主要成果
2026年3月、iPS細胞を用いた再生医療等製品として、パーキンソン病および虚血性心筋症による重症心不全を対象とする2製品が、厚生労働省から世界初の「条件および期限付き」の製造販売承認を受けた。これにより、iPS細胞を用いた治療は研究・治験の段階を終え、実際の医療現場で有効性と安全性を検証する新段階へと移行した。
技術・詳細
iPS財団は、免疫拒絶反応のリスクを抑えられる「自家iPS細胞(患者自身の細胞から作製)」の普及に向け、製造プロセスの根本的な改革を進めている。現状、自家iPS細胞の製造は熟練した人材による手作業に依存しており、1人当たりの製造コストは約5000万円に達すると試算されている。このコストを約100万円まで削減するため、以下の技術的アプローチを導入している。
- 閉鎖型自動細胞培養装置の活用: 外部環境に触れずに試薬添加や培養を行うことで、微生物混入リスクを低減し、大規模なクリーンルームや高度な無菌操作への依存を減らす。
- 工程の最適化: 他家iPS細胞で必要とされる厳密な細胞の絞り込み工程を、自家iPS細胞向けに簡略化し、培養期間を短縮する。
- ばらつきの制御: 患者の年齢や健康状態による細胞の個体差を吸収し、一定の品質に仕上げる製造技術の開発。
背景・業界の文脈
iPS細胞は、体細胞に初期化因子を導入して分化能を取り戻させた細胞であり、組織の補完などの再生医療への応用が進んでいる。iPS財団は、健康なドナーから作製した「他家iPS細胞」を保存・提供する「iPS細胞ストックプロジェクト」を推進しており、今回承認された2製品もこのストックを原料としている。しかし、他家細胞では拒絶反応のリスクが避けられないため、疾患や患者の状態に応じて他家と自家を使い分ける相互補完的な体制が必要とされている。
今後の展望
iPS財団は、2027年初めまでに自家iPS細胞の製造プロセスを確定させ、2028年度中に医療機関等による臨床試験を開始することを目標としている。製造の標準化と自動化が実現すれば、熟練者への依存度が下がり、医療機関に近い場所での製造が可能になるため、治療時間の短縮や患者負担の軽減が期待される。将来的には、センサーや画像解析、AIを組み合わせた「研究そのものの自動化」により、研究スピードをさらに向上させる構想を描いている。
元記事: https://toyokeizai.net/articles/-/957125
毎週の技術動向レポートを無料でお届け
各分野の分析レポートを読む価値があるかどうか一目で判断できるインフォグラフィックをメールで受け取れます。
📢 メールマガジンに無料登録(週刊・技術動向レポート)
ご登録いただくと、Troy-Technical から週刊で技術動向レポート(メールマガジン)をお届けします。
- 取得したメールアドレス・選択分野は配信目的にのみ使用します。
- 第三者へ提供することはありません。
- 配信はいつでも解除できます(各メール下部のリンクから)。
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
登録は1分・いつでも解除できます



