COMPANY PROFILE / ペロブスカイト太陽電池
Oxford PV
― 世界で初めてタンデムを出荷した先駆者が、特許ライセンスで稼ぎ始めている
Oxford PVは、オックスフォード大学から2010年に生まれたペロブスカイト専業の英国企業です。 シリコン太陽電池の上にペロブスカイトの層を重ねるタンデム型で、研究用セルの効率記録を何度も塗り替え、 2024年9月には商用のタンデムモジュールを初めて米国の顧客へ出荷したと発表しました。 一方で、英国の登記所に提出された2024年12月期の決算書では、売上は約21万ポンド、最終損失は約1,873万ポンドで、 監査人は「継続企業の前提に重要な不確実性がある」と明記しています。 そして2025年以降に目立つのは、Trinasolar(中国)とFirst Solar(米国)への特許ライセンスです。 本稿では、この会社が何を作り、何で稼ごうとし、どこに弱点があるのかを、登記書類と公式発表だけで整理します。
- 30秒でわかるOxford PVと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(売上はまだ小さい。決算書で見る)
- ペロブスカイトにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか
- ペロブスカイト分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるOxford PVと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置
Limited英国の登記番号 07127476。2010年1月16日設立
/独ブランデンブルク研究開発は英国、セルの製造はドイツの子会社
(シリコンとのタンデム)ペロブスカイトだけを事業にしている
First Solar(米国)2025年4月と2026年2月に発表
ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業は、大きく既存の太陽電池大手・ペロブスカイト専業スタートアップ・素材や電機などの異業種の3種類に分かれます。 Oxford PVはこのうち専業スタートアップで、製品の形はシリコンとのタンデムです 事実。 ドイツの工場でシリコンのヘテロ接合(HJT)セルの上にペロブスカイトを薄膜として直接塗り重ね、タンデムセルにしています。 ただし同社の収益の柱は、製品の販売だけではありません。 2024年12月期の決算書は、売上が「主にライセンス活動を通じて」立ち始めたと書いており、 2025年4月にはTrinasolarに中国での独占ライセンスを、2026年2月にはFirst Solarに米国での非独占ライセンスを与えています。 つまりOxford PVは、自分で作って売る会社であると同時に、大手に特許を使わせて稼ぐ会社になりつつあります。
2. ロゴと社名の表記について

Oxford PVのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
公式サイトから取得した画像を img/oxford_pv_logo.svg として設置しています。
表記の注意:登記上の正式名称は Oxford Photovoltaics Limited で、Oxford PV はその通称です。 ドイツで製造を担うのは100%子会社の Oxford PV Germany GmbH(ブランデンブルク・アン・デア・ハーフェル)、 米国には Oxford PV Americas Inc(ボストン)があります。 英国には「Oxford PV Limited」という名前の子会社も別にあるため、登記書類を読むときは親会社(Photovoltaics)と区別してください。 本稿では通称の Oxford PV で統一します。
公式サイト:https://www.oxfordpv.com/3. ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか
同じ「専業スタートアップ」でも、Oxford PVには他社にない特徴が2つあります。 1つは研究用セルの世界記録の実績で、米国立研究所NLR(旧NREL)が管理する効率データ表には、 ペロブスカイト/シリコンの2端子タンデムとしてOxford PVが名を連ねる記録が2018〜2020年に4件載っています 事実。 もう1つは特許の厚みで、会社は「400件超の登録特許」「中核特許45件超」を持つと公表しています(件数は会社発表)。 この2つが、次章以降に見る「ライセンスで稼ぐ」という選択を可能にしています。
4. 会社の規模(売上はまだ小さい。決算書で見る)
Oxford PVは非上場ですが、英国の会社法にもとづき、監査済みの連結財務諸表を登記所(Companies House)に提出しています。 最新は2024年12月期で、2025年10月27日に登録されました 事実。
| 指標(ポンド) | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上 | 0 | 210,998 |
| 売上原価 | 0 | 1,645,385 |
| 一般管理費 | 21,375,754 | 23,711,351 |
| デリバティブ評価益(未実現) | 6,701,113 | 8,958,330 |
| 営業損失 | 12,977,767 | 14,495,760 |
| 最終損失 | 10,768,976 | 18,731,740 |
| 研究開発支出(うち資産計上) | 7,070,316(3,680,965) | 8,221,124(4,511,306) |
| 現金及び現金同等物(期末) | 23,698,004 | 4,397,508 |
| 平均従業員数(うち技術職) | 140人(105人) | 163人(120人) |
| 2024年12月期の売上の地域別内訳 | ポンド | 構成比 |
|---|---|---|
| 米国 | 160,865 | 約76% 本稿の計算 |
| アジア | 34,779 | 約16% 本稿の計算 |
| 欧州 | 15,354 | 約7% 本稿の計算 |
営業損失が「約1,450万ポンド」にとどまって見えるのは、転換社債に組み込まれたデリバティブの評価益(未実現)約896万ポンドが営業利益側に計上されているからです 事実。 これは現金の出入りを伴わない評価上の利益です。 また期末の現金は前期の約2,370万ポンドから約440万ポンドへ減っており、 監査人(Ernst & Young LLP)は、追加の資金調達ができる保証はないとして 「継続企業の前提に重大な疑義を生じさせうる重要な不確実性」に注意を促しています 事実。 一方、決算書は売上が「主にライセンス活動を通じて」始まったと書いていますが、 製品販売とライセンスの内訳は開示していません 未確定/将来。
5. ペロブスカイトにかけているリソース
Oxford PVはペロブスカイトだけを事業にしているので、会社の支出がそのままペロブスカイトへの投入額になります。 複数事業を持つ大企業と比べるときは、ここが決定的な違いです。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(専任組織・人員) | 平均従業員163人(2024年12月期)。うち技術職120人、経営3人、管理・支援40人。親会社(英国)単体は平均66人で、差の97人は子会社(ドイツの製造子会社など)に在籍(差は本稿の計算)。全社がペロブスカイト専任 | 事実 |
| 金(研究開発費) | 研究開発支出£8,221,124(2024年12月期)、うち£4,511,306を開発資産として計上。前期は£7,070,316 | 事実 |
| 金(設備) | 有形固定資産£35,156,652(2024年12月末)。ブランデンブルクの工場は2016年に取得(会社の年表) | 事実 |
| 資金の出どころ | 2022年7月に額面5,000万ポンドの転換社債を発行(無利息、満期は2026年6月の見込みと決算書に記載)。2025年12月には、Oxford Investment Consultants LLPとの条件書にもとづき最大3,000万ポンドの無担保転換社債を発行する権限を株主が承認 | 事実 |
| 大口株主 | 2026年1月16日時点の確認書(CS01)に、Trina Solar Energy Development Pte. Ltd(A普通株79,365株)、Meyer Burger Technology AG(同69,132株)、Goldwind Science & Technology (HK)(同48,393株)、Legal and General Capital Investments、Equinor Energy Ventures Fund、オックスフォード大学などが記載 | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁 | Oxford PVから他社への出資・買収・合弁は、決算書・公式リリースに記載がない | 確認できず |
| 大学・研究機関 | オックスフォード大学のスナイス(Henry Snaith)教授の研究室から生まれた会社で、教授は取締役。決算書は「主要な大学・第三者との関係を維持」と記載。Fraunhofer ISEとは効率測定(2024年)とモジュール共同開発(2026年)で協業 | 事実 |
| 公的資金 | 政府補助金収入£1,591,055(2024年12月期、前期£1,471,595)。ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWE)助成の研究プロジェクト「HoTSun」、英国の先進推進センター(APC)が支援する車載太陽電池プロジェクト「SUITE」に参加 | 事実 |
登記所の株式割当届(SH01)によると、2025年12月29日にA普通株79,365株が、1株あたり630ポンドの払込で割り当てられました 事実。 掛け算すると約5,000万ポンド(£49,999,950)です 本稿の計算。 そして2026年1月16日時点の確認書には、2025年1月時点の確認書には無かった Trina Solar Energy Development Pte. Ltd がちょうど79,365株で記載されています 事実。 A普通株の総数283,247株に対する比率は約28%です 本稿の計算。
株数が一致することから、この割当の引受先はTrinaの関連会社だと読むのが自然ですが、 SH01には引受先の名前が書かれておらず、Oxford PVもTrinaも出資を公式に発表していません。 本稿ではこれを推測として扱います。 出資がライセンス契約とどう関係しているのかも、一次情報からは分かりません 未確定/将来。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2010年1月 | Oxford Photovoltaics Limited 設立。オックスフォード大学スナイス教授の研究室からのスピンアウト | 大学発の専業スタートアップとして出発 |
| 2014年 | 最初のペロブスカイト/シリコン タンデムセルを開発(会社の年表) | タンデム路線の開始 |
| 2016年 | ドイツ・ブランデンブルクの製造拠点を取得(会社の年表) | 自前の製造拠点を持つ |
| 2017年 | 商用サイズのタンデムセルを初めて製造(会社の年表) | 研究用の小面積から実用サイズへ |
| 2018年6月・12月 | 2端子タンデムセルで27.3%(1.09cm²、Fraunhofer ISE測定)、28.0%(1.03cm²、NREL測定)。NLRの効率データ表に掲載 | 第三者機関が確認した研究用セルの記録 |
| 2020年12月 | 2端子タンデムセルで29.5%(開口面積1.121cm²、NREL測定)。NLRの効率データ表に掲載 | 同社名義で表に載る最後の研究用セル記録 |
| 2022年 | 商用サイズのセルで26.8%(会社の年表。認証機関の記載なし)。7月に額面5,000万ポンドの転換社債を発行 | 量産に向けた資金を社債で確保 |
| 2023年 | 商用サイズのセルで28.6%(会社の年表。認証機関の記載なし) | 会社発表の数字 |
| 2024年1月 | 産業用サイズのモジュールで25%(421W、1.68m²)。Fraunhofer ISEのモジュール試作設備で作り、同CalLabで測定 | セルだけでなくモジュールでも高効率を示した |
| 2024年6月 | 60セルの住宅用サイズ(指定面積約1.6m²、25kg未満)で26.9%。Fraunhofer CalLabが独立に測定・認証したと会社が発表 | 同社のモジュール記録 |
| 2024年9月 | 72セルのタンデムモジュールを米国の顧客(電力会社向け用途)へ初出荷。市販品のモジュール効率は24.5% | 会社は「タンデムの世界初の商用出荷」と表現 |
| 2024年 | 第1世代モジュールがIEC 61730(安全性)の認証を取得(決算書の記載) | 米国の最初の顧客に必要な条件 |
| 2025年4月 | Trinasolarと特許ライセンス契約。中国でのペロブスカイト系製品の製造・販売について独占、再許諾権つき | 初のライセンス契約(契約発表時は「画期的(landmark)」、2026年1月の発表[出典12]では「業界で初めてライセンス契約を結んだ」と表現) |
| 2025年12月 | 最大3,000万ポンドの転換社債発行を株主が承認。12月29日にA普通株79,365株を1株630ポンドで割当 | 資本の組み替えが進んだ |
| 2026年2月 | First Solarと特許ライセンス契約。米国での非独占ライセンスで、結晶シリコンを使う製品は対象外 | 薄膜系の大手にも特許を供与 |
| 2026年4月 | 英APC支援の車載太陽電池プロジェクト「SUITE」に参加(日産の英国技術センターなどと) | 自動車用途への展開 |
| 2026年6月 | Fraunhofer ISEと、同所の「マトリックス・シングル」接続技術を使ったタンデムモジュールを発表。屋根用491W(1.92m²)と両面受光の546W(2.13m²)で、いずれもモジュール全面積で25.6% | 接続方式を変えたモジュール。効率は共同発表の数字 |
上の表には性格の違う数字が混ざっています。 (1) 研究用の小さなセル(1cm²前後)の記録は、NLRの効率データ表に測定機関つきで載っているもの(27.3%・28.0%・29.5%)です。 (2) 商用サイズのセル(26.8%・28.6%)は会社の年表にある数字で、測定機関は書かれていません。 (3) モジュール(25%・26.9%・25.6%)は会社のリリースの数字で、26.9%は「Fraunhofer CalLabが独立に測定・認証」と会社が説明しています。 なおNLRのチャンピオンモジュール効率チャートにもペロブスカイト/シリコンの系列にOxford PVの点がありますが、 その後の点はTrinaとLONGiで、現在の最高値はLONGiです 事実。 「世界記録」という言葉は、どの区分の、いつ時点の記録かを確かめてから読む必要があります。 本シリーズの技術解説「変換効率と評価指標」も参考にしてください。
7. 今後の計画
2030年 30%公式サイトのロードマップ。2035年には35%
・住宅の試験導入ブランデンブルク工場の生産の振り向け先(2024年9月の発表)
会社は2024年9月の発表で、今後数年はブランデンブルク工場の生産を追加の電力会社顧客・特殊用途・住宅向けの試験導入に振り向けつつ、 将来の大量生産拠点でギガワット規模へ拡大すると述べています 事実。 2026年2月のFirst Solarとの発表でも、Oxford PVは「大量生産への拡大を長期的な成長戦略の一部として追求している」と説明されています。
次はいずれも一次情報に記載がありません 未確定/将来。
大量生産拠点の場所・投資額・稼働時期/ブランデンブルク工場の正確な生産能力(特殊用途向けページに「専用能力20MW」とあるのみ)/ 最初の米国顧客の社名と出荷量/ライセンス契約の金額・ロイヤルティ率・期間/ 2022年発行の転換社債(満期見込み2026年6月)のその後の扱い/2025年12月に承認された転換社債の実際の発行額/ 2025年12月期の決算(2026年12月末が提出期限で、本稿執筆時点では未提出)。 「Oxford PVが○GWの工場を建設」といった数字は報道ベースのものが多く、本稿では採用しません。
8. この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 収益の柱を製品販売から特許ライセンスへ広げている | 決算書が「売上は主にライセンス活動を通じて始まった」と記載。2025年4月にTrina、2026年2月にFirst Solarと契約。公式サイトは「既存の大手製造業のライセンシー」に加わるよう呼びかけている | 推測 |
| ライセンスは地域と技術で切り分けて複数社に売る設計 | Trinaは中国で独占、First Solarは米国で非独占かつ結晶シリコンを除外。両者の範囲が重ならない | 推測 |
| 自社製造は小規模にとどめ、特殊用途で差をつける | 大量生産拠点の具体的な計画は示されていない一方、衛星・高高度無人機(HAPS)・電気自動車向けの製品群を用意し、SUITEに参加している | 推測 |
| Trinaはライセンス先であると同時に大株主になった可能性が高い | 2025年12月29日の割当株数と、2026年1月の確認書に載ったTrina関連会社の保有株数がどちらも79,365株で一致 | 推測 |
| 効率ではもはや単独の先頭ではない | NLRの効率チャートで、ペロブスカイト/シリコンのセル・モジュールの最新記録はLONGiやTrinaの名義になっている | 事実 |
2024年12月期の決算書で、Oxford PVは売上を「主にライセンス活動を通じて」生み始めたと書いています 事実。 同じ決算書は、主要なリスクとして「タンデムセルは結晶シリコン単体より製造コストが高く、長期的に安くなるかは未証明」 「モジュールの組立は外部メーカーに委託しており、先方の追加投資が必要で、その約束はまだ得られていない」と書いています 事実。 自前の量産には大きな資本がかかり、しかも現金は期末に約440万ポンドまで減っていました。 この状況で、特許という「すでに持っている資産」から現金を得る道を太くするのは合理的です。 Trinaへの独占ライセンスと、その直後の大口の株式割当が同じ相手と結びついているなら(第5章)、 「特許を使わせ、出資を受ける」という大手との組み方が同社の生き残り方になっている、と本稿は読みます 未確定/将来。
9. ペロブスカイト分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 項目 | 内容(公式サイト・リリースの記述) |
|---|---|
| セルの構造 | シリコンのボトムセルの上に、薄膜の成膜法を組み合わせてペロブスカイトのトップセルを直接形成する2端子タンデム。ドイツの工場ではボトムセルにHJT(ヘテロ接合)を使用。最後に電極の格子を付ける |
| モジュール | 既存のモジュール組立技術で組み立てる。組立は自社と外部委託の両方。2026年の新型はガラス/ガラス構造で、湿気に弱いセルを守るため端部を封止 |
| 一般向け製品 | Centaur 2シリーズ(黒背面のB、白背面のW、両面受光のT)。60セル(M)と72セル(L)の2サイズ |
| 特殊用途向け製品 | Pegasusシリーズ(衛星用のSpace、高高度無人機用のAir、車載用のMove)とセル単体のHyPERcell。軽量用途で1.2W/g超、セル効率28%とサイトに表記(会社発表) |
| 保証 | 技術ページに「現在のモジュール製品は10年以上の寿命保証」と表記 |
| ライセンス | 材料・プロセス・素子構造・製品にわたる特許群(登録400件超、中核45件超、会社発表)の使用許諾 |
2026年6月にFraunhofer ISEと発表したモジュールでは、セルを細長い短冊(シングル)に切り、 鉛フリーの導電性接着剤で瓦のように重ねてつないでいます。 CTOのクロスランド氏はこの方式について「低温の工程で、銅の配線材を必要としない」と説明しています 事実。
材料の側から見ると、ここには理由があります。 ボトムセルのHJTは表面の非晶質シリコン層が高温に弱く、その上に載るペロブスカイトも熱で分解しやすい材料です。 従来のリボン配線のハンダ付けは局所的に高温をかけるため、タンデムは熱工程の予算がもともと小さいのです 未確定/将来。 またタンデムは電圧が高く電流が小さいため、同社が言うように短冊を幅広く切っても抵抗損失が増えにくいという利点があります。 一方で、接着剤の長期の接続信頼性と、端部封止で湿気をどこまで防げるかは、屋外での実績がまだ少ない部分です。 本シリーズの技術解説「封止とバリア層」「タンデム」もあわせて読むと、この設計の意図がつかみやすくなります。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 資金繰り | 2024年12月末の現金は約440万ポンドまで減少。監査人は継続企業の前提に関する重要な不確実性を指摘し、会社自身も追加の外部資金が必要と書いている | 事実 |
| 長期信頼性が未証明 | 決算書が「加速試験では良好だが、実環境での長期性能を直接予測できない」と自ら書いている | 事実 |
| 製造コスト | タンデムは結晶シリコン単体より製造コストが高く、長期的に安くなるかは「まだ証明されていない」と決算書に記載 | 事実 |
| 原材料の不利な購入義務 | 2022年の転換社債に関連して、生産段階に入った場合に社債保有者から不利な価格で原材料を購入する義務を負っており、£15,528,867の引当金を計上 | 事実 |
| 外部委託先への依存 | モジュール組立を外部メーカーに委託しており、先方の追加投資の約束はまだ得られていないと決算書に記載 | 事実 |
| ライセンシーが競合になる | 中国で独占ライセンスを与えたTrinaは、NLRの効率チャートでOxford PVより後に高い記録を出している大手でもある | 推測 |
| 特許の執行コスト | 決算書は、知的財産の保護を「執行の水準が異なる複数の法域で」行う必要がある点をリスクとして挙げている | 事実 |
| 地政学 | ウクライナ、中東、米中対立が調達・物流・市場参入に影響しうると決算書に記載。大株主に中国企業の関連会社が複数いる点も、米国市場では論点になりうる | 推測 |
12. 用語集
- ペロブスカイト太陽電池
- ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造をもつ材料を光吸収層に使う太陽電池。塗布や蒸着の薄膜で作れる。
- タンデム(2端子)
- 光を吸収する層を2つ重ね、電気的に直列につないだ太陽電池。青い光をペロブスカイト、赤い光をシリコンが受け持つ。
- HJT(ヘテロ接合)
- 結晶シリコンの表面を非晶質シリコンの薄膜で覆ったシリコンセル。高効率だが高温工程に弱い。
- 指定面積/開口面積
- 効率を測るときの面積の決め方。どの面積で測ったかで数字が変わるため、記録を比べるときは必ず確認する。
- CalLab
- Fraunhofer ISE(ドイツ)の校正・測定部門。太陽電池の効率を第三者として測定・認証する。
- IEC 61730
- 太陽電池モジュールの安全性に関する国際規格。販売の前提となる認証の1つ。
- 転換社債
- 一定の条件で株式に転換できる社債。Oxford PVの2022年の社債は無利息で、転換権の部分を別にデリバティブとして評価している。
- Companies House
- 英国の会社登記所。非上場会社も決算書・株主情報・株式割当を提出し、誰でも閲覧できる。
13. 出典
- Oxford Photovoltaics Limited Annual Report and Consolidated Financial Statements, Year Ended 31 December 2024(英国Companies House、2025年10月27日登録)。売上・損益・研究開発支出・現金・従業員数・地域別売上・転換社債・原材料購入義務の引当金・政府補助金・子会社・主要リスク・継続企業の前提・IEC 61730認証・親会社がないこと。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/07127476/filing-history/MzQ4NjM4OTU0OWFkaXF6a2N4/document?format=pdf&download=0
- 英国Companies House OXFORD PHOTOVOLTAICS LIMITED 会社概要(登記番号、設立日、登記住所、事業分類、決算の提出期限)。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/07127476
- Oxford Photovoltaics Limited Written Resolutions(2025年12月19日可決、2026年1月6日登録)。最大3,000万ポンドの無担保転換社債の発行権限、Oxford Investment Consultants LLPとの条件書。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/07127476/filing-history/QUVJMVoxTllhZGlxemtjeA/document?format=pdf&download=0
- Oxford Photovoltaics Limited Return of Allotment of Shares(SH01、差し替え版、2026年2月8日登録)。2025年12月29日のA普通株79,365株の割当と1株あたり払込額630ポンド。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/07127476/filing-history/MzUwMTk1NDgwOWFkaXF6a2N4/document?format=pdf&download=0
- Oxford Photovoltaics Limited Confirmation Statement(CS01、確認日2026年1月16日)。株式の種類別総数と株主一覧(Trina Solar Energy Development Pte. Ltd、Meyer Burger Technology AG、Goldwind Science & Technology (HK)、Legal and General Capital Investments、Equinor Energy Ventures Fund、オックスフォード大学ほか)。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/07127476/filing-history/MzUwMjI5NjI2MGFkaXF6a2N4/document?format=pdf&download=0
- Oxford Photovoltaics Limited Confirmation Statement(CS01、確認日2025年1月16日)。前年時点の株主一覧(Trina関連会社の記載がないことの確認)。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/07127476/filing-history/MzQ1MzAyNTY4NWFkaXF6a2N4/document?format=pdf&download=0
- Oxford PV プレスリリース「Oxford PV sets new solar panel efficiency world record」(2024年1月31日)。25%、421W、1.68m²、Fraunhofer ISEのModule-TECとCalLabでの測定。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/oxford-pv-solar-energy-innovation
- Oxford PV プレスリリース「Oxford PV debuts residential solar module with record-setting 26.9% efficiency」(2024年6月19日)。60セル・指定面積約1.6m²・25kg未満、Fraunhofer CalLabの独立測定・認証、組立は自社と外部委託。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/oxford-pv-solar-sustainability-initiative
- Oxford PV プレスリリース「20% more powerful tandem solar panels enter commercial use for the first time in the US」(2024年9月5日)。米国顧客への初出荷、72セル、市販品24.5%、メガワット級パイロットライン、今後の生産の振り向け先とギガワット級への拡大方針。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/oxford-pv-solar-technology-patent
- Oxford PV プレスリリース「Oxford PV and Trinasolar announce a landmark Perovskite PV patent licensing agreement」(2025年4月9日)。中国での独占ライセンスと再許諾権、中国外の希望者への呼びかけ。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/oxford-pv-and-trinasolar-announce-a-landmark-perovskite-pv-patent-licensing-agreement
- First Solar / Oxford PV プレスリリース「First Solar, Oxford PV Enter into Patent Licensing Agreement for US Markets」(2026年2月24日)。米国での非独占ライセンス、結晶シリコンの除外、大量生産への拡大を長期戦略として追求しているとの説明。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/first-solar-oxford-pv-enter-into-patent-licensing-agreement-for-us-markets
- Oxford PV プレスリリース「Oxford PV Recognised in 2026 Global Cleantech 100」(2026年1月14日)。登録特許400件超、最初の商用出荷と最初のライセンス契約、2030年に30%を目指す製品ロードマップ。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/oxford-pv-recognised-in-2026-global-cleantech-100-for-breakthrough-solar-innovation
- Oxford PV プレスリリース「Oxford PV Joins APC Backed SUITE Project to Advance Solar Powered Electric Vehicles」(2026年4月15日)。APC・英国ビジネス貿易省のDRIVE35・Innovate UKの支援、日産の英国技術センターなどとのコンソーシアム。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/oxford-pv-joins-apc-backed-suite-project-to-advance-solar-powered-electric-vehicles
- Oxford PV / Fraunhofer ISE プレスリリース「Perovskite-silicon solar cells meet matrix shingled interconnection」(2026年6月18日)。491W・1.92m²と546W・2.13m²で25.6%、導電性接着剤、端部封止、HJTへの直接成膜、HoTSunプロジェクト(BMWE助成)。 https://www.oxfordpv.com/press-releases/perovskite-silicon-solar-cells-meet-matrix-shingled-interconnection-collaboration-between-oxford-pv-and-fraunhofer-ise
- Oxford PV 公式サイト「About us」(沿革:2010年設立、2014年最初のタンデムセル、2016年ブランデンブルク取得、2022年26.8%、2023年28.6%ほか)。ロゴ画像の取得元。 https://www.oxfordpv.com/about-us
- Oxford PV 公式サイト「Technology」(HJTボトムセルへの直接成膜、10年以上の寿命保証、2027年27%・2030年30%・2035年35%のロードマップ)。 https://www.oxfordpv.com/technology
- Oxford PV 公式サイト「Mainstream」「Specialty」「Licensing」(Centaur 2・Pegasus・HyPERcellの製品構成、1.2W/g超、専用能力20MW、特許400件超・中核45件超)。 https://www.oxfordpv.com/specialty
- 米国立研究所NLR(旧NREL) Best Research-Cell Efficiency データ表(Oxford PV名義のペロブスカイト/シリコン2端子タンデムの記録:2018年6月27.3%、2018年12月28.0%、2020年12月29.5%と面積・測定機関)。 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/cell-efficiency-data-table.xlsx
- 米国立研究所NLR(旧NREL) Champion Photovoltaic Module Efficiency Chart(ペロブスカイト/シリコンの系列におけるOxford PV・Trina・LONGiの位置)。 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/champion-module-chart.pdf
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値は、Oxford Photovoltaics Limitedが英国Companies Houseに提出した監査済み財務諸表・登記書類、同社の公式リリースと公式サイト、米国立研究所NLRの効率データに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「会社発表」と記した効率は、同社が発表した数字です。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。