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International Electrotechnical Commission|ペロブスカイト太陽電池 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / ペロブスカイト太陽電池

International Electrotechnical Commission
― ペロブスカイト太陽電池の「試験のものさし」を国際的に決める場

IEC(国際電気標準会議)は、電気・電子技術の国際規格をつくる非営利の会員制団体です。 太陽電池の規格は技術委員会TC 82が担当し、モジュールの型式認証の試験(IEC 61215)や、セル・モジュールの測定方法(IEC 60904)を定めています。 ところがペロブスカイト太陽電池向けの試験・測定の規格は、2026年9月時点でまだ審議中です。 本稿では、IECがペロブスカイト太陽電池にどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:IECの公式サイト(組織概要、国内委員会、TC 82のダッシュボード:構成・加盟国・作業計画)、IECウェブストアの規格・技術報告書のページ、経済産業省とDOEの公表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるIEC
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. ペロブスカイト太陽電池で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている国・組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるIEC

正式名称International Electrotechnical Commission国際電気標準会議。略称 IEC。1906年設立
国・地域国際機関(特定の国に属さない)会員は各国の国内委員会。日本はJISC(日本産業標準調査会)
機関の種類会員制の国際標準化団体個人や企業は会員になれず、国内委員会を通じて参加
加盟数92の国内委員会正会員64・準会員28(1国1委員会)
人数規模専門家 約3万人約170か国が関わる。全分野の合計
太陽電池の担当TC 82(幹事国:米国)参加国48・オブザーバー9。作業計画は90件
ペロブスカイト太陽電池への関与の形試験・測定方法の国際規格ペロブスカイト専用の規格は3件が審議中
影響が及ぶ範囲規格を採用する国と企業守らせる権限はない。WTO加盟国は国際規格を国内基準の基礎にすると約束している
まず押さえるべき1点

IECは「どう試験し、どう測るか」を国際的に決める場で、資金も規制権限も持ちません。 太陽電池モジュールの型式認証の規格IEC 61215には、結晶シリコン・CdTe・アモルファスシリコン・CIGSの個別要求がありますが、ペロブスカイトを含むモジュールの個別要求(IEC 61215-1-6)は2026年4月に審議が始まった段階で、発行予定は2028年6月です 事実。 日本の経済産業省も米国DOEも、ペロブスカイト太陽電池の評価方法をこのIECの場に持ち込もうとしています。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

ペロブスカイト太陽電池の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では太陽電池を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

ペロブスカイト太陽電池を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では太陽電池を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 目標・補助金・税制 試験方法・効率の測定 展示会・業界団体 NEDO/DOE 経済産業省/DOE IEC/NREL Intersolar Europe 何を研究させるか 何を国内で作らせるか どう測り、どう比べるか 誰が誰に会うか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の領域 届く範囲=加盟国 届く範囲=参加者 IECは「標準を決める」型。ペロブスカイト太陽電池の試験・測定の国際規格をTC 82で審議している 規格を守らせる権限はなく、採用するかどうかは各国の制度と各企業の判断による
図1 ペロブスカイト太陽電池に関わる機関の4つの型と、IECの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関から例示しています 本稿の計算。表中のNRELは現在の名称がNational Laboratory of the Rockies(NLR)で、効率の測定・認定の拠点として同じ「標準」の型に置いています。

3. ペロブスカイト太陽電池で何をしているか

TC 82の作業計画(90件)のうち、題名にペロブスカイトや準安定デバイスを含むものは次の3件です。いずれも発行前で、発行時期はIECの予定日です 事実。

規格・文書担当状態(2026年9月時点)中身
IEC 61215-1-6 第1版WG 2(モジュール)2026年4月に委員会原案(CD)段階へ。CD回付は2026年11月、発行予定は2028年6月地上用モジュールの設計適格性と型式認証のうち、金属ハライドペロブスカイトを含むモジュールの試験の個別要求
IEC TS 60904-1-4 第1版WG 2(モジュール)2026年8月に技術仕様書原案(DTS)を受付。DTS回付は2026年11月、発行予定は2027年2月準安定な太陽電池(測定中に特性が変わるもの)の電流-電圧測定の指針
IEC TS 63202-9 第1版WG 8(セル)2026年1月にCD段階へ。CD回付は2026年7月、発行予定は2028年7月研究段階のペロブスカイトセルの測定仕様

発行済みの文書では、IEC TR 63228:2019(2019年7月8日発行、35ページ)が、有機・色素増感・ペロブスカイトの太陽電池の測定手順をまとめた技術報告書です。 シリコンを前提に作られたIEC 60904の測定規格では、性能が時間とともに変わるなどの理由で正確に測れないことがある、と課題を整理しています 事実。 また、IECの市場戦略評議会(MSB)は2025年1月28日に、ペロブスカイトを中心に新興の太陽電池材料を扱うトレンドレポート「Emerging PV」を無料で公開しました。

素材技術者の視点:IEC 61215に合格しても「寿命の保証」ではない

IEC 61215-1:2021は、屋外で長期間使うモジュールの設計適格性の要求を定めた規格ですが、試験結果はモジュール寿命の定量的な予測とはみなされないと明記しています 事実。 米国DOEの2023年のタンデム公募も、IEC 61215の試験項目(MQT 10・11・13・21)に加えて、ISOS-L-2という光照射下の試験を組み合わせて条件にしました。 封止材やバリアフィルムを供給する立場では、既存のIEC 61215の試験に通ることと、IEC TR 63228が課題に挙げる「時間とともに性能が変わる」性質への対策の両方を示す必要がある、というのが現状です。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点IECが持っているもの持っていないもの
権限国内委員会の投票を経て、国際規格・技術仕様書・技術報告書を発行する権限規格を守らせる権限、製品を認可・禁止する権限、研究資金
地域国際。92の国内委員会、約170か国が関わる。TC 82には日本・中国・米国・ドイツ・韓国・インドなど48か国が参加国として加わる加盟していない国への拘束力。規格を国内基準にするかどうかは各国の判断
貿易との関係WTOのTBT協定のもとで、加盟国は国際規格を国内規格・強制規格・試験認証の基礎に使うと約束している各国の強制規格そのものを決める権限
ペロブスカイトの範囲ペロブスカイトを含むモジュールの試験、準安定デバイスの測定、研究段階のセルの測定を審議中2026年9月時点で、ペロブスカイト専用の発行済みの国際規格はない(本稿で確認した範囲)
日付の読み方の注意

第3章の発行時期は、IECのダッシュボードに載った予定日です。規格は原案(CD)、投票用原案、最終原案と段階を踏み、各段階で国内委員会の意見や投票を受けるため、予定より遅れることがあります 未確定/将来。

5. 関わっている国・組織

ペロブスカイト太陽電池の国際規格はどうつくられるか 各国の国内委員会が専門家を送り、TC 82の作業部会で原案をつくって投票する 各国の国内委員会 日本:JISC(経済産業省内) TC 82の参加国48 オブザーバー9 IEC TC 82 太陽光発電システム 幹事国:米国 作業計画90件 規格を使う側 各国の国内規格・試験認証 DOEの公募条件 (IEC 61215の試験項目) WG 2(モジュール) IEC 61215-1-6 ペロブスカイトを含むモジュールの試験 2026年4月開始・発行予定2028年6月 IEC TS 60904-1-4 準安定デバイスの電流-電圧測定 DTS段階・発行予定2027年2月 WG 8(セル)ほか IEC TS 63202-9 研究段階のペロブスカイトセルの測定 2026年1月開始・発行予定2028年7月 発行済み:IEC TR 63228:2019 有機・色素増感・ペロブスカイトの 測定手順をまとめた技術報告書
図2 IEC TC 82でのペロブスカイト太陽電池の規格づくりの流れ。出典:IECの国内委員会ページ、TC 82ダッシュボード(構成・作業計画)、IECウェブストア、DOEの公募説明資料。発行予定日はIECの予定で、確定ではありません。

IECの規格に関わる各国の動き(一次資料の記載)

国・組織記載内容本シリーズとの関係
日本(JISC・経済産業省)IECの日本の国内委員会はJISCで、連絡先は経済産業省内。官民協議会の資料(2026年5月)は、GI基金で開発した性能評価法を新規の国際規格として提案し、2026年度内の発行に向けて活動中としている経済産業省・NEDOの機関解説
米国(DOE)2023年のタンデム公募で、IEC 61215の試験項目の合格を2026年末までの目標に含めた。選定先にFirst Solar・Swift Solar・Tandem PVDOEの機関解説、各社の企業解説(作成中)
TC 82の運営幹事国は米国。日本・中国・米国・ドイツ・韓国などが参加国―

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
ペロブスカイトの型式認証の個別要求がそろうのは2028年ごろで、それまでは既存のIEC 61215と研究者向けのISOS試験の組み合わせで評価する状態が続くIEC 61215-1-6の発行予定は2028年6月。DOEの公募はIEC 61215の試験項目とISOS-L-2を組み合わせた推測
官民協議会の資料にある「2026年度内の発行」は、発行予定が2027年2月のIEC TS 60904-1-4を指している可能性がある官民協議会の資料は2026年度内の発行を目指すとし、TC 82の作業計画でTS 60904-1-4の発行予定は2027年2月(日本の2026年度内)推測
IEC 61215-1-6の題名は「ペロブスカイトを含む」モジュールで、単接合だけでなくタンデムにも適用される書き方になっているTC 82作業計画の題名(metal halide perovskite-containing PV modules)。中身は審議中推測

7. 用語集

TC 82
IECの技術委員会で、太陽光発電システム全体(セルから電力系統との接点まで)の規格を担当する。
IEC 61215
地上用太陽電池モジュールの設計適格性と型式認証の規格。第1部の本体と、材料別の個別要求(1-1〜1-4)からなる。
IEC 60904
太陽電池デバイスの測定方法の規格群。電流-電圧特性や分光感度の測り方を定める。
準安定(メタステーブル)
光や電圧をかけている間に特性がゆっくり変わる性質。ペロブスカイトでは測定値が条件によってぶれる原因になる。
CD/DTS
CDは委員会原案、DTSは技術仕様書の投票用原案。規格は段階ごとに国内委員会の意見・投票を受ける。

8. 出典

  1. IEC Who we are(1906年設立、電気・電子技術の国際規格の作成・発行)。 https://www.iec.ch/who-we-are
  2. IEC About us(約170か国、専門家約3万人)。 https://www.iec.ch/about-us
  3. IEC National Committees(正会員64・準会員28・計92、1国1委員会、個人・企業は会員になれない)。 https://www.iec.ch/national-committees
  4. IEC Members > Japan(日本の国内委員会はJapanese Industrial Standards Committee、連絡先は経済産業省内)。 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:16:::::FSP_ORG_ID:1004
  5. IEC IEC and global trade(WTOのTBT協定と国際規格)。 https://www.iec.ch/what-we-do/iec-and-global-trade
  6. IEC TC 82 Dashboard > Scope(TC 82の担当範囲、幹事国)。 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:7:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:1276,25
  7. IEC TC 82 Dashboard > Structure(作業部会、加盟国の一覧、参加国48・オブザーバー9、幹事国:米国)。 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:29:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:1276,25
  8. IEC TC 82 Dashboard > Projects / Publications(作業計画90件。IEC 61215-1-6、IEC TS 60904-1-4、IEC TS 63202-9、IEC 61215-1-1〜1-4の段階・担当WG・発行予定日。2026年9月閲覧)。 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:23:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:1276,25
  9. IEC Webstore IEC 61215-1:2021(地上用モジュールの設計適格性。試験結果は寿命の定量的な予測とはみなされない)。 https://webstore.iec.ch/en/publication/61345
  10. IEC Webstore IEC TR 63228:2019(有機・色素増感・ペロブスカイトの測定手順、2019年7月8日発行、35ページ)。 https://webstore.iec.ch/en/publication/64040
  11. IEC Webstore IEC Trend Report Emerging PV:2025(2025年1月28日、MSBの作業部会が作成、無料公開、ペロブスカイトが中心)。 https://webstore.iec.ch/en/publication/105015
  12. 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会 事務局 「次世代型太陽電池に関わる動向について」(2026年5月20日)。性能評価法の国際規格提案と2026年度内の発行に向けた活動。 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/010_01_00.pdf
  13. U.S. Department of Energy Thin-Film PV FOA 3058 説明会資料(2023年9月)。IEC 61215のMQT 10・11・13・21とISOS-L-2を含む2026年末までの性能目標。 https://www.energy.gov/sites/default/files/2023-09/SETO%20Thin-Film%20PV%20FOA%203058%20-%20Webinar.pdf
  14. U.S. Department of Energy Advancing U.S. Thin-Film Solar Photovoltaics Funding Program(ペロブスカイト・タンデムの選定先)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/advancing-us-thin-film-solar-photovoltaics-funding-program

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
1906年設立、電気・電子技術の国際規格をつくる事実出典1 https://www.iec.ch/who-we-are
約170か国、専門家約3万人事実出典2 https://www.iec.ch/about-us
国内委員会92(正会員64・準会員28)、1国1委員会、個人・企業は会員になれない事実出典3 https://www.iec.ch/national-committees
日本の国内委員会はJISCで、連絡先は経済産業省内事実出典4 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:16:::::FSP_ORG_ID:1004
WTOのTBT協定のもとで加盟国が国際規格を基礎に使うと約束していること事実出典5 https://www.iec.ch/what-we-do/iec-and-global-trade
TC 82の担当範囲、幹事国が米国事実出典6 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:7:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:1276,25
TC 82の参加国48・オブザーバー9と国名、WG 2・WG 8事実出典7 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:29:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:1276,25
作業計画90件、ペロブスカイト関連3件の題名・段階・担当WG・発行予定日、IEC 61215-1-1〜1-4の材料事実出典8 https://www.iec.ch/dyn/www/f?p=103:23:0::::FSP_ORG_ID,FSP_LANG_ID:1276,25
IEC 61215-1:2021の対象と、試験結果が寿命の予測ではないこと事実出典9 https://webstore.iec.ch/en/publication/61345
IEC TR 63228:2019の発行日・ページ数・内容事実出典10 https://webstore.iec.ch/en/publication/64040
トレンドレポートEmerging PVの公開日・作成者・内容事実出典11 https://webstore.iec.ch/en/publication/105015
日本の性能評価法の国際規格提案と2026年度内の発行に向けた活動事実出典12 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/010_01_00.pdf
DOEの公募がIEC 61215の試験項目とISOS-L-2を2026年末までの目標に含めたこと事実出典13 https://www.energy.gov/sites/default/files/2023-09/SETO%20Thin-Film%20PV%20FOA%203058%20-%20Webinar.pdf
DOEの公募の選定先(First Solar・Swift Solar・Tandem PV)事実出典14 https://www.energy.gov/cmei/systems/advancing-us-thin-film-solar-photovoltaics-funding-program
機関の4つの型の区分本稿の計算本稿による整理
ペロブスカイト専用の発行済み国際規格がないこと本稿の計算出典8・10の作業計画とウェブストア検索から本稿が判断
各規格の実際の発行時期未確定/将来出典8は予定日のみ。本稿では推計しない
第6章の見通し3項目推測出典8・12・13の記載からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の内容はIECの公式サイト(2026年9月閲覧)と、経済産業省・DOEの公表資料に基づきます。発行予定日はIECの予定で、確定ではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。