主要成果
ハードウェア愛好家でありThermal Grizzly社の代表であるder8auer氏が、液体金属TIMを塗布した状態を電子顕微鏡で2年間にわたり追跡調査した結果、液体金属は「乾燥」して消失するのではなく、冷却材の金属と結合して固形化合物へと変化することが明らかになった。特に銅製クーラーに使用した場合、ガリウムが銅と反応してCuGa2という固形化合物を形成し、これが界面に層として蓄積される。このCuGa2の熱伝導率は約100 W/mKであり、純銅の約400 W/mKと比較して約4分の1の性能に低下する。
技術・詳細
検証では、塗布後1時間は液体状態であったが、2ヶ月後には至る所に結晶が見られ、液体部分は消失していた。この状態は2年後まで維持されたという。この反応速度と影響は、クーラーの材質によって大きく異なる。
- 銅(Copper): ガリウムが銅と結合し、1つの銅原子に対し2つのガリウム原子が結合するCuGa2を形成する。この層は1日あたり約1マイクロメートル成長し、最終的に50〜100マイクロメートルに達する。一度形成されると、約254度まで加熱しない限り再溶解させることはできない。
- ニッケルメッキ(Nickel-plated): ニッケルメッキを施したクーラーでは、1つのニッケル原子に5つのガリウム原子が結合するNiGa5が形成される。NiGa5自体の熱伝導率はCuGa2より劣るが、層の厚みが1〜10マイクロメートルと、銅の場合より約10倍薄く抑えられるため、結果としてニッケルメッキの方が優れた性能を維持できる。
- アルミニウム(Aluminum): ガリウムが酸化層を突破して結晶粒界に浸透し、金属を弱化させる。検証では、2mmのアルミニウム板がわずか5分で表面が膨張し、30分以内に脆化することが確認された。
背景・業界の文脈
RTX 5090やRTX 5080といった最新GPUでは、単位面積あたりの電力密度がかつての8800 GTXの2倍から3倍に達しており、界面の冷却効率向上が急務となっている。一方で、原材料であるガリウムの調達リスクが高まっている。中国が世界供給の99%を占める中、米国への輸出禁止措置は2026年11月27日までの一時的な停止状態にあり、輸出ライセンスが必要な状況だ。この影響で、ガリウムの価格は5年前の1kgあたり300ユーロから、現在は2,500〜3,000ユーロへと約10倍に高騰している。
今後の展望
液体金属は極めて高い冷却性能を持つが、導電性によるショートのリスクや、上述のような化学反応による固形化があるため、現状ではオーバークロックを行う熟練者向けの領域に留まっている。Thermal Grizzly社は、ニッケルに代わる新しいコーティング技術を来年中に導入することを目指している。また、液体金属より数度性能は劣るものの、リスクとコストを抑えた代替案として、ダイに直接貼付可能な新バージョンのグラフェンパッド「KryoSheet」のリリースを計画している。
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