主要成果
ソウル大学自然科学大学化学部の林鐘佑(イム・ジョンウ)教授研究チームは、AI(人工知能)を用いてリチウム金属電池の性能と寿命を左右する電解質素材を探索し、約132万個の分子から有望な候補368種を抽出する技術を開発した。研究チームは、これら選別された素材のうち3種類を実際の電池に適用し、安定的な充放電性能を実証した。一方で、選別基準を満たさなかった比較物質を用いた電池では、性能が急速に低下することが確認された。
技術・詳細
本研究では、分子の物理・化学的特性と機械学習を組み合わせたAIアルゴリズムを開発し、リチウム金属電池用の「非フッ素系電解質希釈剤」の探索を行った。AIが単なる統計的パターンを学習するのではなく、分子間の相互作用を説明する化学的基準を活用している点が特徴である。具体的には、以下の2つの物理・化学的指標を指標として活用した。
- 三フッ化ホウ素親和度(BF₃ Affinity): 分子の電子対供与特性を示し、分子がリチウムイオンに直接結合しようとする傾向を評価する。
- 分子極性指数(Molecular Polarity Index, MPI): 分子表面の電荷分布と静電的相互作用を示し、希釈剤が他の電解液成分と適切に相互作用できるかを判断する。
研究チームは、米国国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する化学物質データベース「PubChem」にこのアルゴリズムを適用した。その結果、全探索対象の約0.028%にあたる368種の有望候補を特定し、実験対象を大幅に圧縮することに成功した。
背景・業界の文脈
リチウム金属電池は、従来のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を実現できるため、電気自動車(EV)の航続距離拡大や軽量化を実現する次世代技術とされる。しかし、リチウム金属は化学的反応性が高く、電解液との副反応によって寿命と安定性が低下するという課題がある。
この解決策として、リチウム塩の濃度を高めた「高濃度電解液」の研究が進んでいたが、粘度の上昇とイオン移動の鈍化が問題となった。これを補完するのが「局所高濃度電解液(LHCE)」であり、希釈剤を添加して粘度を下げつつ、リチウムイオン周辺の結合構造を維持させる手法である。従来はフッ素系化合物が広く利用されていたが、環境残留性の懸念や合成・製造コストの高騰から、非フッ素系の代替素材の開発が強く求められていた。
今後の展望
AIを用いて有望な候補を事前に絞り込むことで、素材開発における試行錯誤の時間とコストを大幅に削減できる。今後は、特定された368種の候補すべてについて実験的な検証を行うとともに、商用化に向けて長期寿命の確認、多様な動作条件下での安定性、および量産可能性についての追加評価が必要となる。本研究の結果は、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society (JACS)」に掲載された。
元記事: https://www.aitimes.kr/news/articleView.html?idxno=42475
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