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Kaneka|ペロブスカイト太陽電池 企業解説

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COMPANY PROFILE / ペロブスカイト太陽電池

カネカ
― 自社で量産するシリコンセルの上に重ねる、化学メーカー発のタンデム

カネカは化学メーカーですが、1999年から電力用の太陽電池を製造し、いまも子会社のカネカソーラーテック(兵庫県豊岡市)でヘテロ接合型の結晶シリコン太陽電池を量産しています。 ペロブスカイトでは、この自社製シリコンセルの上にペロブスカイトを重ねるタンデム型に的を絞り、 2026年2月にNEDOグリーンイノベーション基金の「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」に採択され、2028年度の製品販売開始を掲げています。 第三者機関が測ったタンデムセルの効率は32.6%(1cm²)です。 本稿では会社全体の規模は最小限にとどめ、タンデムに何を投じ、どこまで来たかを、会社の法定開示・経営計画・公式リリースとNEDOに提出した事業戦略ビジョンで整理します。

構成:カネカの2026年3月期 決算短信と有価証券報告書、計画「3年の仕掛」2025・2026の説明会資料、公式リリース(2022〜2026年)、NEDOグリーンイノベーション基金に提出した事業戦略ビジョン2件、NEDOの採択発表を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるカネカと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(会社全体は簡潔に)
  5. ペロブスカイトにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか
  9. ペロブスカイト分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるカネカと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置

正式名称株式会社カネカ英文名 KANEKA CORPORATION
本社東京都港区・大阪市北区東京本社と大阪本社の2本社
上場東証 4118設立1949年
この分野での区分化学メーカー
(シリコンセルも量産)
1999年に電力用太陽電池の製造を開始
製品の形シリコンとのタンデム自社のヘテロ接合セルの上に積層
認証・第三者測定の効率タンデムセル32.6%1cm²。ESTIによる測定と会社が記載
販売開始の計画2028年度2026年2月・3月のリリースと2026年の経営計画
国の事業GI基金に2回採択2021年(単接合)・2026年(タンデム)
まず押さえるべき1点

ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業は、大きく既存の太陽電池大手・専業スタートアップ・素材/化学/電機メーカーの3種類に分かれます。 カネカは化学メーカーですが、ほかの化学・電機系と決定的に違うのは、シリコン太陽電池を自社グループで量産していることです 事実。 タンデム型は「上のペロブスカイト」と「下のシリコン」の両方が要りますが、カネカは下のシリコンセルを外から買う必要がありません。 NEDOに提出した事業戦略ビジョンも自社の強みを「セルからモジュールまでの国内一貫生産」「結晶Si太陽電池セルを生産しており、トップセルに適した高効率ボトムセルの量産が可能」と書いています。 一方で弱みとして「セルの製造拠点が1か所」を挙げており、規模ではシリコン大手に遠く及ばないことも自覚しています。

2. ロゴと社名の表記について

カネカのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトから取得した画像を img/kaneka_logo.png として設置しています(ロゴの下の「カガクでネガイをカナエル会社」は同社のタグラインです)。

表記の注意:法人名は「株式会社カネカ」、英文では KANEKA CORPORATION です。 太陽電池の製造は100%子会社のカネカソーラーテック株式会社(兵庫県豊岡市)が委託加工先として担い、販売はカネカソーラー販売株式会社が担っています。 社内の事業単位は「PV & Energy management」(PV&Em)Solutions Vehicleです。

公式サイト:https://www.kaneka.co.jp/corporate/outline/

3. ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか

ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業の3つの類型 同じ「ペロブスカイトをやっている会社」でも、出自と狙いがまったく違う 既存の太陽電池大手 専業スタートアップ 素材・化学・電機 シリコンの量産から上乗せする ペロブスカイトだけで勝負する 異業種の技術で参入する LONGi/JinkoSolar Trina/Hanwha Qcells ほか Oxford PV/Swift Solar EneCoat/Renshine ほか 積水化学/パナソニック 東芝/カネカ ほか 販路と量産設備をすでに持つ 技術の尖りで先行できる フィルム・ガラス・封止の技術 主力のシリコンが本業 量産と資金の壁が高い 太陽電池の販路が細い カネカはこの右端にいるが、自社のシリコンセルに重ねるタンデムを選んだ点で左端にも近い 化学メーカーでありながらヘテロ接合シリコンを豊岡で量産し、2028年度のタンデム製品の販売開始を計画
図1 ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業の3類型と、カネカの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。シリコンセルの自社生産は有価証券報告書と事業戦略ビジョン、2028年度の販売開始計画は2026年2月・3月のリリースに基づきます。

製品の形はシリコンとのタンデムです。カネカは2021年にGI基金で単接合(ポリイミドフィルムやガラスの上のペロブスカイト)の開発テーマにも採択されており、 2025年12月時点でもそのテーマの成果(30cm角モジュールで19.4%など)を事業戦略ビジョンで報告しています 事実。 ただし、2026年以降のリリースと経営計画で「製品販売」の対象として名前が出ているのはタンデム型だけです。 タンデムの仕組みは、本シリーズの技術解説「タンデム」で扱っています。

4. 会社の規模(会社全体は簡潔に)

会社全体は本稿の主題ではないので、規模だけを押さえます 事実。

指標2025年3月期2026年3月期
売上高(百万円)807,200811,638
営業利益(百万円)40,05032,894
研究開発費(百万円)―39,891
従業員数(連結)―11,762名

売上高・営業利益は2026年3月期決算短信、研究開発費は同期の有価証券報告書、従業員数は会社概要(2026年3月31日現在)から。

ここで注意

上の数字はカネカグループ全体のものです。 太陽電池を含むPV & Energy managementは、有価証券報告書ではMaterial Solutions Unitなどのセグメントの中の一事業で、太陽電池事業だけの売上高・利益は開示されていません。 ペロブスカイトについても、売上・設備投資額・専任人員数はいずれも公表されていません 未確定/将来。 研究開発費399億円のうちペロブスカイトがいくらかも示されていません。この分野の規模を示す金額は、第5章のGI基金の研究開発費だけです。

5. ペロブスカイトにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人(体制)研究開発責任者は薄膜プロセス開発研究所長。太陽電池・薄膜研究所(技術開発)、薄膜プロセス開発研究所(プロセス開発)、PV&Em SV(事業化・製品化)、カネカソーラーテック(生産)が連携するプロジェクト体制。取締役副社長(研究担当)と社長がコミット事実
人(人数)専任人員数。若手研究者を国内大学や海外研究機関に派遣し、欧州の自社研究部門も活用すると記載非公表
金(単接合、2021年〜)GI基金「次世代型太陽電池実用化事業」の研究開発費 約30億円(国費負担 約20億円、自己負担 約10億円)事実
金(タンデム、2026年〜)GI基金「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」の研究開発費 約60億円(国費負担 約40億円、自己負担 約20億円)事実
金(社内の優先度)2025年度の研究開発投資(R2B費)の85%を重点分野に集中し、太陽電池関連は上位3テーマの1つと事業戦略ビジョンに記載事実
設備既設のヘテロ接合セル・住宅用建材一体型モジュール・車載用モジュールの生産設備と共通する部分を活用。十数kW相当(数千枚規模)の試作設備を構築する計画。2026年の経営計画に「ペロブスカイト太陽電池のパイロット設備導入、試験販売開始」事実
外部への出資・買収ペロブスカイト分野での出資・買収の記載は、本稿が確認した資料にない確認できず
公的資金NEDO GI基金に2021年12月(単接合、交付決定は2022年3月)と2026年2月(タンデム)の2回採択。事業戦略ビジョンは「NEDO資金を長年に渡り活用」と記載事実
大学・研究機関タンデムの実証事業はカネカの単独実施(共同提案者なし)。産業技術総合研究所が事務局のペロブスカイト太陽電池(単接合)の標準化準備委員会に参画事実
本稿の計算:2つのGI基金事業の規模

単接合(約30億円)とタンデム(約60億円)を合わせると、GI基金に関わる研究開発費は約90億円、うち国費は約60億円(約67%)です 本稿の計算。 タンデムの事業は単接合の2倍の規模で、カネカが資源をタンデムへ寄せていることが金額にも表れています。 ただし、これは研究開発費で、量産ラインの設備投資額は示されていません 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1999年10月電力用太陽電池の製造を開始(有価証券報告書の沿革)。薄膜シリコン太陽電池を年間120MW規模で生産した経験を持ち、現在はヘテロ接合結晶シリコンを生産タンデムの「下側」を自前で持つ土台
2021年12月GI基金「次世代型太陽電池の開発」に採択(高性能ペロブスカイト太陽電池技術開発、単独)単接合の開発
2022年3月GI基金の助成金交付決定を発表。自社設計のポリイミド基板を使った厚さ約10μmの超薄型ペロブスカイトで、セル変換効率19.8%(0.1cm²、JETがIEC 60904に基づき測定)フィルム型の到達点
2025年5月経営計画の説明会で、ペロブスカイト/ヘテロ接合シリコンのタンデムセルで32.6%(1cm²、ESTIによる測定)を公表。瓦一体型や3D曲面の車載用モジュールも開発タンデムの効率を第三者測定で示した
2025年12月時点単接合テーマの報告:8cm角ミニモジュール(ガラス基板)22.2%、両面発電タイプ20.8%、30cm角モジュール19.4%(いずれも第三者機関測定)、小サイズセル25%(自社測定)単接合でも高い値を出している
2026年2月GI基金「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」に採択(テーマ「高効率、高信頼性タンデム型ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発とその技術実証」)。同じ事業のもう1件は長州産業量産に向けた国の事業に入った
2026年3月さいたま市と連携協定を結び、市の本庁舎敷地でタンデムモジュール2枚(約995mm×約1,085mm)の屋外実証を開始(2027年3月まで)。発電した電力は蓄電池に貯めて非常時に使う会社は「公共施設として国内初」と説明
2026年5月計画「3年の仕掛」2026で、PV&Emの施策に「ペロブスカイト太陽電池のパイロット設備導入、試験販売開始」、重点テーマとして「2028年度には製品販売を開始予定」を掲げる経営計画に販売開始が入った

7. 今後の計画

製品販売の開始2028年度リリースと2026年の経営計画
セル効率の目標32%(100cm²以上)中間目標30%
モジュール効率の目標30%(メーターサイズ)中間目標28%。20年相当の信頼性
発電コストの目標12円/kWh中間目標17円/kWh。将来は効率40%以上に挑戦
タンデムの研究開発(事業戦略ビジョン、事業開始時点)現状(会社の記載)目標
セル変換効率32.6%(1cm²、第三者機関測定)、33.9%(1cm²、社内測定)32%(100cm²以上の実用サイズ)
モジュール出力100cm幅のモジュールで自社シリコン比1.2倍の出力を確認モジュール効率30%(メーターサイズ)
耐久性ミニモジュールで湿熱試験(85℃/85%RH、1,000時間)、温度サイクル試験(−45℃/85℃、200回)を確認20年相当の信頼性試験に合格
試作1日数枚〜十数枚のセル試作十数kW相当(数千枚規模)の試作設備を構築
事業化・投資回収―2029年頃の事業化、2030年代後半頃の投資回収を想定
確認できなかったこと

次はいずれも、本稿が確認した一次資料に記載がありません 未確定/将来。

タンデムの量産ラインの場所・生産能力・投資額/販売価格/パイロット設備の導入時期と場所/試験販売の開始時期/ 33.9%の第三者による確認。 なお、リリースは「2028年度に製品販売開始」、事業戦略ビジョンは「2029年頃の事業化」と書いており、両者の関係(試験販売と本格事業化の違いか)は説明されていません。

8. この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
ペロブスカイトを自社シリコン事業の上位製品にするリリースが一貫して「当社が生産するヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を積層」と書き、既設設備との共通部分を活用すると事業戦略ビジョンに記載推測
まず住宅と車という既存の顧客へビジョンのターゲットが「建物用PV(住宅・非住宅)と車載用PV」。試作品も瓦一体型、軽量型、3D曲面の車載用。既存のシリコン事業で住宅向けと、トヨタ「プリウスPHEV」への車載用太陽電池の採用実績がある事実
面積が限られる場所で効率の差を売るビジョンが住宅の課題を「狭小地等で設置容量が確保できない」、車の課題を「設置面積が限られる(高効率)」と整理推測
単接合の技術はタンデムの上側に転用する単接合テーマで開発したペロブスカイト層の高品質化やパッシベーションが、タンデムの「トップセル」の開発項目と重なる推測
その先は三接合も視野ビジョンのリスク対応に「三接合太陽電池技術開発等を本基金事業と並行して実施」と記載事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

カネカのタンデムの目標は「モジュール効率30%」ですが、ビジョンはこの値について 「現在テスト的に市場に供されているペロブスカイト/Siタンデムのモジュール効率を大きく超える高い水準」と書いています 事実。 一方、現状の到達点として書かれているのは、セルでは1cm²の32.6%、モジュールでは「100cm幅のモジュールで当社Si比1.2倍の出力」で、 メーターサイズのモジュール効率そのものは示されていません 事実。 セルの目標も「100cm²以上で32%」と、現状の1cm²から面積を100倍にする段階にあります。 ここから本稿は、2028年度の販売開始はまず目標の30%に届く前の製品で市場に入り、その後に効率を上げていく形になる可能性が高いと読みます 未確定/将来。 「2028年度に販売開始」と「2029年頃の事業化」という2つの時期が並んでいるのも、その段階的な進め方と整合します。

9. ペロブスカイト分野の提携マッピング

カネカを中心としたペロブスカイト太陽電池の関係 会社の公式リリース・法定開示・事業戦略ビジョンとNEDOの公表資料に記載のある関係のみ グループ会社 公的資金 実証・標準化 シリコン製品の顧客・第三者測定(点線) カネカ 化学・タンデム カネカソーラーテック 100%子会社・豊岡で生産 カネカソーラー販売 太陽電池の販売・営業 NEDO(GI基金) 2021年単接合・2026年タンデム ESTI・JET 効率の第三者測定 さいたま市 連携協定・本庁舎で実証 産業技術総合研究所 標準化準備委員会(事務局) トヨタ自動車 シリコン車載PVの採用
図2 カネカを中心としたペロブスカイト太陽電池の関係。出典:カネカの公式リリース、有価証券報告書、経営計画の説明会資料、事業戦略ビジョン、カネカソーラーテックの会社紹介、NEDOの採択発表。ペロブスカイトで他社と共同開発している関係は、本稿が確認した資料には見当たりません(タンデムの実証事業は単独実施)。点線のトヨタ自動車は、既存のシリコン太陽電池を「プリウスPHEV」に採用した顧客で、ペロブスカイトでの取引ではありません。ESTIとJETは効率を測定した第三者機関です。

10. 提供している技術・製品・サービス

項目会社の公表内容
製品ペロブスカイト製品は未発売(2028年度に販売開始予定)。既存製品はヘテロ接合結晶シリコン太陽電池、住宅用の瓦一体型・建材一体型(BIPV)モジュール、車載用モジュール
タンデムの構造自社生産のヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を積層。それぞれが異なる波長の光を吸収
タンデムの効率セル32.6%(1cm²、ESTIによる測定=第三者機関測定)、33.9%(1cm²、社内測定)
タンデムの試作品3D曲面モジュール(約80cm×65cm、モックアップ)、軽量モジュール(約148cm×98cm、軽量ガラス)、瓦一体型モジュール(約100cm×30cm)。実証用モジュールは約995mm×約1,085mm
単接合の効率ポリイミドフィルム上のセル19.8%(0.1cm²、JET測定、2022年)、フィルム上20.7%(1cm²未満)、ガラス基板の8cm角ミニモジュール22.2%・30cm角モジュール19.4%(第三者機関測定)
社内の蓄積技術薄膜シリコンで培った光閉じ込め・微細テクスチャー・膜質制御の技術、光学シミュレーション、屋内外の発電量データにもとづく発電量予測、材料設計・合成(化学メーカーとして)、接合・封止温度を下げられるモジュール設計、大面積の透明電極と中間層の形成技術
素材技術者の視点:ヘテロ接合シリコンが「上に何かを載せやすい」理由

タンデムでは、完成したシリコンセルの上にペロブスカイト層を作ります。ここで効いてくるのが温度です。 ペロブスカイトは有機成分を含むので、高い温度をかけると壊れます。一方、下側のシリコンセルも、種類によっては後から熱を加えると性能が落ちます。 ヘテロ接合型のシリコンセルは、もともと低温で薄膜を積んで作る構造で、表面にアモルファスシリコンと透明電極の層を持っています。 カネカが事業戦略ビジョンで「接合・封止温度を低減可能なモジュール設計」「大面積透明電極、中間層形成技術」を強みに挙げているのは、 上下どちらの層も熱で傷めずにつなぐことがタンデムの急所だからです 未確定/将来。 薄膜シリコンの量産で培った「薄い膜を大面積に均一に積む」技術が、ここで直接生きる構図です。 中間層と電流整合の考え方は、本シリーズの技術解説「タンデム」で扱っています。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
長期信頼性事業戦略ビジョンが「目標とする長期信頼性を実現できない」「市場から求められる長期信頼性の実現に時間がかかる」をリスクに挙げ、使用期間が比較的短い用途への展開も想定すると記載事実
シリコンに対する優位が出ない「既存太陽電池に対するメリットを実現できない(市場がない)」をリスクに挙げ、事業中止の判断基準を「開発技術に対する市場が存在しない」としている事実
製造拠点が1か所自社の弱みとして「セルの製造拠点が1か所(BCP)」「モジュールを含めてスケール面においての拡充」を挙げる事実
希少材料の供給「材料供給に関するリスク」を挙げ、レアメタル等の希少材料を用いない技術開発を並行して進めるとしている事実
海外大手との規模の差タンデムはシリコン大手も開発しており、量産規模で大きく劣る。ビジョンは競合の一例として原料を海外調達し海外でセル・モジュールを生産するシリコンメーカーを挙げている推測
目標時期のずれ「2028年度の製品販売開始」と「2029年頃の事業化」の関係が説明されておらず、実際の立ち上がりの速度が読みにくい推測

12. 用語集

タンデム型
吸収する光の波長が違う2種類の太陽電池を重ねたもの。1種類だけの場合より高い効率を狙える。
ヘテロ接合型シリコン
結晶シリコンの表面に薄いアモルファスシリコン層を重ねて作るセル。比較的低い温度で作れ、効率が高い。
トップセル/ボトムセル
タンデムで光が先に当たる上側のセルと、残りの光を受ける下側のセル。カネカではペロブスカイトが上、シリコンが下。
ESTI
欧州の太陽電池の試験・測定機関。第三者として太陽電池の効率を測定する。
JET
一般財団法人電気安全環境研究所。国内で太陽電池の性能・安全性の試験を行う第三者機関。
三接合
3種類の太陽電池を重ねる構造。タンデム(二接合)よりさらに高い効率を狙う。
R2B費
カネカが「Research to Business」と呼ぶ、研究から事業化までに投じる費用。
BCP
事業継続計画。災害などで拠点が止まったときに事業を続ける備え。
概念図:シリコンセルの上に薄いペロブスカイト層が重なり、青い光と赤い光を分けて吸収する様子
図3 カネカのタンデム型ペロブスカイト太陽電池の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. カネカ 会社概要(名称、設立、本社、資本金、従業員数、事業内容。2026年3月31日現在)。 https://www.kaneka.co.jp/corporate/outline/
  2. カネカ 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年5月14日)。 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01278/e93002fd/2455/4b4f/94c1/c21ae616a7df/140120260513528864.pdf
  3. カネカ 有価証券報告書 第102期(2025年4月1日〜2026年3月31日)。沿革(電力用太陽電池の製造開始)、関係会社(カネカソーラーテック)、研究開発費、PV & Energy managementの状況。 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01278/afcb1ed0/716f/4212/b7df/b59ceee7db07/20260624181605285s.pdf
  4. カネカ 計画「3年の仕掛」2025 説明会資料(2025年5月27日)。タンデムセル32.6%(ESTI測定)、瓦一体型・車載用モジュール。 https://www.kaneka.co.jp/topics/ir_news/2025/rhmcfr0000000bnd-att/ir2505271.pdf
  5. カネカ 計画「3年の仕掛」2026の策定に関するお知らせ(2026年5月28日)。パイロット設備導入・試験販売開始、2028年度の製品販売開始予定。 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01278/eb732fdb/e276/4ee9/ad00/3e47e53599aa/140120260528553614.pdf
  6. カネカ ニュースリリース「カネカ 高性能ペロブスカイト太陽電池の実用化技術開発を加速」(2022年3月16日)。 https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2022/nr2203161.html
  7. カネカ ニュースリリース「NEDOグリーンイノベーション基金事業『次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業』に採択」(2026年2月6日)。 https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2026/nr2602061.html
  8. カネカ ニュースリリース「さいたま市とタンデム型ペロブスカイト太陽電池の屋外実証事業を開始」(2026年3月18日)。 https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2026/nr2603181.html
  9. カネカ(NEDO公開) 事業戦略ビジョン「高効率、高信頼性タンデム型ペロブスカイト太陽電池量産技術開発とその技術実証」(事業開始時点)。ターゲット、強みと弱み、事業計画、資金計画、研究開発目標と現状、体制、試作品、リスク要因。 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-solar-cells/item-1-4/vision-kaneka-001.pdf
  10. カネカ(NEDO公開) 事業戦略ビジョン「サイズフリー・超薄型の特長を活かした高性能ペロブスカイト太陽電池技術開発」(2025年12月時点)。単接合の資金計画と研究開発の進捗。 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-solar-cells/item-1-2/vision-kaneka-004.pdf
  11. NEDO 「グリーンイノベーション基金事業で、次世代型太陽電池の開発に着手」(2021年12月28日)の別紙1 実施予定先一覧。 https://www.nedo.go.jp/content/100940817.pdf
  12. NEDO 「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」の実施体制の決定について(2026年2月6日)と別紙1 実施予定先一覧(長州産業、カネカ)。 https://www.nedo.go.jp/content/800048185.pdf
  13. カネカソーラーテック 私たちについて(生産拠点が豊岡であること、開発はカネカ・販売はカネカソーラー販売が担う体制)。 https://www.kst.kaneka.co.jp/about/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、設立、東京本社・大阪本社、資本金、従業員11,762名事実出典1 https://www.kaneka.co.jp/corporate/outline/
売上高・営業利益(2025年3月期・2026年3月期)、証券コード4118事実出典2 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01278/e93002fd/2455/4b4f/94c1/c21ae616a7df/140120260513528864.pdf
1999年10月の電力用太陽電池の製造開始、カネカソーラーテック(豊岡、100%、委託加工先)、研究開発費398億9,100万円、PV&EmのGI基金採択事実出典3 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01278/afcb1ed0/716f/4212/b7df/b59ceee7db07/20260624181605285s.pdf
タンデムセル32.6%(1cm²、ESTI測定)、瓦一体型・3D曲面の車載用モジュール、プリウスPHEVへの採用事実出典4 https://www.kaneka.co.jp/topics/ir_news/2025/rhmcfr0000000bnd-att/ir2505271.pdf
パイロット設備導入・試験販売開始、2028年度の製品販売開始予定(2026年の経営計画)事実出典5 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01278/eb732fdb/e276/4ee9/ad00/3e47e53599aa/140120260528553614.pdf
2022年の交付決定、約10μmの超薄型、セル19.8%(JET測定)、薄膜シリコン120MW規模の生産経験事実出典6 https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2022/nr2203161.html
タンデムのGI基金採択、将来の40%以上への挑戦、2028年度の販売開始計画事実出典7 https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2026/nr2602061.html
さいたま市との連携協定と本庁舎での実証(2枚、2027年3月まで)事実出典8 https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2026/nr2603181.html
タンデム事業の研究開発費約60億円(国費約40億円・自己負担約20億円)、目標(32%・30%・20年・12円)、現状(32.6%・33.9%・1.2倍・耐久試験)、試作設備、2029年頃の事業化、強みと弱み、単独実施、体制、R2B費、標準化準備委員会、三接合、リスク要因事実出典9 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-solar-cells/item-1-4/vision-kaneka-001.pdf
単接合の研究開発費約30億円(国費約20億円・自己負担約10億円)と進捗(22.2%・20.8%・19.4%・25%・20.7%)事実出典10 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-solar-cells/item-1-2/vision-kaneka-004.pdf
2021年12月のGI基金採択(単独)事実出典11 https://www.nedo.go.jp/content/100940817.pdf
タンデム量産技術実証事業の実施予定先(長州産業、カネカ)事実出典12 https://www.nedo.go.jp/content/800048185.pdf
生産拠点が豊岡、開発はカネカ、販売はカネカソーラー販売事実出典13 https://www.kst.kaneka.co.jp/about/
ペロブスカイト太陽電池の3類型の区分本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
GI基金の研究開発費の合計約90億円、国費約67%、タンデムが単接合の2倍本稿の計算出典9・10の金額を本稿が足し合わせたもの
太陽電池事業だけの売上高、ペロブスカイトの売上・設備投資額・専任人員数、量産ラインの場所・能力、販売価格、パイロット設備の時期、33.9%の第三者確認未確定/将来本稿が確認した一次資料に記載なし。本稿では推計しない
自社シリコン事業の上位製品にするという読み、面積が限られる場所で差を売るという読み、単接合の技術をトップセルに転用するという読み推測出典7〜10からの本稿の解釈
目標の30%に届く前の製品で市場に入り段階的に効率を上げるという読み推測出典5・7・9の目標と時期からの本稿の解釈
上下の層を熱で傷めずにつなぐことがタンデムの急所という見方推測出典9の技術的優位性の記述からの本稿の解説
海外大手との規模の差、目標時期のずれというリスク推測出典7・9からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべてカネカの法定開示・経営計画・公式リリース、同社がNEDOに提出した事業戦略ビジョン、NEDOの公表資料、カネカソーラーテックの会社紹介に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。