主要成果
Microchip Technologyは、宇宙機や衛星などのミッションクリティカルなシステム向けに設計された64ビットマルチコアRISC-Vコンピューティングプラットフォーム「PIC64-HPSC」シリーズにおいて、複数の重要なマイルストーンを達成した。特に耐放射線バリアントである「PIC64-HPSC1000-RH」の初期特性評価において、総イオン化線量(TID)で200 krad(Si)までの性能を確認し、シングルイベントラッチアップ(SEL)試験では78.2 MeV·cm²/mg(指定動作条件下)での成功を実証した。
また、シングルイベント効果(SEE)の特性評価においても、システムコントローラーが堅牢に動作することが確認されており、これまでの試験において未修正のエラーや外部リセットの必要性は発生していない。これらの結果は、低軌道(LEO)から月、火星、さらにはそれ以降の深宇宙探査に至るまで、将来の宇宙飛行システムが求める耐放射線要件を満たすための具体的な根拠となる。
技術・詳細
PIC64-HPSCは、オープンで拡張性の高いRISC-Vアーキテクチャを採用しており、ソフトウェア定義の宇宙機や分散処理、決定論的通信、ヘテロジニアスコンピューティングへの移行を支援するスケーラブルな基盤として設計されている。初期のシリコン性能測定はプログラムの目標値に沿っており、以下の高度なコンピューティング負荷への対応を想定している。
- オンボード自律制御および高精度ペイロード処理
- 地球観測、インテリジェンス、およびセキュア通信
- 宇宙機制御、科学探査、およびエッジAI
機上でより多くのセンサーデータやミッションデータを処理することで、通信帯域への依存度を下げ、意思決定のレイテンシを短縮し、変化するミッション状況への迅速な対応が可能になる。
背景・業界の文脈
本プロジェクトは、NASAおよびジェット推進研究所(JPL)による将来の宇宙飛行コンピューティング要件の評価に基づき、2022年にMicrochip社がHPSC契約を授与されたことから始まった。宇宙機がより自律的でデータ集約的なシステムへと進化する中、過酷な宇宙環境に耐えうる高い処理能力、セキュリティ、信頼性の確保が急務となっている。この重要性はNASAの「FY26 Civil Space Shortfall Prioritization」においても反映されており、宇宙運用のための高度なオンボードコンピューティングが、民間の宇宙技術不足の第3位にランク付けされている。
今後の展望
現在、Microchipは「PIC64-HPSC Early Access Program」を通じて、顧客へのシリコンおよび開発キットの提供を開始している。参加ユーザーは、同社が提供するソフトウェア、ツール、技術リソース、およびエンジニアリング支援を用いてアプリケーション開発に着手している。また、ボードパートナーによるVPXおよびVNX+コンピューティングプラットフォームの開発も進んでおり、システム開発者が本プロセッサを将来の宇宙システムに統合するための経路が拡大している。このHPSCプログラムで確立された基盤は、同社の64ビットコンピューティングポートフォリオを拡張し、幅広い市場の性能要件に応えるPIC64 MPUの展開へと繋がっている。
元記事: https://www.electronicsmedia.info/2026/10/28/microchip-pic64-hpsc-spaceflight-computing/
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