主要成果
本研究では、宇宙船の再突入時に使用される多孔質カーボン材料のヒートシールドにおいて、表面が焼失して後退する「アブレーション」の挙動を3次元的に追跡するシミュレーション手法を確立しました。特筆すべきは、個々の繊維の形態変化まで分解能を持って再現し、実験データと整合性の高い結果を得た点です。シミュレーションでは、初期温度3000ケルビン、酸素濃度2.713 moles/m³、ガス流入速度0.001 m/sの条件下で、20秒後の反応で元の固体体積の30%未満まで減少する様子が確認されました。
技術・詳細
開発された手法は、オープンソースのOpenFOAMプラットフォーム上でdbsFoamソルバーを再開発したものです。物理モデルにはDarcy-Brinkman-Stokes運動方程式を採用しており、純粋なガス領域ではナビエ・ストークス方程式として、ガスと固体が共存しドラッグが支配的な領域ではダルシーの法則として機能します。化学反応は簡略化し、固体カーボンが酸素と反応して一酸化炭素(CO)を生成する主要経路(反応熱:約110 kJ/mol)のみを組み込んでいます。
シミュレーションの精度を高めるため、以下の設定が用いられました。
- 計算メッシュ:精度と効率のバランスから約10.2 million cellsを選択。
- 材料モデル:直径11マイクロメートル、最大長100マイクロメートルのランダム分布繊維(初期空隙率0.85)をAbaqus環境で生成。
- 物理量:体積平均対流拡散方程式による反応物・生成物の追跡、およびアレニウス型の温度依存性に基づく繊維反応性を適用。
背景・業界の文脈
カーボン/カーボン複合材などの多孔質材料は、低密度、高強度、低熱膨張係数、高温化学的安定性を兼ね備えているため、再突入機やロケットエンジンのノズルに不可欠です。しかし、アブレーションは不均一に進行します。熱い境界層の酸素が界面で反応し、表面が後退するにつれて拡散チャネルが開き、繊維やマトリックスが露出します。従来の格子ボルツマン法などは計算効率に優れる一方、実験データと直接比較可能な物理量の提示に課題がありました。また、繊維の配向によって、流れに垂直な繊維が針状に変化するなど、複雑な形態進化が起こることが知られていました。
今後の展望
本モデルは、Lachaudモデルや既存の2次元モデルよりも高い整合性を示し、個々の繊維の形態進化を解明することに成功しました。現在は主要なCO生成経路のみを対象としていますが、今後は酸素の解離やCOの酸化といった二次反応、および高エンタルピー条件下での多成分効果など、より複雑な表面化学反応をモデルに組み込む計画です。
元記事: https://bioengineer.org/new-3d-simulation-tracks-moving-ablation-interfaces-in-porous-heat-shields/
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