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AACR|創薬・DDS 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 創薬・DDS

AACR
― がんの新薬候補が「最初に姿を見せる」世界最大級の研究学会

AACR(米国がん学会)は、がんの基礎・橋渡し・臨床の研究者が集まる学会です。 薬を承認する権限も、研究費を配る国の予算もありません。 それでも創薬の世界で注目されるのは、春の年次総会(2026年は4月)が、抗がん剤の候補の化学構造や初期の臨床試験の結果が初めて公開される場になっているからです。 本稿では、AACRが創薬・DDSにどこまで影響を持つのかを、年次総会・学術誌・研究助成の3つの経路から整理します。

構成:AACRの公式サイト(概要、Fast Facts、年次総会2026の頁、臨床試験の特集、New Drugs on the Horizonの頁、協賛者一覧)と、AACRの年次総会ニュースを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるAACR
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 創薬・DDSで何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている企業・組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるAACR

正式名称American Association for Cancer Research日本語では米国がん学会
国米国本部はフィラデルフィア。ボストンとワシントンD.C.にも事務所
機関の種類学術団体(非営利)米国の税法上の公益慈善団体
設立1907年5月7日11人の医師・科学者がワシントンD.C.で設立
人数規模会員6万5,000人超143の国・地域に在住
年次総会の規模登録者2万3,000人超2026年、74の国・地域から
創薬・DDSへの関与研究成果の発表の場新薬候補の初公開、臨床試験の発表、学術誌10誌
影響が及ぶ範囲世界の研究者と企業承認や規制の権限はない
まず押さえるべき1点

AACRの影響力は「どのデータが、いつ、誰の前で初めて公開されるか」を決める場を持っていることにあります。 2026年の年次総会では約250件の臨床試験が発表され、そのうち完了した第III相試験が11件ありました 事実。 ただし、発表された結果をもとに薬を承認するかどうかを決めるのは各国の規制当局で、 AACR自身は承認にも診療にも直接の権限を持ちません。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

創薬・DDSの記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では薬を売りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

創薬・DDSを動かす「機関」の4つの型 機関は自分では薬を売らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 承認審査・ガイダンス 技術ガイドラインの調和 学会・臨床データ発表 NIH FDA/EMA/PMDA/NMPA ICH AACR/ASCO 何を研究させるか 何を売ってよいか どう試験し、どう申請するか どのデータを誰が見るか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の市場 届く範囲=加盟当局 届く範囲=参加者 AACRは右端の「場をつくる」型。基礎から臨床まで、がん研究の新しいデータが集まる 研究助成も行うが、規模と影響の中心は年次総会と学術誌にある
図1 創薬・DDSに関わる機関の4つの型と、AACRの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う8機関から例示しています 本稿の計算。AACRは研究助成も行いますが、国の予算を配るNIHとは規模も性格も異なるため「場をつくる」型に入れています。

3. 創薬・DDSで何をしているか

AACRの創薬への関わり方は、年次総会、学術誌、研究助成と政策提言の3つに分けられます 事実。

活動規模中身創薬・DDSとの関係
年次総会(2026年)4月17〜22日、米国サンディエゴ
登録者2万3,000人超・74の国・地域
招待演者760人超。臨床試験の発表は過去最多の約250件で、完了した第III相試験11件、進行中の第III相試験の紹介6件を含む臨床試験のプレナリー(全体会)は、精密医療(KRAS阻害)、ADC、細胞療法、免疫療法の4回
New Drugs on the Horizon年次総会の中の3セッション・計12演題(各20分)臨床試験中か、まもなく臨床試験に入る低分子・高分子の薬の化学構造と生物学を初めて公開する。審査委員は秘密保持契約に署名し、内容は発表日まで非公開企業が開発候補の構造を明かす場。2026年も12件が初公開
学術誌査読付き10誌Cancer Discovery、Cancer Research、Clinical Cancer Research、Molecular Cancer Therapeutics、Blood Cancer Discovery など前臨床から臨床までの研究成果の論文発表の場
研究助成・学術集会・政策提言年30以上の学術集会・研修研究費の直接助成、Stand Up To Cancerの科学パートナーとしての審査・運営、連邦政府のがん研究予算への提言若手研究者の育成と、NIHなどの公的予算を求める活動
創薬の視点:「初公開」の場が持つ意味

製薬企業にとって、開発中の薬の化学構造は重要な企業秘密です。 New Drugs on the Horizonは、その構造を発表日まで伏せたまま審査し、当日に初めて公開する仕組みを整えています。 研究者や競合企業はここで初めて新しい薬の設計を知ることになり、 低分子から高分子まで、新しい薬の設計の流れを読む手がかりにもなります。 2026年のADCのプレナリーでは、ADCのトラスツズマブ デルクステカン(Enhertu)とPARP阻害薬オラパリブの併用の第I相試験や、 新しいEGFR標的ADCの第I相試験の結果が発表されました 事実。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点AACRが持っているもの持っていないもの
権限年次総会でどの演題を採択し、どの枠で発表させるかを決める権限。学術誌の査読と掲載の判断薬の承認・安全対策・保険償還を決める権限。企業に試験の実施や結果の公開を義務づける権限
地域本部は米国だが、会員は143の国・地域、2026年の年次総会の登録者は74の国・地域から特定の国の規制や予算に直接影響する権限(米国の連邦予算には提言を通じて働きかける)
対象がんの基礎・橋渡し・臨床の研究者、製薬企業、患者支援団体、報道機関(2026年は記者190人超が登録)がん以外の分野
規模会員6万5,000人超、査読付き10誌、年30以上の学術集会総収入などの財務の数値は本稿では確認していない
数字の読み方の注意

「登録者2万3,000人超」は年次総会への登録者数で、会員数(6万5,000人超)とは別の数字です。 また、年次総会で発表される臨床試験の多くは第I相・第II相の初期段階で、2026年に発表された約250件のうち 完了した第III相試験は11件でした 事実。 学会での発表は、承認に必要な審査を経たものではなく、その後の承認や診療への採用を保証するものではありません。

5. 関わっている企業・組織

新しいがん治療のデータはAACRでどう公開されるか 企業・大学・病院が演題を出し、AACRが選考して年次総会と学術誌で公開する 発表する側:企業・大学・病院 抄録・臨床試験の結果・新薬の初公開 支える側:年次総会の協賛者(2026年) AstraZeneca/GSK/Daiichi Sankyo/Lilly ほか AACR(米国がん学会) 演題の選考・年次総会・学術誌10誌 年次総会2026 登録者2万3,000人超・74の国・地域 学術誌(10誌) 査読を経た論文の発表 New Drugs on the Horizon 2026年は12件を初公開 2026年の発表 臨床試験 約250件 完了した第III相試験 11件 招待演者 760人超 主な学術誌 Cancer Discovery Clinical Cancer Research Molecular Cancer Therapeutics 仕組み 3セッション・各20分 化学構造と生物学を初公開 審査委員は秘密保持契約
図2 AACRを通じた新しいがん治療のデータの公開の流れ。出典:AACRの年次総会2026の頁、New Drugs on the Horizonの頁、協賛者一覧、年次総会の総括記事。協賛者は上位2区分(Cure・Progress)の企業を抜粋しました 本稿の計算。

年次総会2026の協賛企業(本シリーズの企業解説の候補にあたるもの)

協賛の区分(AACRの表記)企業読み方の注意
Cure LevelAstraZeneca、GSK最上位の区分。金額は公表されていない
Progress LevelDaiichi Sankyo, Inc.、Lilly女性のがんの研究基金も同じ区分に並ぶ
Promise LevelPfizer、Novartis、Merck & Co.、Sanofi、Gilead and Kite Oncology など患者団体・研究財団も多数含まれる

※協賛は学会の運営を支えるもので、演題の採否とは別の手続きです。協賛の有無が発表内容の評価を意味するものではありません。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
AACRの年次総会は、基礎研究の場から後期臨床試験の発表の場としての比重も増している2026年は臨床試験の発表が過去最多の約250件で、完了した第III相試験11件を含む推測
ADCや細胞療法など新しいモダリティの初期データが最初に出る場として、企業の開発状況を読む材料になり続ける2026年の臨床試験プレナリー4回のうち、ADC、細胞療法・複合免疫療法がそれぞれ1回を占めた推測
新薬の構造の初公開は、今後も年次総会の日程に合わせて行われる2027年の年次総会は4月2〜7日にオーランドで開催予定。New Drugs on the Horizonの応募締切は2026年10月15日推測

7. 用語集

抄録(アブストラクト)
学会で発表する研究の要約。学会の委員会が審査して、口頭発表やポスター発表に振り分ける。
プレナリー
全参加者向けの全体会。注目度の高い研究が選ばれて発表される。
第III相試験
多数の患者で既存の治療などと比べ、有効性と安全性を確かめる臨床試験の段階。承認申請の主な根拠になる。
エンバーゴ
決められた日時まで内容の公開を禁じる取り決め。New Drugs on the Horizonでは発表日まで構造が伏せられる。
ADC(抗体薬物複合体)
抗体に薬(搭載薬)を結合し、標的の細胞に薬を届けるモダリティ。

8. 出典

  1. AACR About the AACR(1907年5月7日の設立、会員6万5,000人超・143の国・地域、査読付き10誌、Stand Up To Cancerの科学パートナー、年30以上の学術集会、連邦予算への提言)。 https://www.aacr.org/about-the-aacr/
  2. AACR AACR Fast Facts(本部フィラデルフィア、ボストンとワシントンD.C.の事務所、会員数、学術誌の一覧)。 https://www.aacr.org/about-the-aacr/newsroom/media-resources/aacr-fast-facts/
  3. AACR AACR Annual Meeting 2026(2026年4月17〜22日、サンディエゴ・コンベンションセンター)。 https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2026/
  4. AACR年次総会ニュース Thank you for an incredible AACR Annual Meeting 2026!(2026年5月7日。登録者2万3,000人超・74の国・地域、臨床試験約250件、完了した第III相試験11件、招待演者760人超、記者190人超、2027年の日程)。 https://www.aacrmeetingnews.org/aacr-ceo-margaret-foti-phd-md-hc-thank-you-for-an-incredible-aacr-annual-meeting-2026/
  5. AACR Spotlight on Clinical Trials(2026年の臨床試験プレナリー4回の主題)。 https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2026/spotlight-on-clinical-trials/
  6. AACR年次総会ニュース Second Clinical Trials Plenary highlighted results of next-generation antibody-drug conjugates(2026年4月21日。トラスツズマブ デルクステカンとオラパリブの併用、EGFR標的ADCの第I相試験)。 https://www.aacrmeetingnews.org/second-clinical-trials-plenary-highlighted-results-of-next-generation-antibody-drug-conjugates/
  7. AACR AACR New Drugs on the Horizon at the Annual Meeting(3セッション・12演題、化学構造と生物学の初公開、秘密保持契約、2026年の12件、2027年の応募締切)。 https://www.aacr.org/professionals/membership/scientific-working-groups/chemistry-in-cancer-research-working-group/new-drugs-on-the-horizon/
  8. AACR AACR Annual Meeting 2026: Supporters(協賛の区分と協賛者の一覧)。 https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2026/supporters/

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
1907年5月7日の設立、会員6万5,000人超・143の国・地域、査読付き10誌、研究助成・Stand Up To Cancer・年30以上の学術集会・予算への提言事実出典1 https://www.aacr.org/about-the-aacr/
本部フィラデルフィア、ボストンとワシントンD.C.の事務所事実出典2 https://www.aacr.org/about-the-aacr/newsroom/media-resources/aacr-fast-facts/
年次総会2026の会期と会場事実出典3 https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2026/
登録者2万3,000人超・74の国・地域、臨床試験約250件、完了した第III相11件、招待演者760人超、記者190人超、2027年の日程事実出典4 https://www.aacrmeetingnews.org/aacr-ceo-margaret-foti-phd-md-hc-thank-you-for-an-incredible-aacr-annual-meeting-2026/
臨床試験プレナリー4回の主題(KRAS阻害、ADC、細胞療法、免疫療法)事実出典5 https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2026/spotlight-on-clinical-trials/
ADCのプレナリーでの発表内容事実出典6 https://www.aacrmeetingnews.org/second-clinical-trials-plenary-highlighted-results-of-next-generation-antibody-drug-conjugates/
New Drugs on the Horizonの仕組み、2026年の12件、2027年の応募締切事実出典7 https://www.aacr.org/professionals/membership/scientific-working-groups/chemistry-in-cancer-research-working-group/new-drugs-on-the-horizon/
年次総会2026の協賛の区分と協賛企業事実出典8 https://www.aacr.org/meeting/aacr-annual-meeting-2026/supporters/
機関の4つの型の区分、図2の協賛企業の抜粋本稿の計算本稿による整理
AACRの総収入などの財務の数値、協賛の金額未確定/将来本稿では確認していない。推計しない
第6章の見通し3項目推測出典4・5・7からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はAACRの公式サイトと年次総会ニュースに基づきます。学会で発表された臨床試験の結果は、承認や診療での使用を意味するものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。本稿は医療上の助言ではありません。