COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス
古河電気工業
― 光ファイバからレーザチップ、LN変調器まで。買収で「光の部品箱」を広げる老舗
古河電気工業(古河電工)は、光ファイバ・ケーブルだけでなく、データセンタ向けのDFBレーザチップ、ラマン増幅器用の励起光源、CPO用の外部光源まで自社で作る、日本では珍しい総合型の光部品メーカーです。 2025年には多心光コネクタ部品の白山と、富士通の子会社だった富士通オプティカルコンポーネンツ(LN変調器)を相次いで子会社化しました。 2026年度からは事業区分を組み替え、「光ソリューション」「情報コンポーネント」という2つのセグメントでデータセンタ関連を前面に出しています。 本稿では電力・自動車部品などの事業は最小限にとどめ、光通信に何を投じ、誰と組み、どこへ向かっているかに絞ります。
- 30秒でわかる古河電工と、光通信・フォトニクスでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(全社は簡潔に)
- 光通信・フォトニクスにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
- 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる古河電工と、光通信・フォトニクスでの立ち位置
(ファイバからレーザまで)光ファイバ・ケーブルと光半導体の両方を持つ
富士通オプティカルコンポーネンツ2025年1月・4月に子会社化
海底用ファイバCPO用外部光源・PIC接続用コネクタも開発
光通信に関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 古河電工は光部品の側ですが、その中でも守備範囲が非常に広いのが特徴です 事実。 有価証券報告書は旧「インフラ」セグメントの製品として「光ファイバ、光ファイバケーブル、光接続製品、光半導体デバイス、光ファイバ融着接続機、光送受信機、ネットワーク機器」などを挙げています。 つまり同じ会社の中に、光を運ぶ配線(ファイバ・ケーブル・コネクタ)と、光を出す・増幅する・変調する部品(レーザチップ・励起光源・LN変調器)の両方があります。 電線メーカーとして並べられることの多いフジクラや住友電工と比べても、2025年に富士通系のLN変調器事業を取り込んだことで、「光を出す・変える」側の比重が高い会社になっています。
2. ロゴと社名の表記について

古河電工のロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
公式サイトから取得した画像を img/furukawa_electric_logo.svg として設置しています。
表記の注意:法人名は「古河電気工業株式会社」、英文では Furukawa Electric Co., Ltd.、略称は「古河電工」です。 光ファイバ・ケーブル事業は2025年4月から Lightera(ライテラ) というブランドで運営されており、日本のライテラジャパン、米国のLightera, LLC(旧OFS)、ブラジルのLightera LatAmの3社から成ります。 また、2025年4月に取得した旧・富士通オプティカルコンポーネンツは、現在「古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ(FFOC)」という社名です。富士通とは別会社になっている点に注意してください。
公式サイト:https://www.furukawaelectric.com/3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
光のどの領域に関わるかを整理すると、データセンタ内(DFBレーザチップ、CPO用外部光源、MTフェルール、プリコンケーブル)、 データセンタ間(DCI)(ローラブルリボンケーブル、SOA、コヒーレント用の波長可変光源)、 長距離・海底(ラマン増幅器用励起光源、LN変調器、海底用光ファイバ)のすべてにまたがっています 事実。 本シリーズの技術解説『半導体レーザ』『光トランシーバー』『Co-packaged Optics』で扱う部品の多くを、1社で持っていることになります。
4. 会社の規模(全社は簡潔に)
全社の規模は表1つにとどめます 事実。
| 指標(百万円) | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 連結売上高 | 1,056,528 | 1,201,762 | 1,307,560 |
| 連結営業利益 | ― | 47,032 | 63,856 |
| 連結研究開発費 | ― | ― | 28,423 |
| 連結従業員数(人、2026年3月31日) | ― | ― | 49,112 |
光通信の数字は、2026年3月期までは「インフラ」セグメントの中の情報通信ソリューション事業として開示されていました。 2026年度からは区分が変わり、光ファイバ・ケーブル(Lightera)とブロードバンド・ネットワークが光ソリューション、 レーザチップなどのファイテル製品と光電融合デバイスが情報コンポーネント(放熱製品・銅箔などと同じセグメント)に入りました 事実。
| 光通信に関わる数字(百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 情報通信ソリューション事業 外部顧客への売上高(前期は組替後) | 164,269 | 227,597 |
| インフラセグメント 利益(情報通信とエネルギーの合計) | 5,700 | 21,439 |
| インフラセグメント 研究開発費 | ― | 15,808 |
| インフラセグメント 設備投資 | ― | 25,432 |
| インフラセグメント 従業員数(人) | ― | 9,319 |
| 新セグメント(2026年4〜6月) | 売上高 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 光ソリューション | 600億円 | 92億円 | 売上45.6%増、営業利益は99億円改善 |
| 情報コンポーネント(光以外も含む) | 596億円 | 74億円 | 売上32.8%増、営業利益105.2%増 |
2026年3月期の情報通信ソリューション事業の利益は単独で開示されていません。 インフラセグメントの利益214億円には電力ケーブルなどのエネルギーインフラ事業も含まれます 未確定/将来。 研究開発費・設備投資・従業員数も同様にインフラ全体の数字です。 また新区分の情報コンポーネントには、光とは関係のない放熱・冷却製品、半導体製造用テープ、銅箔なども含まれるので、 「光の利益」と読み替えることはできません。 情報通信ソリューション事業の売上高は連結売上高の17.4%にとどまります 本稿の計算。
5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(専任組織・人員) | 国内にフォトニクス研究所、米国にLightera Laboratories, LLC。事業側は2026年度から光ソリューション領域とファイテル製品事業部門・光電融合デバイス事業部門を置く。インフラセグメントの従業員は9,319人(光だけの人数は非開示) | 事実 |
| 金(研究開発費) | インフラセグメントの研究開発費158億800万円(2026年3月期)。連結研究開発費284億円の55.6%(割合は本稿の計算)。光だけの金額は非開示 | 事実 |
| 金(設備投資の決定) | 光ファイバ・ローラブルリボンケーブル約1,000億円(米・ブラジル・日本・インド、2026年8月決定)/DFBレーザチップ380億円(岩手新工場とタイ、2025年12月決定)/白山のTMTフェルール新工場約50億円(2026年6月決定) | 事実 |
| 買収 | 白山の株式約67%を取得(2025年1月30日、取得価額36億300万円)。富士通オプティカルコンポーネンツの全株式を富士通から取得(2025年4月1日、取得価額59億5,900万円) | 事実 |
| 合弁・出資 | インドのBirla Furukawa Fibre Optics(Universal Cables Limitedとの合弁、持分法適用会社)で光ファイバ投資を計画(UCLとの協議成立が条件) | 事実 |
| 公的資金(NEDO) | 「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」で、NTT・NTTイノベーティブデバイス・NTTデバイスクロステクノロジ・新光電気工業と光チップレット実装技術を共同受託(2024年1月、2028年度までの5年間)。CPO用12心コネクタはこの成果の一部 | 事実 |
| 公的資金(NICT) | Beyond 5G(6G)基金事業で1.6Tbps級プラガブルコヒーレントトランシーバ向けの波長可変レーザアセンブリと光増幅器の実装技術を担当(2025年7月採択、2028年度まで)。別のNICT委託研究で香川大学・KDDI総合研究所・NEC・santecと1,000km級の空間多重光ネットワークを実証 | 事実 |
| 大学との連携 | 上記NICT委託研究の代表研究者は香川大学。光通信を対象とする大学との個別の共同研究契約は、今回確認した一次資料には見当たらない | 一部確認できず |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1896年6月 | 横浜電線製造株式会社として設立(1920年に現商号) | 電線メーカーとしての出発点 |
| 2000年 | DFBレーザダイオードチップの製造を開始(2025年12月のリリースによる) | 光半導体の蓄積はこの頃から |
| 2001年11月 | 米国Lucent Technologiesの光ファイバ・ケーブル部門を買収(のちのOFS、現Lightera, LLC) | 米国の光ファイバ拠点を獲得 |
| 2024年1月 | NEDOポスト5G事業の光チップレット実装技術をNTTグループらと共同受託 | 光電融合で国の事業に参加 |
| 2024年3月 | OIFのELSFP仕様に基づくCPO用16チャンネル外部光源を開発(全チャンネル100mW以上、55℃)。会社は「世界初」と表現 | 2024年4月以降サンプル出荷、2025年度以降の量産予定と発表 |
| 2025年1月 | 白山を子会社化(約67%) | MTフェルールを中核とする多心光コネクタ部品を獲得 |
| 2025年3月 | CPO向け小型12心光コネクタを開発(接続損失0.5dB以下、260℃リフロー対応)。NICT委託研究で1,000km級の空間多重光ネットワーク実証 | CPOの「光の出入口」に部品で関わる |
| 2025年4月 | 光ファイバ・ケーブル事業をLighteraブランドに統合。富士通オプティカルコンポーネンツを子会社化し、FFOCへ改称 | LN変調器・光トランシーバが加わる |
| 2025年7月 | NICT Beyond 5G基金事業(1.6Tbps級コヒーレントトランシーバ)に採択 | DCI向けコヒーレントの国家プロジェクト |
| 2025年12月 | DFBレーザチップに総額380億円の増産投資を決定。岩手(ジャパンセミコンダクター事業所内)に新工場、タイ工場にも設備 | 2028年に生産能力を2025年度比5倍以上へ |
| 2026年2月 | 三重事業所に超多心ケーブル専用の第2工場が本格稼働。白山がUS Conec・三和テクノロジーズとMMC/TMTフェルールのマルチソース化契約 | 超多心ケーブルの能力は2023年度比2倍以上 |
| 2026年3月 | Lighteraが13,824心の超多心光ファイバケーブルを量産開始(直径200μmのファイバ16本を間欠接着したリボン、外径40mm以下) | 会社は「世界最高クラス」と表現 |
| 2026年6月 | 白山の石川第二工場(TMTフェルール、約50億円)の新設を決定 | 2028年4月頃の量産開始を目指す |
| 2026年8月 | 光ファイバ・ローラブルリボンケーブルに約1,000億円の増産投資を決定。顧客の購入コミットメントを確認済みと開示 | ケーブル能力を2025年度末比おおむね2倍へ |
| 2026年9月 | Lighteraが海底用光ファイバの生産能力をデンマークと米国で増強し、2029年度までに約3倍にすると発表 | 海底ケーブル需要への対応 |
7. 今後の計画
経営方針説明会資料は、データセンタ関連事業を「Lightera、サーマル、ファイテル、AT(半導体製造用テープ)、MD(メモリーディスク)、銅箔、光電融合デバイス」と定義し、 2030年度に営業利益2,000億円をこの事業群で稼ぐ想定を示しています 事実。 このうち光に関わるのはLightera・ファイテル・光電融合デバイスで、残りは放熱・材料系です。 光電融合デバイス事業部門は、2030年に向けて薄膜LN変調器や1.6Tトランシーバを開発・拡販し、次世代の光電融合デバイスの事業化を目指すとしています。
| 決定済みの光関連投資 | 金額 | 量産・稼働の予定 | 能力 |
|---|---|---|---|
| 光ファイバ・ローラブルリボンケーブル | 約1,000億円 | 2028年度下期から順次 | ケーブル製造能力を2025年度末比おおむね2倍 |
| DFBレーザチップ | 380億円 | 岩手工場 2028年4月量産開始 | 2028年に2025年度比5倍以上 |
| TMTフェルール(白山) | 約50億円 | 2028年4月頃 | 現行設備台数の約1.5倍以上 |
| 海底用光ファイバ(Lightera) | 非公表 | 2029年度まで | 現在の約3倍 |
次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。
光ソリューション・ファイテル製品・光電融合デバイスそれぞれの2030年度の売上高・利益の金額(説明会資料は倍率と推移グラフのみ)/ CPO用外部光源の量産開始の実績と顧客名(2024年3月の発表では「2025年度以降に量産開始予定」)/ DFBレーザチップの出荷数量/FFOCが持つLN変調器の売上規模(取得前の2024年3月期で売上高136億円・営業損失102億円という開示のみ)。 白山の「MTフェルール世界シェア第2位」、FOCの「世界トップレベルのシェア」はいずれも会社の説明で、出所となる市場データが示されていないため、本稿では数値として扱いません。
8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| データセンタの光を「配線」と「光源」の両方で押さえる | ローラブルリボンケーブル約1,000億円とDFBレーザチップ380億円の増産投資を、半年のうちに相次いで決定している | 推測 |
| CPOでは外部光源と光の出入口(コネクタ)を取りに行く | ELSFP準拠の16チャンネル外部光源、PIC接続用の小型コネクタ(Snap-Beam Connector™)、偏波保持ファイバを「伸ばしていく製品群」に挙げている | 推測 |
| 買収で足りない部品を埋める方針 | 白山(MTフェルール)とFOC(LN変調器・受信器・トランシーバ)を2025年に相次いで取得。有価証券報告書は「シナジーの発揮による成長市場における当社の優位性を確立」と書く | 推測 |
| LN変調器の事業は立て直しの途中 | FOCは取得前の2024年3月期に売上高136億円・営業損失102億円。2027年4月にFFOCを本体へ吸収合併し「意思決定の迅速化」を図ると開示 | 推測 |
| 日本の光電融合プロジェクトで光源の担い手になる | NEDOポスト5G事業で、NTTグループと組み「光と電子の融合を実現するための光半導体デバイス」を担当 | 事実 |
2025年12月のDFBレーザチップ増産のリリースは、背景として「強度変調方式の光トランシーバが広く用いられ、近年ではシリコンフォトニクス技術が注目されている」と書き、 DFBレーザチップが「CPO用の外部光源であるELSFPにも採用される見込み」と続けています 事実。 シリコンフォトニクスのチップは自分では光を出せないので、外から連続光を入れる光源が必要です。 つまりシリコンフォトニクスやCPOが普及するほど、変調はシリコンが担い、光を出す役は化合物半導体のレーザが担うという分業が進みます。 古河電工は自らシリコンフォトニクスのチップを作るのではなく、その分業の「光を出す側」に大きく賭けた、というのが本稿の読みです 未確定/将来。この構図は本シリーズの技術解説『シリコンフォトニクス』『半導体レーザ』で扱っています。
9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 製品 | 一次資料での記述 | 段階 |
|---|---|---|
| ローラブルリボンケーブル | 間欠接着型テープ心線(ローラブルリボン)を使う超多心ケーブル。13,824心は直径200μmの細径ファイバ16本のリボンで外径40mm以下、屋外・屋内兼用、VSFFコネクタ対応 | 量産(2026年3月〜) |
| MTフェルール・TMTフェルール | 白山が製造。TMTフェルールは12心・16心に対応し、MMCコネクタ向け。CPOなど装置内部の配線にも使われると説明 | MTは量産、TMTは2028年頃に新工場で量産予定 |
| DFBレーザチップ | 2000年から製造。「業界最高水準」とする100mWの高出力品を光トランシーバメーカ等に納入。800G/1.6T向けを開発・拡販 | 量産 |
| CPO用外部光源(ELS) | OIFのELSFP IAに準拠した16チャンネル品。8チャンネルTOSA(22.5×13.0×3.3mm)を2台搭載し、25〜55℃で全チャンネル100mW以上、偏波消光比20dB以上 | 2024年4月以降サンプル。量産実績は非開示 |
| CPO用光コネクタ | 12心品は接続部面積がMPO比1/6、接続損失0.5dB以下、260℃リフロー対応、レンズ結合。PICとファイバを接続するSnap-Beam Connector™も開発し、40チャンネル品などで低損失を確認して顧客評価中 | 開発・評価段階 |
| SOA・ラマン増幅器用励起光源 | データセンタ間の長距離化・高速化に使う増幅系の光源。事業説明会で増産投資の対象と説明 | 量産 |
| LN変調器・光トランシーバ | 旧FOCの製品。光電融合デバイス事業部門が薄膜LN変調器、CDM、Nano ITLA、コヒーレントトランシーバを扱う | 既存品は量産、薄膜LN・1.6Tは開発中 |
| 次世代ファイバ | マルチコアファイバ、空孔コア(ホローコア)ファイバ、海底用ファイバ。海底用2コアファイバをプレ量産スケールで試作 | 海底用は量産、MCF・HCFは開発・実証 |
「世界初」(CPO用16チャンネル外部光源、1,000km級空間多重ネットワーク)、「世界最高クラス」(13,824心ケーブル)、「業界最高水準」(100mW DFB)は、いずれも会社自身の表現です。 ELSFPはOIF(Optical Internetworking Forum)が2023年8月に発行した実装協定(IA)で、古河電工はその仕様に基づいて開発したと説明しています 事実。
2025年3月に発表したCPO用12心コネクタは、260℃のリフローに耐えることを特長に挙げています 事実。 CPOでは光のコネクタが、スイッチASICやGPUと同じ基板の上に載ります。基板に部品をはんだ付けするリフロー工程では全体が260℃前後まで加熱されるため、 従来の光コネクタのように樹脂のフェルールや接着剤で光ファイバを固定する構造は、そのままでは使えません。 熱で樹脂が変形したり接着剤が劣化したりすると、ミクロン単位の位置合わせが崩れて光が通らなくなるからです。 古河電工がレンズ結合方式を採ったのは、ダストに強いという理由に加え、位置ずれの許容幅を広げて熱変形の影響を小さくする意味もあると読めます 未確定/将来。
言い換えると、CPOの普及を左右するのは光のチップだけではなく、はんだ付けの熱に耐える光学樹脂・接着剤・フェルール材料です。 同社がCPO向けにコネクタ・外部光源・偏波保持ファイバを並べているのは、この「電子実装の温度に光部品を合わせる」課題を部材ごとに解いている、と見ることができます。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 光の収益力が見えにくい | 2026年3月期まで情報通信ソリューション事業の利益は単独開示されておらず、新区分の情報コンポーネントも光以外を多く含む | 事実 |
| 大型投資が同時期に集中 | 光ファイバ・ケーブル約1,000億円、DFB 380億円、放熱製品などの投資が2028年前後の立ち上げに集中する。会社自身も2026・2027年度は資金調達が一時的に拡大すると書いている | 事実 |
| 買収事業の立て直し | FOCは取得前の2024年3月期に営業損失102億円。LN変調器事業が黒字化するかは未開示 | 未確定/将来 |
| 地域ごとの不振 | 事業説明会資料は、中南米(為替・金利上昇、顧客の投資抑制)と欧州(市場回復の遅れ、価格競争)で「構造的課題が継続」と書いている | 事実 |
| データセンタ需要の変動 | 2030年度の営業利益2,500億円のうち2,000億円をデータセンタ関連に依存する計画。データセンタ投資が減速すると計画全体が崩れる | 推測 |
| CPOの立ち上がり時期 | 外部光源は2024年に「2025年度以降の量産予定」と発表したが、量産実績は開示されていない。CPOの普及時期が後ずれすれば光源投資の回収も遅れる | 推測 |
| 人材の不足 | 有価証券報告書は、注力領域(データセンタ関連等)での専門人材の不足による案件獲得機会の逸失をリスクに挙げている | 事実 |
12. 用語集
- DFBレーザ
- Distributed Feedback(分布帰還型)レーザ。単一の波長で安定して発振する半導体レーザ。光トランシーバの光源に使う。
- ELS/ELSFP
- External Light Source。CPOで光チップの外に置く光源。ELSFPはそのプラガブル形状の仕様で、OIFが定めた。
- LN変調器
- ニオブ酸リチウム(LiNbO₃)の電気光学効果を使って光を高速に変調する部品。長距離・コヒーレント通信で使われる。
- ローラブルリボン
- 光ファイバを間欠的に接着したテープ心線。丸めて細いケーブルに詰められ、一括融着もできる。
- MT/TMTフェルール
- 多心の光ファイバを一括で位置決めする精密部品。TMTはMMCコネクタ用の小型版。
- SOA
- Semiconductor Optical Amplifier。電流で光を増幅する半導体の光増幅器。
- ラマン増幅
- 強い励起光を伝送用ファイバに入れ、ファイバ自体で信号光を増幅する方式。長距離伝送で使う。
- 空間多重(SDM)
- マルチコアファイバなどで、光の通り道を物理的に増やして容量を増やす方式。
13. 出典
- 古河電気工業株式会社 有価証券報告書 第204期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月24日提出)。沿革、経営方針、事業等のリスク、セグメント業績、研究開発活動、設備投資、従業員数、企業結合(白山・FOC)、重要な契約(FFOCの吸収合併)、セグメント情報。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/sr/pdf/204.pdf
- 古河電気工業株式会社 2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月6日)。新セグメント(光ソリューション・情報コンポーネント)の売上高・営業利益。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/finalreport/pdf/2027/20260806.pdf
- 古河電気工業株式会社 経営方針説明会資料(2026年5月19日)。2030年度の財務到達水準、データセンタ関連事業の定義と営業利益2,000億円、新セグメントへの再編、事業別の想定利益成長。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/mid_briefing/pdf/2026/20260519_management_pre.pdf
- 古河電気工業株式会社 事業説明会資料 光ソリューション領域(2026年6月5日)。Lighteraの2030ビジョン、DC向け売上比率、地域別の課題。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_optosol.pdf
- 古河電気工業株式会社 事業説明会資料 情報コンポーネント領域(2026年6月5日)。ファイテル製品・光電融合デバイス事業の方針、投資総額と利益拡大目標、製品紹介。 https://www.furukawaelectric.com/ir/library/briefing/pdf/2026/20260604_digicomp.pdf
- 古河電気工業株式会社 適時開示「光ファイバおよび光ファイバケーブルの生産に係る固定資産の取得に関するお知らせ」(2026年8月4日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/kei_20260804.pdf
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「信号光源用高出力DFBレーザダイオードチップの製造工場を新設」(2025年12月17日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20251217.html
- 古河電気工業株式会社 適時開示「子会社等の異動を伴う株式取得に関するお知らせ」(2024年12月12日)。富士通オプティカルコンポーネンツの取得理由と直近3年の業績。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241212.pdf
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「株式会社白山の株式を取得」(2024年11月7日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/kei_20241107.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「白山 VSFF多心光コネクタに対応するTMTフェルールの量産に向け工場新設」(2026年6月2日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/opt_20260602.html
- 古河電気工業株式会社 お知らせ「株式会社白山 三和テクノロジーズ株式会社・US Conec社と超小型フォームファクタと関連部品のマルチソース化等に関する契約を締結」(2026年2月18日)。 https://www.furukawaelectric.com/news/2026/update_20260218.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「世界最高クラスとなる13824心の超多心光ファイバケーブルを量産開始」(2026年3月12日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2026/comm_20260312.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「光ファイバ・ケーブル事業の運営体制を刷新、4月1日より新ブランド『Lightera』が始動」(2025年3月6日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250306.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「世界初CPO用100mW光出力×16チャンネルブラインドメイト型外部光源を開発」(2024年3月27日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/comm_20240327.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「CPOに適した小型多心光コネクタを開発」(2025年3月27日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250327.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「NEDO『ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発』プロジェクトに採択」(2024年1月30日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2024/comm_20240130.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「NICT『革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業』令和7年度社会実装・海外展開志向型戦略的プログラムに採択」(2025年7月9日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250709.html
- NEC・santec AOC・古河電気工業 共同発表「空間クロスコネクト装置とマルチコアファイバ光増幅器からなる大規模な空間多重光ネットワークの実証実験に初めて成功」(2025年3月28日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/kenkai_20250328.html
- 古河電気工業株式会社 お知らせ「ライテラ 海底用光ファイバの生産能力を増強」(2026年9月25日)。 https://www.furukawaelectric.com/news/2026/update_20260925.html
- 古河電気工業株式会社 ニュースリリース「古河電工とノキア 超高速ブロードバンド技術で提携」(2025年6月2日)。 https://www.furukawaelectric.com/release/2025/comm_20250602.html
- 古河電気工業株式会社 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.furukawaelectric.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべて古河電気工業株式会社が公表した有価証券報告書・決算短信・説明会資料・適時開示・ニュースリリース、およびNEC・santecとの共同発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。