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Furukawa Electric|光通信・フォトニクス 企業解説

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COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス

古河電気工業
― 光ファイバからレーザチップ、LN変調器まで。買収で「光の部品箱」を広げる老舗

古河電気工業(古河電工)は、光ファイバ・ケーブルだけでなく、データセンタ向けのDFBレーザチップ、ラマン増幅器用の励起光源、CPO用の外部光源まで自社で作る、日本では珍しい総合型の光部品メーカーです。 2025年には多心光コネクタ部品の白山と、富士通の子会社だった富士通オプティカルコンポーネンツ(LN変調器)を相次いで子会社化しました。 2026年度からは事業区分を組み替え、「光ソリューション」「情報コンポーネント」という2つのセグメントでデータセンタ関連を前面に出しています。 本稿では電力・自動車部品などの事業は最小限にとどめ、光通信に何を投じ、誰と組み、どこへ向かっているかに絞ります。

構成:古河電気工業株式会社 2026年3月期 有価証券報告書(2026年6月24日提出)、2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月6日)、経営方針説明会資料(2026年5月19日)、事業説明会資料(2026年6月5日)、適時開示と公式ニュースリリースを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかる古河電工と、光通信・フォトニクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(全社は簡潔に)
  5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
  9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかる古河電工と、光通信・フォトニクスでの立ち位置

正式名称古河電気工業株式会社英文名 Furukawa Electric Co., Ltd.
本社東京都千代田区大手町大手町二丁目6番4号
上場東証プライム 58011896年に横浜電線製造として設立
この分野での区分光部品・光モジュール
(ファイバからレーザまで)
光ファイバ・ケーブルと光半導体の両方を持つ
情報通信ソリューション事業の売上高2,276億円2026年3月期・外部顧客向け。前期比38.6%増
光ソリューション(新区分)四半期売上600億円2026年4〜6月。営業利益92億円
最近の買収白山(67%)
富士通オプティカルコンポーネンツ
2025年1月・4月に子会社化
主な光の領域DC内・DCI・長距離
海底用ファイバ
CPO用外部光源・PIC接続用コネクタも開発
まず押さえるべき1点

光通信に関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 古河電工は光部品の側ですが、その中でも守備範囲が非常に広いのが特徴です 事実。 有価証券報告書は旧「インフラ」セグメントの製品として「光ファイバ、光ファイバケーブル、光接続製品、光半導体デバイス、光ファイバ融着接続機、光送受信機、ネットワーク機器」などを挙げています。 つまり同じ会社の中に、光を運ぶ配線(ファイバ・ケーブル・コネクタ)と、光を出す・増幅する・変調する部品(レーザチップ・励起光源・LN変調器)の両方があります。 電線メーカーとして並べられることの多いフジクラや住友電工と比べても、2025年に富士通系のLN変調器事業を取り込んだことで、「光を出す・変える」側の比重が高い会社になっています。

2. ロゴと社名の表記について

古河電工のロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトから取得した画像を img/furukawa_electric_logo.svg として設置しています。

表記の注意:法人名は「古河電気工業株式会社」、英文では Furukawa Electric Co., Ltd.、略称は「古河電工」です。 光ファイバ・ケーブル事業は2025年4月から Lightera(ライテラ) というブランドで運営されており、日本のライテラジャパン、米国のLightera, LLC(旧OFS)、ブラジルのLightera LatAmの3社から成ります。 また、2025年4月に取得した旧・富士通オプティカルコンポーネンツは、現在「古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ(FFOC)」という社名です。富士通とは別会社になっている点に注意してください。

公式サイト:https://www.furukawaelectric.com/

3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか

光通信・フォトニクスに関わる企業の3つの類型 同じ「光通信の会社」でも、どこで光を扱うかがまったく違う 光部品・光モジュール 半導体・ファウンドリ 通信装置・通信事業者 光を出す・送る・受ける部品を売る 電気と光をつなぐチップを作る 光でネットワークを作り運用する Lumentum/Coherent InnoLight/Ayar Labs ほか NVIDIA/Broadcom TSMC/Intel ほか NTT/Ciena Nokia/Cisco ほか レーザと光実装の量産力 スイッチ・GPUの出口を持つ 長距離伝送と網の運用知見 大口顧客への依存が大きい 光部品は外部に頼りがち データセンター内は変化が速い 古河電工はこの左端にいて、光ファイバ・ケーブルとレーザチップ・変調器の両方を持つ データセンタ内の光源(DFBレーザ)から、DCIのケーブル、長距離用の励起光源・LN変調器までを手がける
図1 光通信・フォトニクスに関わる企業の3類型と、古河電工の位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。古河電工の区分は、2026年3月期有価証券報告書のセグメント製品一覧と、2026年6月の事業説明会資料(ファイテル製品・光電融合デバイスの製品紹介)に基づきます。

光のどの領域に関わるかを整理すると、データセンタ内(DFBレーザチップ、CPO用外部光源、MTフェルール、プリコンケーブル)、 データセンタ間(DCI)(ローラブルリボンケーブル、SOA、コヒーレント用の波長可変光源)、 長距離・海底(ラマン増幅器用励起光源、LN変調器、海底用光ファイバ)のすべてにまたがっています 事実。 本シリーズの技術解説『半導体レーザ』『光トランシーバー』『Co-packaged Optics』で扱う部品の多くを、1社で持っていることになります。

4. 会社の規模(全社は簡潔に)

全社の規模は表1つにとどめます 事実。

指標(百万円)2024年3月期2025年3月期2026年3月期
連結売上高1,056,5281,201,7621,307,560
連結営業利益―47,03263,856
連結研究開発費――28,423
連結従業員数(人、2026年3月31日)――49,112

光通信の数字は、2026年3月期までは「インフラ」セグメントの中の情報通信ソリューション事業として開示されていました。 2026年度からは区分が変わり、光ファイバ・ケーブル(Lightera)とブロードバンド・ネットワークが光ソリューション、 レーザチップなどのファイテル製品と光電融合デバイスが情報コンポーネント(放熱製品・銅箔などと同じセグメント)に入りました 事実。

光通信に関わる数字(百万円)2025年3月期2026年3月期
情報通信ソリューション事業 外部顧客への売上高(前期は組替後)164,269227,597
インフラセグメント 利益(情報通信とエネルギーの合計)5,70021,439
インフラセグメント 研究開発費―15,808
インフラセグメント 設備投資―25,432
インフラセグメント 従業員数(人)―9,319
新セグメント(2026年4〜6月)売上高営業利益前年同期比
光ソリューション600億円92億円売上45.6%増、営業利益は99億円改善
情報コンポーネント(光以外も含む)596億円74億円売上32.8%増、営業利益105.2%増
ここで注意

2026年3月期の情報通信ソリューション事業の利益は単独で開示されていません。 インフラセグメントの利益214億円には電力ケーブルなどのエネルギーインフラ事業も含まれます 未確定/将来。 研究開発費・設備投資・従業員数も同様にインフラ全体の数字です。 また新区分の情報コンポーネントには、光とは関係のない放熱・冷却製品、半導体製造用テープ、銅箔なども含まれるので、 「光の利益」と読み替えることはできません。 情報通信ソリューション事業の売上高は連結売上高の17.4%にとどまります 本稿の計算。

5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人(専任組織・人員)国内にフォトニクス研究所、米国にLightera Laboratories, LLC。事業側は2026年度から光ソリューション領域とファイテル製品事業部門・光電融合デバイス事業部門を置く。インフラセグメントの従業員は9,319人(光だけの人数は非開示)事実
金(研究開発費)インフラセグメントの研究開発費158億800万円(2026年3月期)。連結研究開発費284億円の55.6%(割合は本稿の計算)。光だけの金額は非開示事実
金(設備投資の決定)光ファイバ・ローラブルリボンケーブル約1,000億円(米・ブラジル・日本・インド、2026年8月決定)/DFBレーザチップ380億円(岩手新工場とタイ、2025年12月決定)/白山のTMTフェルール新工場約50億円(2026年6月決定)事実
買収白山の株式約67%を取得(2025年1月30日、取得価額36億300万円)。富士通オプティカルコンポーネンツの全株式を富士通から取得(2025年4月1日、取得価額59億5,900万円)事実
合弁・出資インドのBirla Furukawa Fibre Optics(Universal Cables Limitedとの合弁、持分法適用会社)で光ファイバ投資を計画(UCLとの協議成立が条件)事実
公的資金(NEDO)「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」で、NTT・NTTイノベーティブデバイス・NTTデバイスクロステクノロジ・新光電気工業と光チップレット実装技術を共同受託(2024年1月、2028年度までの5年間)。CPO用12心コネクタはこの成果の一部事実
公的資金(NICT)Beyond 5G(6G)基金事業で1.6Tbps級プラガブルコヒーレントトランシーバ向けの波長可変レーザアセンブリと光増幅器の実装技術を担当(2025年7月採択、2028年度まで)。別のNICT委託研究で香川大学・KDDI総合研究所・NEC・santecと1,000km級の空間多重光ネットワークを実証事実
大学との連携上記NICT委託研究の代表研究者は香川大学。光通信を対象とする大学との個別の共同研究契約は、今回確認した一次資料には見当たらない一部確認できず

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1896年6月横浜電線製造株式会社として設立(1920年に現商号)電線メーカーとしての出発点
2000年DFBレーザダイオードチップの製造を開始(2025年12月のリリースによる)光半導体の蓄積はこの頃から
2001年11月米国Lucent Technologiesの光ファイバ・ケーブル部門を買収(のちのOFS、現Lightera, LLC)米国の光ファイバ拠点を獲得
2024年1月NEDOポスト5G事業の光チップレット実装技術をNTTグループらと共同受託光電融合で国の事業に参加
2024年3月OIFのELSFP仕様に基づくCPO用16チャンネル外部光源を開発(全チャンネル100mW以上、55℃)。会社は「世界初」と表現2024年4月以降サンプル出荷、2025年度以降の量産予定と発表
2025年1月白山を子会社化(約67%)MTフェルールを中核とする多心光コネクタ部品を獲得
2025年3月CPO向け小型12心光コネクタを開発(接続損失0.5dB以下、260℃リフロー対応)。NICT委託研究で1,000km級の空間多重光ネットワーク実証CPOの「光の出入口」に部品で関わる
2025年4月光ファイバ・ケーブル事業をLighteraブランドに統合。富士通オプティカルコンポーネンツを子会社化し、FFOCへ改称LN変調器・光トランシーバが加わる
2025年7月NICT Beyond 5G基金事業(1.6Tbps級コヒーレントトランシーバ)に採択DCI向けコヒーレントの国家プロジェクト
2025年12月DFBレーザチップに総額380億円の増産投資を決定。岩手(ジャパンセミコンダクター事業所内)に新工場、タイ工場にも設備2028年に生産能力を2025年度比5倍以上へ
2026年2月三重事業所に超多心ケーブル専用の第2工場が本格稼働。白山がUS Conec・三和テクノロジーズとMMC/TMTフェルールのマルチソース化契約超多心ケーブルの能力は2023年度比2倍以上
2026年3月Lighteraが13,824心の超多心光ファイバケーブルを量産開始(直径200μmのファイバ16本を間欠接着したリボン、外径40mm以下)会社は「世界最高クラス」と表現
2026年6月白山の石川第二工場(TMTフェルール、約50億円)の新設を決定2028年4月頃の量産開始を目指す
2026年8月光ファイバ・ローラブルリボンケーブルに約1,000億円の増産投資を決定。顧客の購入コミットメントを確認済みと開示ケーブル能力を2025年度末比おおむね2倍へ
2026年9月Lighteraが海底用光ファイバの生産能力をデンマークと米国で増強し、2029年度までに約3倍にすると発表海底ケーブル需要への対応

7. 今後の計画

全社の2030年度到達水準営業利益2,500億円うちデータセンタ関連事業で2,000億円
2026〜2030年度の投資6,500億円うち注力分野5,000億円
Lighteraの利益2030年度に4倍2025年度比。DC向け売上比率を37%→60%超へ
ファイテル製品の利益2030年度に10倍2025年度比。DFB・ELS・SOA・励起光源

経営方針説明会資料は、データセンタ関連事業を「Lightera、サーマル、ファイテル、AT(半導体製造用テープ)、MD(メモリーディスク)、銅箔、光電融合デバイス」と定義し、 2030年度に営業利益2,000億円をこの事業群で稼ぐ想定を示しています 事実。 このうち光に関わるのはLightera・ファイテル・光電融合デバイスで、残りは放熱・材料系です。 光電融合デバイス事業部門は、2030年に向けて薄膜LN変調器や1.6Tトランシーバを開発・拡販し、次世代の光電融合デバイスの事業化を目指すとしています。

決定済みの光関連投資金額量産・稼働の予定能力
光ファイバ・ローラブルリボンケーブル約1,000億円2028年度下期から順次ケーブル製造能力を2025年度末比おおむね2倍
DFBレーザチップ380億円岩手工場 2028年4月量産開始2028年に2025年度比5倍以上
TMTフェルール(白山)約50億円2028年4月頃現行設備台数の約1.5倍以上
海底用光ファイバ(Lightera)非公表2029年度まで現在の約3倍
確認できなかったこと

次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。

光ソリューション・ファイテル製品・光電融合デバイスそれぞれの2030年度の売上高・利益の金額(説明会資料は倍率と推移グラフのみ)/ CPO用外部光源の量産開始の実績と顧客名(2024年3月の発表では「2025年度以降に量産開始予定」)/ DFBレーザチップの出荷数量/FFOCが持つLN変調器の売上規模(取得前の2024年3月期で売上高136億円・営業損失102億円という開示のみ)。 白山の「MTフェルール世界シェア第2位」、FOCの「世界トップレベルのシェア」はいずれも会社の説明で、出所となる市場データが示されていないため、本稿では数値として扱いません。

8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
データセンタの光を「配線」と「光源」の両方で押さえるローラブルリボンケーブル約1,000億円とDFBレーザチップ380億円の増産投資を、半年のうちに相次いで決定している推測
CPOでは外部光源と光の出入口(コネクタ)を取りに行くELSFP準拠の16チャンネル外部光源、PIC接続用の小型コネクタ(Snap-Beam Connector™)、偏波保持ファイバを「伸ばしていく製品群」に挙げている推測
買収で足りない部品を埋める方針白山(MTフェルール)とFOC(LN変調器・受信器・トランシーバ)を2025年に相次いで取得。有価証券報告書は「シナジーの発揮による成長市場における当社の優位性を確立」と書く推測
LN変調器の事業は立て直しの途中FOCは取得前の2024年3月期に売上高136億円・営業損失102億円。2027年4月にFFOCを本体へ吸収合併し「意思決定の迅速化」を図ると開示推測
日本の光電融合プロジェクトで光源の担い手になるNEDOポスト5G事業で、NTTグループと組み「光と電子の融合を実現するための光半導体デバイス」を担当事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

2025年12月のDFBレーザチップ増産のリリースは、背景として「強度変調方式の光トランシーバが広く用いられ、近年ではシリコンフォトニクス技術が注目されている」と書き、 DFBレーザチップが「CPO用の外部光源であるELSFPにも採用される見込み」と続けています 事実。 シリコンフォトニクスのチップは自分では光を出せないので、外から連続光を入れる光源が必要です。 つまりシリコンフォトニクスやCPOが普及するほど、変調はシリコンが担い、光を出す役は化合物半導体のレーザが担うという分業が進みます。 古河電工は自らシリコンフォトニクスのチップを作るのではなく、その分業の「光を出す側」に大きく賭けた、というのが本稿の読みです 未確定/将来。この構図は本シリーズの技術解説『シリコンフォトニクス』『半導体レーザ』で扱っています。

9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング

古河電工を中心とした光通信分野の提携関係 有価証券報告書・適時開示・公式リリースに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 共同開発・提携 公的資金の研究開発 買収・合弁(点線) 製造協力 古河電工 光部品 富士通 FOCを譲受(2025年4月) NTT・NTTイノベーティブデバイス NEDO光チップレット実装(2024年〜) 白山(約67%) MTフェルール 2025年1月に子会社化 NICT基金・委託研究 1.6T級コヒーレント 香川大学・NEC・santecほか US Conec・三和テクノロジーズ MMC/TMTのマルチソース(白山) ジャパンセミコンダクター DFBチップ新工場の建屋を借用 Nokia ― PON製品の販売提携
図2 古河電工を中心とした光通信分野の提携関係。出典:2026年3月期 有価証券報告書、適時開示(2024年12月12日)、公式リリース(2024年1月30日・2024年11月7日・2025年6月2日・2025年7月9日・2025年12月17日)、お知らせ(2026年2月18日)、NEC・santec・古河電工の共同発表(2025年3月28日)。富士通との関係は子会社の譲受で、取得後も「富士通と引き続き連携」と開示されています。インドのBirla Furukawa Fibre Optics(合弁・持分法適用会社)は図の簡略化のため省略しました。光ファイバケーブルやレーザチップの顧客名は開示されていないため、図に含めていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

製品一次資料での記述段階
ローラブルリボンケーブル間欠接着型テープ心線(ローラブルリボン)を使う超多心ケーブル。13,824心は直径200μmの細径ファイバ16本のリボンで外径40mm以下、屋外・屋内兼用、VSFFコネクタ対応量産(2026年3月〜)
MTフェルール・TMTフェルール白山が製造。TMTフェルールは12心・16心に対応し、MMCコネクタ向け。CPOなど装置内部の配線にも使われると説明MTは量産、TMTは2028年頃に新工場で量産予定
DFBレーザチップ2000年から製造。「業界最高水準」とする100mWの高出力品を光トランシーバメーカ等に納入。800G/1.6T向けを開発・拡販量産
CPO用外部光源(ELS)OIFのELSFP IAに準拠した16チャンネル品。8チャンネルTOSA(22.5×13.0×3.3mm)を2台搭載し、25〜55℃で全チャンネル100mW以上、偏波消光比20dB以上2024年4月以降サンプル。量産実績は非開示
CPO用光コネクタ12心品は接続部面積がMPO比1/6、接続損失0.5dB以下、260℃リフロー対応、レンズ結合。PICとファイバを接続するSnap-Beam Connector™も開発し、40チャンネル品などで低損失を確認して顧客評価中開発・評価段階
SOA・ラマン増幅器用励起光源データセンタ間の長距離化・高速化に使う増幅系の光源。事業説明会で増産投資の対象と説明量産
LN変調器・光トランシーバ旧FOCの製品。光電融合デバイス事業部門が薄膜LN変調器、CDM、Nano ITLA、コヒーレントトランシーバを扱う既存品は量産、薄膜LN・1.6Tは開発中
次世代ファイバマルチコアファイバ、空孔コア(ホローコア)ファイバ、海底用ファイバ。海底用2コアファイバをプレ量産スケールで試作海底用は量産、MCF・HCFは開発・実証

「世界初」(CPO用16チャンネル外部光源、1,000km級空間多重ネットワーク)、「世界最高クラス」(13,824心ケーブル)、「業界最高水準」(100mW DFB)は、いずれも会社自身の表現です。 ELSFPはOIF(Optical Internetworking Forum)が2023年8月に発行した実装協定(IA)で、古河電工はその仕様に基づいて開発したと説明しています 事実。

素材技術者の視点:CPOのコネクタが「260℃」に耐える意味

2025年3月に発表したCPO用12心コネクタは、260℃のリフローに耐えることを特長に挙げています 事実。 CPOでは光のコネクタが、スイッチASICやGPUと同じ基板の上に載ります。基板に部品をはんだ付けするリフロー工程では全体が260℃前後まで加熱されるため、 従来の光コネクタのように樹脂のフェルールや接着剤で光ファイバを固定する構造は、そのままでは使えません。 熱で樹脂が変形したり接着剤が劣化したりすると、ミクロン単位の位置合わせが崩れて光が通らなくなるからです。 古河電工がレンズ結合方式を採ったのは、ダストに強いという理由に加え、位置ずれの許容幅を広げて熱変形の影響を小さくする意味もあると読めます 未確定/将来。

言い換えると、CPOの普及を左右するのは光のチップだけではなく、はんだ付けの熱に耐える光学樹脂・接着剤・フェルール材料です。 同社がCPO向けにコネクタ・外部光源・偏波保持ファイバを並べているのは、この「電子実装の温度に光部品を合わせる」課題を部材ごとに解いている、と見ることができます。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
光の収益力が見えにくい2026年3月期まで情報通信ソリューション事業の利益は単独開示されておらず、新区分の情報コンポーネントも光以外を多く含む事実
大型投資が同時期に集中光ファイバ・ケーブル約1,000億円、DFB 380億円、放熱製品などの投資が2028年前後の立ち上げに集中する。会社自身も2026・2027年度は資金調達が一時的に拡大すると書いている事実
買収事業の立て直しFOCは取得前の2024年3月期に営業損失102億円。LN変調器事業が黒字化するかは未開示未確定/将来
地域ごとの不振事業説明会資料は、中南米(為替・金利上昇、顧客の投資抑制)と欧州(市場回復の遅れ、価格競争)で「構造的課題が継続」と書いている事実
データセンタ需要の変動2030年度の営業利益2,500億円のうち2,000億円をデータセンタ関連に依存する計画。データセンタ投資が減速すると計画全体が崩れる推測
CPOの立ち上がり時期外部光源は2024年に「2025年度以降の量産予定」と発表したが、量産実績は開示されていない。CPOの普及時期が後ずれすれば光源投資の回収も遅れる推測
人材の不足有価証券報告書は、注力領域(データセンタ関連等)での専門人材の不足による案件獲得機会の逸失をリスクに挙げている事実

12. 用語集

DFBレーザ
Distributed Feedback(分布帰還型)レーザ。単一の波長で安定して発振する半導体レーザ。光トランシーバの光源に使う。
ELS/ELSFP
External Light Source。CPOで光チップの外に置く光源。ELSFPはそのプラガブル形状の仕様で、OIFが定めた。
LN変調器
ニオブ酸リチウム(LiNbO₃)の電気光学効果を使って光を高速に変調する部品。長距離・コヒーレント通信で使われる。
ローラブルリボン
光ファイバを間欠的に接着したテープ心線。丸めて細いケーブルに詰められ、一括融着もできる。
MT/TMTフェルール
多心の光ファイバを一括で位置決めする精密部品。TMTはMMCコネクタ用の小型版。
SOA
Semiconductor Optical Amplifier。電流で光を増幅する半導体の光増幅器。
ラマン増幅
強い励起光を伝送用ファイバに入れ、ファイバ自体で信号光を増幅する方式。長距離伝送で使う。
空間多重(SDM)
マルチコアファイバなどで、光の通り道を物理的に増やして容量を増やす方式。
概念図:1つの会社の中に、光ファイバケーブル、小さなレーザチップ、光変調器、多心コネクタが部品箱のように並んでいる様子
図3 古河電工の光部品の広がりを示す概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. 古河電気工業株式会社 有価証券報告書 第204期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月24日提出)。沿革、経営方針、事業等のリスク、セグメント業績、研究開発活動、設備投資、従業員数、企業結合(白山・FOC)、重要な契約(FFOCの吸収合併)、セグメント情報。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
  2. 古河電気工業株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月6日)。新セグメント(光ソリューション・情報コンポーネント)の売上高・営業利益。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/finalreport/pdf/2027/20260806.pdf
  3. 古河電気工業株式会社 経営方針説明会資料(2026年5月19日)。2030年度の財務到達水準、データセンタ関連事業の定義と営業利益2,000億円、新セグメントへの再編、事業別の想定利益成長。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/mid_briefing/pdf/2026/20260519_management_pre.pdf
  4. 古河電気工業株式会社 事業説明会資料 光ソリューション領域(2026年6月5日)。Lighteraの2030ビジョン、DC向け売上比率、地域別の課題。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_optosol.pdf
  5. 古河電気工業株式会社 事業説明会資料 情報コンポーネント領域(2026年6月5日)。ファイテル製品・光電融合デバイス事業の方針、投資総額と利益拡大目標、製品紹介。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_digicomp.pdf
  6. 古河電気工業株式会社 適時開示「光ファイバおよび光ファイバケーブルの生産に係る固定資産の取得に関するお知らせ」(2026年8月4日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/kei_20260804.pdf
  7. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「信号光源用高出力DFBレーザダイオードチップの製造工場を新設」(2025年12月17日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20251217.html
  8. 古河電気工業株式会社 適時開示「子会社等の異動を伴う株式取得に関するお知らせ」(2024年12月12日)。富士通オプティカルコンポーネンツの取得理由と直近3年の業績。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241212.pdf
  9. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「株式会社白山の株式を取得」(2024年11月7日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241107.html
  10. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「白山 VSFF多心光コネクタに対応するTMTフェルールの量産に向け工場新設」(2026年6月2日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/opt_20260602.html
  11. 古河電気工業株式会社 お知らせ「株式会社白山 三和テクノロジーズ株式会社・US Conec社と超小型フォームファクタと関連部品のマルチソース化等に関する契約を締結」(2026年2月18日)。 https://www.furukawaelectric.com/news/2026/update_20260218.html
  12. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「世界最高クラスとなる13824心の超多心光ファイバケーブルを量産開始」(2026年3月12日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/comm_20260312.html
  13. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「光ファイバ・ケーブル事業の運営体制を刷新、4月1日より新ブランド『Lightera』が始動」(2025年3月6日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250306.html
  14. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「世界初CPO用100mW光出力×16チャンネルブラインドメイト型外部光源を開発」(2024年3月27日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/comm_20240327.html
  15. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「CPOに適した小型多心光コネクタを開発」(2025年3月27日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250327.html
  16. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「NEDO『ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発』プロジェクトに採択」(2024年1月30日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/comm_20240130.html
  17. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「NICT『革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業』令和7年度社会実装・海外展開志向型戦略的プログラムに採択」(2025年7月9日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250709.html
  18. NEC・santec AOC・古河電気工業 共同発表「空間クロスコネクト装置とマルチコアファイバ光増幅器からなる大規模な空間多重光ネットワークの実証実験に初めて成功」(2025年3月28日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/kenkai_20250328.html
  19. 古河電気工業株式会社 お知らせ「ライテラ 海底用光ファイバの生産能力を増強」(2026年9月25日)。 https://www.furukawaelectric.com/news/2026/update_20260925.html
  20. 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「古河電工とノキア 超高速ブロードバンド技術で提携」(2025年6月2日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250602.html
  21. 古河電気工業株式会社 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.furukawaelectric.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、英文名、本社所在地、1896年設立、2001年のLucent光ファイバ部門買収事実出典1 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
連結売上高・営業利益・研究開発費・従業員数事実出典1 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
情報通信ソリューション事業の外部売上高、インフラセグメントの利益・研究開発費・設備投資・従業員数事実出典1 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
白山・FOCの取得日と取得価額、FFOCの2027年4月の吸収合併、フォトニクス研究所等の研究体制事実出典1 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
CPO向けSnap-Beam Connector™(40チャンネル品などで低損失を確認)、海底用2コアファイバ、人材不足のリスク記載事実出典1 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
新セグメントの2026年4〜6月の売上高・営業利益事実出典2 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/finalreport/pdf/2027/20260806.pdf
2030年度営業利益2,500億円・データセンタ関連2,000億円、投資6,500億円、新セグメントへの再編、Lightera 4倍・ファイテル10倍事実出典3 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/mid_briefing/pdf/2026/20260519_management_pre.pdf
LighteraのDC向け売上比率(37%→60%超)、中南米・欧州の構造的課題事実出典4 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_optosol.pdf
ファイテル製品の投資380億円・利益10倍、光電融合デバイス事業の製品と方針事実出典5 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_digicomp.pdf
光ファイバ・ケーブル約1,000億円、4か国、2028年度下期から、能力おおむね2倍、購入コミットメント、BFFOの位置づけ事実出典6 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/kei_20260804.pdf
DFBレーザチップ380億円、岩手新工場(2028年4月量産)、タイ、5倍以上、2000年からの製造、ELSFP採用見込み事実出典7 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20251217.html
FOCの事業内容、取得理由、2024年3月期の売上高136億円・営業損失102億円、富士通との連携継続事実出典8 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241212.pdf
白山株式約67%の取得事実出典9 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241107.html
白山の石川第二工場(約50億円、2028年4月頃、約1.5倍以上)事実出典10 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/opt_20260602.html
白山・三和テクノロジーズ・US ConecのMMC/TMTマルチソース契約、12心・16心TMT事実出典11 https://www.furukawaelectric.com/news/2026/update_20260218.html
13,824心ケーブルの量産開始と仕様、三重第2工場、能力2023年度比2倍以上事実出典12 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/comm_20260312.html
Lighteraの構成(ライテラジャパン・Lightera, LLC・Lightera LatAm)と2025年4月の始動事実出典13 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250306.html
CPO用16チャンネル外部光源の仕様とサンプル・量産予定事実出典14 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/comm_20240327.html
CPO用12心コネクタの仕様(1/6、0.5dB以下、260℃リフロー、レンズ結合)とNEDO成果であること事実出典15 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250327.html
NEDOポスト5G事業の共同受託先と担当、実施期間事実出典16 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/comm_20240130.html
NICT Beyond 5G基金事業の採択と担当範囲、期間事実出典17 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250709.html
1,000km級の空間多重光ネットワーク実証と研究体制(香川大学・KDDI総合研究所・NEC・santec)事実出典18 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/kenkai_20250328.html
海底用光ファイバの能力を2029年度までに約3倍事実出典19 https://www.furukawaelectric.com/news/2026/update_20260925.html
ノキアとのPON製品の国内における戦略的販売提携事実出典20 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250602.html
前期比38.6%増、連結売上高の17.4%、研究開発費の55.6%本稿の計算出典1の数値を本稿が割り算したもの
光通信企業の3類型の区分本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの企業から例示
情報通信ソリューション事業単独の利益、光だけの研究開発費・人員未確定/将来出典1に記載なし。本稿では推計しない https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
事業別の2030年度の金額目標、CPO用外部光源の量産実績と顧客名、DFB出荷数量、LN変調器の売上規模未確定/将来出典3〜5・14に記載なし。報道ベースの数値は採用しない https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_digicomp.pdf
白山・FOCの市場シェアに関する会社の説明未確定/将来出所の市場データが示されていないため数値としては採用しない https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241107.html
「配線」と「光源」の両方で押さえるという読み、CPOで外部光源と出入口を取るという読み推測出典3・6・7・14・15からの本稿の解釈
買収で足りない部品を埋める方針、LN変調器事業が立て直し途中という読み推測出典1・8からの本稿の解釈
シリコンフォトニクスの分業の「光を出す側」に賭けたという読み推測出典7の記述からの本稿の解釈
レンズ結合が熱変形の許容幅を広げるという説明未確定/将来一般的な光実装の知見に基づく本稿の解説。会社はこの理由を説明していない
データセンタ需要変動・CPO立ち上がり時期のリスク推測出典3・14からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべて古河電気工業株式会社が公表した有価証券報告書・決算短信・説明会資料・適時開示・ニュースリリース、およびNEC・santecとの共同発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。