主要成果
国際研究チームは、機械学習によるデータベース解析と過去の文献レビューを組み合わせ、これまで見落とされていたMXene(マキシン)の候補物質を33個特定した。この成果は2026年10月29日に学術誌『Science』に掲載された。チームは得られた知見を活用し、希土類元素を含む11種類の新しい層状化合物を合成することに成功した。既知化合物の再合成を含め、実験的に得られた多層MXeneは合計18種類に達する。
技術・詳細
本研究では、AIが未知の物質をゼロから設計したのではなく、既存の膨大な結晶構造データからMXeneに類似した原子配列を持つ候補を抽出する役割を担った。具体的には、Materials ProjectおよびOpen Quantum Materials Database (OQMD) のデータを対象に、結晶対称性、原子間距離、元素配置などの条件で絞り込みを行い、多層MXeneに相当する構造を持つ56個の化合物を抽出した。そのうち33個が、これまでMXeneとして認識されていなかった候補であった。
合成プロセスにおいては、機械学習による分類、研究者による文献確認、第一原理計算、そして「自己伝播高温合成(SHS)」を組み合わせたワークフローを採用した。SHSは、短時間の点火によって高温化学反応を誘発させる手法で、外部からの持続的な加熱を必要とせず、数分以内に合成が完了するのが特徴である。
背景・業界の文脈
MXeneは、主に遷移金属の炭化物や窒化物からなる二次元材料の総称で、2011年に米国のドレクセル大学の研究者によって初めて報告された。高い電気伝導性と大きな比表面積を持つため、電池電極、電磁波遮蔽、触媒などの用途で研究されている。代表的な材料にはチタンベースのTi₃C₂Tₓがある。
従来のMXene合成は、MAX相と呼ばれる層状の前駆体結晶から、フッ化水素酸などの強酸を用いて特定の原子層を選択的にエッチングし、剥離させる手法が一般的であった。しかし、この手法は前駆体の合成やエッチングに時間を要し、強酸の使用に伴う安全性や環境負荷が課題となっていた。本研究が焦点を当てたのは、一般式$\mathrm{M}_2\mathrm{XT}_2$(M: 金属、X: 主に炭素または窒素、T: 終端元素)で表される多層構造である。
今後の展望
今回の研究で特定された33個の候補は、1970年代などの数十年前の研究で既に合成されていたが、当時はグラフェンなどの二次元材料研究が普及していなかったため、層状ハロゲン化物として扱われ、その潜在能力が十分に探索されていなかった。過去の結晶構造データを現代の視点から再評価し、実験的な合成へと繋げる一連のワークフローを確立したことで、埋もれていた既存知見から効率的に新材料を発見する道が開かれた。
元記事: https://xenospectrum.com/en/ai-rediscovered-multilayer-mxenes-science-2026/
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