主要成果
九州工業大学とJAXAの研究グループは、人工知能(AI)を活用して人工衛星の表面が帯電する現象を自動的に検出する手法を開発しました。研究グループによれば、このような自動検出手法の開発は世界で初めてとなります。本研究では、アメリカの軍事気象衛星「DMSP F16」が2005年から2023年にかけて観測した約19年分のデータを解析し、合計で約3000件の帯電イベントを抽出することに成功しました。
技術・詳細
開発された手法では、画像認識などの分野で実績のあるAIの一種「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」が採用されています。これにより、従来は専門の人間が目視で確認していた帯電候補の抽出作業を自動化し、長期間の統計的な解析に要していた膨大な手間を大幅に削減しました。
また、抽出したデータの解析を通じて、衛星が帯電するメカニズムについても定量的な知見が得られました。具体的には、以下の要因が帯電の強さを決定していることが判明しています。
- オーロラを発生させる高エネルギー電子:衛星の帯電を強める要因となる。
- 電離圏プラズマ中の正イオン:衛星へ流入することで、負の帯電を抑制する働きを持つ。
つまり、衛星の帯電強度は、これら「オーロラの電子」と「周囲のプラズマ」のバランスによって決まることが明らかになりました。
背景・業界の文脈
人工衛星は地上機器とは異なり、大地へアース(接地)させることができません。そのため、宇宙空間に存在する電子などが表面に蓄積すると、衛星が電気を帯びる「帯電」が発生します。表面の部位によって帯電量に差が出ると大きな電位差が生じ、火花のような放電が起こるリスクがあります。この放電は、太陽電池や表面材料を物理的に傷めるだけでなく、衛星の運用全体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、業界にとって重要な課題となっています。
今後の展望
研究グループは今後、オーロラ活動がさらに活発であった過去の期間まで解析対象を広げる計画です。オーロラと電離圏の状態を併せて調査することで、衛星が帯電しやすい時期や場所を予測することを目指しています。低軌道を周回する通信衛星や地球観測衛星は年々増加しており、帯電リスクを事前に予測できれば、故障を回避する運用計画の策定や、帯電に強い耐性を持つ衛星設計への応用が期待されます。
なお、本研究成果は2026年10月27日付の学術誌「Space Weather(AGU:アメリカ地球物理学連合)」に掲載されました。
元記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/2323eb3c3b2d87c4dfd1c6fff550d8c158185aa0
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