INSTITUTION PROFILE / 創薬・DDS
PMDA
― 日本の新薬の「中身を審査する」専門機関
PMDA(医薬品医療機器総合機構)は厚生労働省が所管する独立行政法人で、自分では薬を作りません。 役割は新薬の申請を科学的に審査し、開発の途中から企業に助言することです。 ただし承認そのものを出すのはPMDAではなく厚生労働大臣です。 近年は、海外で使える薬が日本で開発されない「ドラッグ・ロス」への対策も業務の柱になっています。 本稿では、PMDAが創薬・DDSにどこまで影響を持つのかに絞って整理します。
- 30秒でわかるPMDA
- どんな機関か ― 影響力の「型」
- 創薬・DDSで何をしているか
- 影響力の範囲(権限と地域)
- 関わっている企業・組織
- 今後の見通し
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるPMDA
医薬品医療機器総合機構英文 Pharmaceuticals and Medical Devices Agency
日本の新薬の承認は2段構えです。 PMDAの審査と薬事審議会での審議または報告を経て、厚生労働大臣が承認します 事実。 希少疾病以外の薬を優先審査にするかどうかも厚生労働省が決めます 事実。 PMDAは「決める機関」ではありませんが、申請の中身を読み込み、どこが足りないかを企業に伝える実務を一手に担うため、 日本で薬を出したい企業にとって最初で最大の相手になります。
2. どんな機関か ― 影響力の「型」
創薬・DDSの記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では薬を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。
3. 創薬・DDSで何をしているか
| 活動 | 中身 | 数字・例(PMDAの公表値) |
|---|---|---|
| 新薬の審査 | 品質・有効性・安全性を評価し、承認してよいかを審査する。承認は厚生労働大臣 | 2025年度の新医薬品の承認品目一覧は140件。うち新有効成分を含むものは44件(一覧の記載を本稿が集計 本稿の計算) |
| 審査期間の目標 | 申請から承認までの総審査期間を、80%の品目がこの期間内に収まるよう管理する | 2025年度の実績は優先品目9.0か月(目標9か月)、通常品目11.7か月(目標12か月)。承認件数に占める優先品目は30.0% |
| 治験相談 | 申請の前に、評価項目や試験方法が足りているかを企業と相談する。アカデミアやベンチャー企業には開発初期の試験計画から助言する | RS総合相談・RS戦略相談などの枠がある |
| 先駆的医薬品指定制度 | 画期的な新薬を指定し、審査を早める制度(旧名称は先駆け審査指定制度) | 総審査期間の目標は6か月。2024年度の実績4.8か月、2025年度は対象の承認品目なし |
| 小児・希少疾病の相談 | 2024年7月1日に「小児・希少疾病用医薬品等薬事相談センター」の事業として、希少疾病用医薬品の優先審査の該当性相談を開始 | 2025年度に指定された希少疾病用医薬品は101品目 |
2025年度の承認に見るモダリティ
新医薬品の承認品目一覧には、新しい有効成分だけでなく、既存の薬の効能の追加も含まれます。 下の分類は成分名(デルクステカン・ベドチン=ADC、〜シラン=siRNA、mRNA)から本稿が行ったものです 本稿の計算。
| モダリティ(本稿の分類) | 販売名(会社名) | 承認日・区分 |
|---|---|---|
| ADC | エンハーツ(第一三共)/ポライビー(中外製薬) | 2025年8月25日・2026年3月23日/2026年3月23日(いずれも新効能) |
| siRNA | アムヴトラ(Alnylam Japan) | 2025年6月24日(新効能) |
| mRNA | エムレスビア(モデルナ・ジャパン)。RSウイルス感染症の予防 | 2025年5月19日(新有効成分) |
| ペプチドを含む配合剤 | キーンス配合注(ノボ ノルディスク ファーマ)。インスリン イコデクとセマグルチドの配合 | 2026年2月19日(新医療用配合剤) |
PMDAの業務実績報告書は、今後の課題として海外のベンチャー企業などに対する「ドラッグロス」解消を挙げています 事実。 2024年11月1日に開いたワシントンD.C.事務所は、在米スタートアップへの情報発信と初期の開発相談を担い、 2025年度には日本に拠点を持たない企業などから18件の相談を受け、うち7件が担当の審査チームとの相談につながりました 事実。 新しいモダリティの多くは米国の新興企業から生まれるため、最初の段階で日本を申請先の候補に入れてもらうことが対策の中心です。
4. 影響力の範囲(権限と地域)
| 観点 | PMDAが持っているもの | 持っていないもの |
|---|---|---|
| 権限 | 新薬の審査、申請資料の信頼性調査、製造所の調査(GMP・GCTPなど)、治験相談 | 承認の決定(厚生労働大臣)、希少疾病用医薬品の指定(厚生労働大臣)、希少疾病以外の優先審査の決定(厚生労働省) |
| 地域 | 日本市場。申請企業がどの国の企業でも、日本で売る限り対象になる | 他国での販売の可否を決める権限 |
| 海外への働きかけ | アジア事務所(タイ、2024年7月)とワシントンD.C.事務所(2024年11月)。米国の行政機関との規制協力、在米スタートアップへの情報発信 | 海外企業に日本での申請を求める権限(あくまで情報発信と相談) |
| 国際的な位置 | ICHの創設時の規制当局メンバー(MHLW/PMDA, Japan)。厚生労働省などと協働し、医薬品分野でWHOのWHO Listed Authorityの認定を受けた | ICH指針を単独で決める権限(加盟当局の合意で決まる) |
1,053人は医療機器・再生医療等製品・健康被害救済などを含むPMDA全体の職員数で、 656人と約186億円も医療機器などを含む「審査等業務」全体の数字です 事実。 新医薬品の審査だけに従事する人数と金額は、業務実績報告書には分けて載っていません 未確定/将来。 また、承認品目一覧の140件には新効能・新用量などの追加も含まれ、FDAの「novel drug」の件数とは定義が違うため、単純には比べられません。
5. 関わっている企業・組織
6. 今後の見通し
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| ワシントンD.C.事務所を通じた米国の新興企業への働きかけが、今後のドラッグ・ロス対策の中心になる | 業務実績報告書は、海外企業へのアウトリーチを各部門と連携して進め、ドラッグロス対策に取り組むとしている | 推測 |
| ADCやsiRNAでは当面、新しい成分の承認よりも既存品の効能追加が件数の中心になる | 2025年度の一覧では、ADC・siRNAの品目はいずれも新効能としての承認(mRNAワクチンは新有効成分) | 推測 |
| ドラッグ・ロスがどこまで解消されるか(日本で開発されない薬の数の変化) | 業務実績報告書には相談件数はあるが、解消の度合いを示す指標は載っていない | 未確定/将来 |
7. 用語集
- 独立行政法人
- 国の事業を行う法人。省庁そのものではなく、所管の大臣の監督のもとで業務を行う。
- 総審査期間(80%タイル値)
- 申請から承認までの期間を短い順に並べ、80%の品目が収まる期間。PMDAの審査目標の指標。
- 治験相談
- 承認申請の前に、試験の計画や評価項目が承認の要件に合うかをPMDAと相談する仕組み。
- ドラッグ・ロス
- 海外で使われている薬が、日本では開発・申請されないこと。
- 希少疾病用医薬品
- 日本の対象患者数が5万人未満などの要件を満たし、厚生労働大臣が指定した医薬品。優先的に審査される。
8. 出典
- PMDA PMDAとは(名称・設立・法人の種別・3組織の統合・業務)。 https://www.pmda.go.jp/about-pmda/outline/0001.html
- PMDA 業務案内(2025年5月発行。厚生労働省所管の独立行政法人、優先審査を厚生労働省と協力して進めること、治験相談とアカデミア・ベンチャー向けの助言、アジア事務所とワシントンD.C.事務所の設置と役割)。 https://www.pmda.go.jp/files/000219906.pdf
- PMDA 業務実績報告書(令和7年度)。所在地、全職員数、審査等業務の予算額と従事人員数、新医薬品の総審査期間、優先品目の割合、先駆的医薬品指定制度、小児・希少疾病用医薬品等薬事相談センター、希少疾病用医薬品の指定数、ワシントンD.C.事務所の相談件数、ドラッグロス対策、WHO Listed Authority。 https://www.pmda.go.jp/files/000282524.pdf
- PMDA 新医薬品の承認品目一覧(2025年度)。PMDAの審査と薬事審議会を経て厚生労働大臣が承認すること、優先審査・希少疾病用医薬品の説明。 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0039.html
- PMDA 承認品目一覧(新医薬品:2025年4月〜2026年3月)別表(Excel)。品目ごとの承認日・会社名・成分名・区分。 https://www.pmda.go.jp/files/000277966.xlsx
- ICH Members & Observers(創設時の規制当局メンバー:EC, Europe/FDA, United States/MHLW/PMDA, Japan)。 https://www.ich.org/page/members-observers
9. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 正式名称、2004年4月1日の設立、3組織の業務の統合、法人の種別 | 事実 | 出典1 https://www.pmda.go.jp/about-pmda/outline/0001.html |
| 厚生労働省所管、治験相談とアカデミア・ベンチャー向けの助言、海外事務所の設置時期と役割 | 事実 | 出典2 https://www.pmda.go.jp/files/000219906.pdf |
| 所在地、全職員1,053人、審査等業務の予算額と従事人員656人、総審査期間9.0か月・11.7か月、優先品目30.0%、先駆的医薬品指定制度、相談センター、希少疾病用医薬品101品目、ワシントンD.C.事務所の相談18件・7件、ドラッグロス対策、WHO Listed Authority | 事実 | 出典3 https://www.pmda.go.jp/files/000282524.pdf |
| PMDAの審査と薬事審議会を経て厚生労働大臣が承認、希少疾病以外の優先審査は厚生労働省が決める、希少疾病用医薬品の要件 | 事実 | 出典4 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/p-drugs/0039.html |
| エンハーツ・ポライビー・アムヴトラ・エムレスビア・キーンス配合注の会社名・承認日・区分 | 事実 | 出典5 https://www.pmda.go.jp/files/000277966.xlsx |
| MHLW/PMDAがICHの創設時の規制当局メンバー | 事実 | 出典6 https://www.ich.org/page/members-observers |
| 2025年度の一覧140件・うち新有効成分を含む44件の集計、成分名によるモダリティの分類 | 本稿の計算 | 出典5の一覧から本稿が集計・分類 |
| 機関の4つの型の区分 | 本稿の計算 | 本稿による整理 |
| 新医薬品の審査だけに従事する人数と金額 | 未確定/将来 | 出典3に記載なし。本稿では推計しない |
| 第6章の見通し(推測2項目・未確定1項目) | 推測 | 出典3・5の記載からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はPMDAの公式サイト・業務案内・業務実績報告書・承認品目一覧、およびICHの公式サイトに基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。本稿は特定の薬を勧めるものではありません。