INSTITUTION PROFILE / 光通信・フォトニクス
Open Compute Project
― データセンターの「買い手」が仕様を公開し合う非営利団体
Open Compute Project(OCP)は、2011年にFacebook(現Meta)が始めたプロジェクトを母体とする米国の非営利法人です。 サーバー、ラック、電源、冷却、ネットワーク機器などのデータセンター機器の仕様を公開し、共同で改良することを目的にしています。 理事会にはMeta・Microsoft・GoogleといったAIデータセンターの大口の買い手と、NVIDIA・AMD・Intelなどの半導体メーカーが並びます。 本稿では、OCPが光通信・フォトニクスにどこまで影響を持つのかに絞って整理します。
- 30秒でわかるOCP
- どんな機関か ― 影響力の「型」
- 光通信・フォトニクスで何をしているか
- 影響力の範囲(権限と地域)
- 関わっている企業・組織
- 今後の見通し
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるOCP
OCPはデータセンターの機器を使う側(買い手)が中心になって仕様を公開する場です。 OCPは「アイデア、仕様、知的財産を公開して共有することが技術革新を最大化する」と掲げ、貢献物には効率・影響・公開性・拡張性・持続可能性の5つの原則のうち3つ以上を満たすことを求めています 事実。 光通信の分野では、光トランシーバーの電気・光仕様そのもの(OIFやIEEE 802.3の領域)ではなく、光回線スイッチ(OCS)のオープン仕様や、短距離の光I/Oに求める要件づくりに関わっています。
2. どんな機関か ― 影響力の「型」
光通信・フォトニクスの記事に出てくる「機関」は、企業と違って光部品を製品として売りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。
3. 光通信・フォトニクスで何をしているか
OCPのプロジェクトのうち、光通信・フォトニクスに関わるものは次のとおりです 事実。
| 活動 | 位置づけ | 中身 | 対象外(明記されているもの) |
|---|---|---|---|
| Optical Circuit Switching(OCS) | Networkingプロジェクトのサブプロジェクト | 光回線スイッチのハード・ソフトのオープン仕様、SDNとの連携、テレメトリー、データセンターとAIクラスターでの実証、標準化団体と協力した互換性の確保 | 特定企業の独自方式、長距離の通信事業者向け用途、インターフェース以外の物理層部品の設計 |
| Short Reach Optical Interconnect(SROI) | 将来技術イニシアティブ(FTI)の作業部会 | プロセッサ間、プロセッサとメモリ間の帯域を短距離の光で改善するための要件と指標を定め、OCPの要件文書にまとめる | ― |
| OCP Accepted™・OCP Inspired™ | 製品の認定制度 | 承認済みのOCP仕様に準拠した製品を認定。設計ファイルを提供したものがAccepted、提供していないものがInspired | 光部品の認定例は本稿では確認していない |
| グローバルサミット | 年次の会合 | 2025年は10,835人が参加。2026年は10月12〜15日に米国サンノゼで開催 | ― |
SROIは製品の仕様ではなく、短距離の光I/Oに何を求めるか(要件と指標)を定める作業部会です。 OIFやIEEE 802.3が「どうつなぐか」を決めるのに対し、OCPは買い手の立場から「どういう条件を満たしてほしいか」を先に示す役割になります。 光部品や実装材料を供給する立場からは、OCPの要件文書が、ハイパースケーラーの調達条件を読むための手がかりになります(本稿の見方)。
4. 影響力の範囲(権限と地域)
| 観点 | OCPが持っているもの | 持っていないもの |
|---|---|---|
| 権限 | 仕様と設計を公開し、貢献物を受け入れ、準拠製品に認定マークを与える権限 | 仕様を守らせる権限、規制、研究資金の配分 |
| 地域 | 法人は米国。地域コミュニティはアジア太平洋・中国本土・欧州中東アフリカ(EMEA)・日本・韓国・台湾 | 特定の国の制度への組み込み |
| 意思決定 | 理事会が運営。運営委員会の選挙で持てる票は会員種別で0〜3票(Silver 1票、Gold 2票、Platinum 3票、StartupとBronzeは0票) | 1社1票の平等な投票(OIFとは違う) |
| 公開性 | OCSの会議は録画され、資料・提案・議事録はWikiで公開される(細則と知的財産方針による) | 非公開の標準化交渉の場 |
| 光の仕様との関係 | OCSの範囲に「標準化団体と協力して互換性を確保する」と明記 | 光トランシーバーの電気・光インターフェースの規格(OIF・IEEE 802.3の領域) |
OCPの理事会のページには、理事長のコメントとして「約300の企業会員」という記述がありますが、コメントの時期が書かれていません。 会員一覧のページは本稿の方法では内容を取得できなかったため、本稿では最新の会員数を示していません 未確定/将来。 規模の目安として、2025年のグローバルサミットの参加者10,835人を使っています。
5. 関わっている企業・組織
本シリーズの企業解説との関係
| 企業(本シリーズの対象候補) | OCPでの立場(一次情報の表記) |
|---|---|
| NVIDIA | 理事(Rob Ober氏) |
| AMD | 理事(Robert Hormuth氏) |
| Intel | 理事(Jeff McVeigh氏) |
※理事会以外の会員企業は、会員一覧のページを本稿の方法で取得できなかったため確認していません。ほかの対象候補企業が会員であるかどうかは未確認です 未確定/将来。
6. 今後の見通し
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 光回線スイッチ(OCS)が特定企業の独自方式から、複数社が参入できる形に移っていく | OCSサブプロジェクトは、独自方式を対象外とし、ベンダーに依存しないオープン仕様と標準化団体との協力を掲げる | 推測 |
| 短距離の光I/Oでは、買い手が示す要件と指標が、部品メーカーの開発目標の目安になる | SROIはプロセッサ間・プロセッサとメモリ間の光I/Oの要件と指標を定め、OCPの要件文書をつくると明記 | 推測 |
| 大口の買い手と半導体メーカーが主導する構造は当面続く | 理事会はMeta(議長)・Microsoft・Google・NVIDIA・AMD・Intel・Armと個人1名、OCPのCEOで構成 | 推測 |
7. 用語集
- OCS(光回線スイッチ)
- 光信号を電気に変えずに、光の経路をそのまま切り替えるスイッチ。AIクラスターの配線の組み替えに使われる。
- SROI
- Short Reach Optical Interconnect。プロセッサやメモリの間を短距離の光でつなぐ技術の要件を整理するOCPの作業部会。
- OCP Accepted™/Inspired™
- OCPの仕様に準拠した製品の認定マーク。設計ファイルを提供したかどうかで区別する。
- 501(c)(6)
- 米国内国歳入法で、業界団体などの非営利組織の区分。
8. 出典
- OCP About(2011年の設立、Facebookのデータセンター設計が起点、情報の公開と共有、5つの原則、OCP Accepted™)。Internet Archiveの2026年9月7日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/about
- OCP Membership(企業会員の4段階と会費、運営委員会の投票数、スタートアップ枠)。Internet Archiveの2026年6月1日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/membership
- OCP Board of Directors(理事の氏名と所属、理事長コメント)。Internet Archiveの2026年7月2日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/about/board-of-directors
- OCP Optical Circuit Switching(Networkingプロジェクトのサブプロジェクト、目的・範囲・対象外、会議資料の公開)。Internet Archiveの2026年5月21日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/community/optical-circuit-switching
- OCP Short Reach Optical Interconnect(将来技術イニシアティブの作業部会、目的と範囲)。Internet Archiveの2026年5月21日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/community/short-reach-optical-interconnect
- OCP 2026 OCP Global Summit(2026年10月12〜15日、サンノゼ。2025年の参加者10,835人)。Internet Archiveの2026年9月20日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/summit/global-summit
- OCP Membership Directory(OCP Accepted™とOCP Inspired™の定義)。Internet Archiveの2026年5月21日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/membership/membership-directory
- OCP Bylaws of Open Compute Project Foundation(2025年4月10日改定。デラウェア州の非営利・非株式法人、501(c)(6)の目的)。Internet Archiveの2025年10月29日保存版で確認。 https://www.opencompute.org/documents/bylaws
9. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 2011年の設立、情報の公開と共有、5つの原則のうち3つ以上、地域コミュニティ | 事実 | 出典1 https://www.opencompute.org/about |
| 企業会員の会費と運営委員会の投票数 | 事実 | 出典2 https://www.opencompute.org/membership |
| 理事の構成、理事長コメントの「約300の企業会員」(時期の記載なし) | 事実 | 出典3 https://www.opencompute.org/about/board-of-directors |
| OCSサブプロジェクトの目的・範囲・対象外、会議資料の公開 | 事実 | 出典4 https://www.opencompute.org/community/optical-circuit-switching |
| SROIの目的と範囲 | 事実 | 出典5 https://www.opencompute.org/community/short-reach-optical-interconnect |
| 2025年サミットの参加者10,835人、2026年サミットの日程 | 事実 | 出典6 https://www.opencompute.org/summit/global-summit |
| OCP Accepted™とOCP Inspired™の定義 | 事実 | 出典7 https://www.opencompute.org/membership/membership-directory |
| デラウェア州の非営利・非株式法人、501(c)(6) | 事実 | 出典8 https://www.opencompute.org/documents/bylaws |
| 機関の4つの型の区分、要件文書が調達条件の手がかりになるという見方 | 本稿の計算 | 本稿による整理 |
| 最新の会員数、理事以外の対象候補企業の会員状況 | 未確定/将来 | 出典1〜8で確認できず。本稿では推計しない |
| 第6章の見通し3項目 | 推測 | 出典3〜5の内容からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の記述はOCPの公式サイトと細則に基づきます(公式サイトは自動取得が遮断されるため、Internet Archiveの保存版で内容を確認しました)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。