4万円/kW、設備利用率14%、稼働年数20年、割引率3%です事実
  • 公表諸元から計算すると、固定資産税を除いて約14.4円/kWhで、公表の内訳と一致します本稿の計算
  • 稼働年数が10年なら約22.9円(約1.6倍)。効率15→20%の改善(約2円)より、寿命の影響が大きい本稿の計算
  • 建設費の約3割は工事費等。軽さ・施工性はLCOEに直接効きます事実
  • 世界の事業用太陽光の加重平均は0.043米ドル/kWh(2024年)。前提が違うため直接比較はしません事実

11. 用語集

LCOE(均等化発電原価)
生涯の総費用の現在価値 ÷ 生涯発電量の現在価値。円/kWhで表す。
割引率
将来の費用や発電量を現在の価値に換算する率。発電コスト検証では実質3%。
資本回収係数
初期投資を、割引率と年数から毎年の均等額に直す係数。3%・20年で約0.0672。
設備利用率
1年間の実際の発電量を、定格出力で1年動き続けた場合の発電量で割った比。
稼働年数
発電所を運転する想定年数。ペロブスカイトの検証では20年。
建設費
設備費(パネル費用)と工事費等の合計。円/kWで表す。
運転維持費
人件費・修繕費など、運転中に毎年かかる費用。
政策経費
FIT/FIP等の支援や予算に関わる費用。国際的な手法では算入しないのが一般的。
IRR
内部収益率。FIT/FIPの価格設定で想定される事業の収益率。
モデルプラント
コスト試算のために想定する標準的な発電所。ペロブスカイトは250 kW・屋根置き。
WACC
加重平均資本コスト。借入と出資の調達コストの加重平均。
自立化
政策支援なしで導入が進む発電コストの水準に達すること。

12. 参考資料(一次情報)

  1. 総合資源エネルギー調査会 発電コスト検証ワーキンググループ(資源エネルギー庁)「発電コスト検証に関するとりまとめ」令和7年2月6日(PDF) https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_wg_20250206_01.pdf
  2. 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会(経済産業省)「次世代型太陽電池戦略」令和6年11月(PDF) https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/20241128_1.pdf
  3. International Renewable Energy Agency(IRENA)「Renewable Power Generation Costs in 2024」Executive summary(2025年、PDF) https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2025/Jul/IRENA_TEC_RPGC_in_2024_Summary_2025.pdf

13. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
モデルプラントの総費用を割引率(実質)で現在価値に換算して計算すること、資本費(建設費・固定資産税・廃棄費用)と運転維持費の区分、割引率を一律3%としたこと。ペロブスカイトを技術開発途上で予見性が高くないとして参考値で示したこと。2040年の参考値16.4円(政策経費あり)・15.3円(なし)と内訳(建設費11.2・固定資産税1.0・廃棄0.2・運転維持3.0・IRR相当政策経費1.1・予算関連0.03円)。IRRを便宜上4%としたこと。諸元(建設費20.4万円/kW=設備費14.3+工事費等6.1、廃棄0.6万円/kW、運転維持0.37万円/kW/年、設備利用率14%、稼働年数20年=メーカー6社の中央値、250 kW屋根置き、各社年約1 GW)とその根拠、壁や窓で設備利用率が下がること、規模・設置形態・封止材で変わりうること、メーカー見通しの想定にばらつきがあり現段階の試算値であること。太陽光(事業用)2023年10.0円・2040年6.6〜8.4円、住宅用2023年14.0円・2040年7.6〜10.4円(政策経費なし)、事業用・住宅用の稼働年数25年(2040年表)出典1 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/pdf/cost_wg_20250206_01.pdf事実
2025年20円/kWh・2030年14円/kWhの技術確立、2030年を待たずGW級、2040年に自立化が可能な10円〜14円/kWh以下(10円は大幅なコスト低減の場合)。GI基金プロジェクト648億円。10円/kWh水準に必要な設備費約6万円/kW。発電容量150 W/m²(効率15%)の前提。屋根設置の施工コストが資本費の約30%、施工コスト削減の検討、IRENAを引いた日本の施工コスト比率の高さ。フィルム型のライフサイクル全体の付加価値出典2 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/20241128_1.pdf事実
2024年の事業用太陽光の世界加重平均LCOE 0.043米ドル/kWh、2010年0.417からの90%低下、設置費用5,283→691米ドル/kW(87%低下)、中国0.033・インド約0.038。LCOEが資金調達条件に敏感で、WACC想定が欧州3.8%〜アフリカ12%出典3 https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2025/Jul/IRENA_TEC_RPGC_in_2024_Summary_2025.pdf事実
2025年20円・2030年14円・2040年10〜14円/kWh以下の達成、稼働年数20年の実績目標・見通しであり、実績は確認されていない(解説)未確定/将来
年間発電量1,226.4 kWh、資本回収係数0.0672、建設費約11.2・運転維持約3.0・廃棄約0.2で約14.4円、固定資産税1.0円を足して約15.4円。稼働年数・劣化・設備利用率・割引率・設備費の感度(10年22.9、15年17.2、25年12.7、30年11.6、劣化0.5%で15.0・1%で15.6・2%で17.0、設備利用率12%で16.8・10%で20.1、割引率0%で11.6・5%で16.5・8%で20.1、設備費6万円/kWで9.8)。面積あたり約21,450円/m²、効率18%・20%で設備費約11.9・約10.7万円/kW、LCOE約13.1・約12.4円本稿の計算。劣化なし(基準)、固定資産税・政策経費を含めない、廃棄費用を最終年に支出、1諸元ずつ変化、設備利用率10・12%、面積あたりコスト一定、工事費等と運転維持費が効率によらず一定、はいずれも本稿の前提本稿の計算
NREL ATBの公表値、固定資産税の算定式、壁面・窓設置の設備利用率の公的な値、施工方法別コスト本稿の作業環境からアクセスできなかった、または調査範囲で確認していないため記載していない(解説)解説
材料が効くところの整理。寿命が効率より重いという読み取り、効率と寿命の効き方の違い、同じ円/kWhで開発目標を比べられるという整理。軽さ・施工性と固定部材が「隠れた主役」になりうるという読み取り。位置づけの違いが目標LCOEを変えるという読み取り公表内容と本稿の計算にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
図1・図2・図3が説明のための作図であること(図2の値は公表値、図3の値は本稿の計算)。ヒーロー画像と図4がAI生成イメージであること本記事による注記(解説)解説

最終更新:2026年9月25日/出典は公的機関の一次情報(資源エネルギー庁の発電コスト検証、経済産業省の次世代型太陽電池戦略、IRENAの報告書)に限定し、調査会社の推計は使っていません。 本稿の計算はすべて前提を明記しており、公表値ではありません。 NREL ATBの値、固定資産税の算定式、壁面・窓設置の設備利用率の公的な値は、本稿では確認できなかったため記載していません。 発電コスト検証のペロブスカイトの値は、国が「参考値」として示したものです。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図3はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実在の製品・設備を示すものではありません。