COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス
Marvell Technology
― 光DSPの会社が、Celestial AIを約35億ドルで買い「AIチップ同士の光接続」に賭けた
Marvellは、光モジュールの中で信号を整える光DSPの主要な供給元として光通信の世界に登場する半導体会社です。 そのMarvellが2025年12月、光でAIチップ同士をつなぐ技術「Photonic Fabric」を持つスタートアップCelestial AIの買収を発表し、 2026年2月2日に完了しました。米国SECへの四半期報告書(10-Q)によれば、取得対価の総額は約35億ドルです。 さらに2026年3月にはNVIDIAから20億ドルの出資を受け、4月にはスイスの光素子スタートアップPolaritonも買収しました。 本稿では会社全体の規模は簡潔にとどめ、光DSP・シリコンフォトニクス・CPO・Photonic Fabricの4つで何をしてきて、何を狙っているかを、同社のSEC提出書類と公式リリースだけで整理します。
- 30秒でわかるMarvellと、光通信・フォトニクスでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 光通信・フォトニクスにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
- 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるMarvellと、光通信・フォトニクスでの立ち位置
ウィルミントンリリースの発信地はカリフォルニア州サンタクララ
(工場を持たない設計会社)データセンター内から長距離通信網まで
光通信に関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 Marvellは半導体の会社で、自社工場を持たない設計会社です 事実。 ただし光モジュールに入るDSPやドライバ、受光アンプ(TIA)、シリコンフォトニクスのチップ、さらに長距離用の光モジュール(COLORZ)まで自社製品として持っており、 光部品メーカーに最も近い半導体会社の1つです。
Celestial AIの買収は、2025年12月2日に買収契約を発表し、2026年2月2日に完了しました。 完了の事実は、同社の公式リリース、2026年3月提出の10-K、2026年8月提出の10-Qのいずれにも記載があります 事実。 買収の狙いは、これまで銅の配線でつないでいたAIチップ同士の接続(スケールアップ)を光に置き換えることにあります。 光DSPで「ラックとラックの間」を押さえてきた会社が、「ラックの中、パッケージの中」の光にまで踏み込んだ、というのが現在の位置です。
2. ロゴと社名の表記について

Marvellのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
Marvell公式サイトのヘッダーで使われているロゴ画像を img/marvell_logo.svg として設置しています。
表記の注意:現在の正式な社名は Marvell Technology, Inc. で、日本語では「マーベル」と読まれます。 10-Kの添付書類一覧には、以前の社名 Marvell Technology Group Ltd. も登場します。 本稿のフォルダ名は現在の社名の短縮形「Marvell Technology」とし、本文では「Marvell」と略します。
公式サイト:https://www.marvell.com/3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
光のどの領域に関わるかでいえば、Marvellは本稿で扱う半導体会社の中で最も範囲が広い会社です 事実。 10-Kによれば、PAM4のDSPはデータセンターの中の光接続、「coherent-lite」のDSPは最大20kmのキャンパス型データセンター間、 コヒーレントDSPとドライバ・TIAは数百〜数千kmの通信事業者の網、COLORZの光モジュールはデータセンター同士の直結(DCI)に使われます。 そこへCelestial AIのPhotonic Fabricが加わり、ラックの中・パッケージの中まで守備範囲が広がりました。
4. 会社の規模
規模と、光に最も近い「データセンター向け」の売上を押さえます 事実。
| 指標(百万ドル) | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高(全社) | 5,507.7 | 5,767.3 | 8,194.6 |
| うちデータセンター向け | 2,216.7 | 4,164.2 | 6,100.3 |
| うち通信ほか | 3,291.0 | 1,603.1 | 2,094.3 |
| 研究開発費(全社) | 1,896.2 | 1,950.4 | 2,075.2 |
決算期は1月31日前後で終わります(例:2026年1月期=2025年2月〜2026年1月31日)。
直近の2026年5〜7月期(2026年8月1日終了の四半期)の売上は27億3,930万ドルで、うちデータセンター向けが21億7,150万ドル(79%)でした。 10-Kは2026年1月期の伸びについて、「カスタム製品と電気光学(electro-optics)製品へのAI関連の需要」がデータセンター向けを押し上げたと書いています 事実。
「データセンター向け」には、光DSPなどの電気光学製品のほか、カスタムAIチップ、Ethernetスイッチ、ストレージ向け製品も含まれます。 Marvellは光製品だけの売上を開示していません 未確定/将来。 また10-Kには全社の従業員数の記載を本稿では確認できず、光の分野の人員数も非公表です。
5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
Marvellの光への投資は、自社開発よりも買収で目立つのが特徴です。
| リソースの種類 | 内容 | 確認 |
|---|---|---|
| 人(専任組織・人員) | Celestial AIの技術と人員はData Center Groupに編入。光DSPはConnectivity Business Unit、シリコンフォトニクスには「Optical Platforms」の最高技術責任者がいる(いずれもリリースの肩書き)。10-Kは電気光学・シリコンフォトニクスの経験を持つ技術者の中核チームを持つと記載。人数は非公表 | 組織は確認。人数は非公表 |
| 金(研究開発費) | 全社の研究開発費は2026年1月期に20億7,520万ドル。光関連の内訳は非公表。Celestial AIの買収で年間約5,000万ドルの営業費用(非GAAP)が増える見込みと会社が説明 | 全社のみ確認 |
| 買収 | Celestial AI(2026年2月完了、取得対価総額 約35億3,370万ドル)、Polariton Technologies(2026年4月、金額非公表、プラズモニクスの光変調技術)。さかのぼるとInphiとの合併契約(2020年10月29日、10-Kの添付書類一覧) | 確認できた |
| 外部からの出資 | NVIDIAが2026年3月31日に20億ドル分の転換優先株を取得(1株あたり約91.84ドルで最大約2,180万株の普通株に転換可能) | 確認できた |
| 顧客との資本関係 | Celestial AIの買収に合わせ、Amazonに最大1,045,171株のワラント(新株予約権)を発行。権利の確定は、2030年末までのAmazonによるPhotonic Fabric製品の購入に連動 | 確認できた |
| 製造 | 自社工場を持たず、ファウンドリに委託。一部のファウンドリ・基板メーカーとは生産枠の予約契約を結んでいると10-Kに記載 | 確認できた(光の工場は持たない) |
| 大学・研究機関・公的資金 | 光関連の大学との共同研究、CHIPS法などの公的資金の採択は、10-K・10-Q・リリースに記載なし(10-Kの政府優遇に関する記述は税率の優遇が中心で、光関連の補助金の記載はない) | 確認できず |
Celestial AIの買収発表で、Marvellが最も強調した技術的な特徴は熱安定性でした 事実。 リリースは、Photonic Fabricが「数kWのXPUやスイッチが作る極端な熱環境でも確実に動く」ため、 光の部品をAIチップの真上に3次元で重ねて実装でき、チップの端(die edge)からではなくチップに直接光の接続をつくれる、と説明しています。 端が空けば、そこにHBM(高帯域メモリ)をより多く並べられる、というのが会社の主張です。
なぜ熱が問題になるかというと、光の変調器や導波路は温度で屈折率が変わり、動作点がずれるからです。 一般に、シリコンのマイクロリング変調器のような小さく効率のよい素子ほど温度に敏感で、ヒーターで温度を合わせ続ける必要があります。 AIチップの真上は、データセンターの中でもっとも熱い場所の1つです。 そこに光を置けるかどうかは、素子の構造と材料の温度係数で決まります。 Celestial AIがどの素子・材料でこれを実現したのかは、リリースにも10-Kにも書かれていません 未確定/将来。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2017年〜 | シリコンフォトニクスのデバイスを大手クラウド事業者へ量産出荷(2025年1月のリリースの記述)。COLORZのDCI光モジュールは8年以上の出荷実績、累計100億時間超の稼働 | 光の量産実績の土台 |
| 2020年10月29日 | Inphi Corporationと合併契約(10-Kの添付書類一覧) | 取引の中身は、本稿の調査範囲の一次資料では確認していない |
| 2023年 | 5nmの1.6T DSP「Nova」(1レーン200G) | 1.6T世代の最初の製品(2026年9月のリリースの記述) |
| 2024年 | 3nmの1.6T光DSP「Ara」。OFC 2024で200G対応の3D SiPhoエンジンを初公開 | DSPとシリコンフォトニクスの両輪がそろった |
| 2025年1月6日 | カスタムXPU向けのCPOアーキテクチャを発表。6.4Tの3D SiPhoエンジン(200G×32チャネル)をAIチップと同じ基板に載せる。複数の顧客が評価中 | 銅で数十個だったAIチップの接続を、光で数百個・複数ラックへ広げる構想 |
| 2025年8月14日 | 車載Ethernet事業をInfineonに25億ドルで売却 | 事業をデータセンター向けに絞る流れ |
| 2025年12月2日 | Celestial AIの買収契約を発表。前払いの対価は約32.5億ドル相当(現金10億ドル+株式約2,720万株)、売上目標の達成に応じて最大約22.5億ドル相当の株式を追加。同日、Amazonにワラントを発行 | スケールアップの光接続に本格参入 |
| 2026年2月2日 | Celestial AIの買収を完了。10-Qによる取得対価の総額は35億3,370万ドル(取得した現金を差し引くと32億3,090万ドル) | Photonic FabricがMarvellの製品になった |
| 2026年3月12日・16日 | OFC 2026で、1.6Tの送信側リタイムDSP「Ara T」やPhotonic Fabricを展示。Lumentumの光回路スイッチ(R300)とMarvellの光DSP・COLORZモジュールの相互接続を実演 | 光スイッチの会社とも組んで見せた |
| 2026年3月31日 | NVIDIAが20億ドルを出資。NVLink Fusionでの提携に加え、シリコンフォトニクスでも協業すると発表 | GPU最大手と資本でつながった |
| 2026年4月22日 | Polariton Technologies(スイス)を買収。プラズモニクスを使った光変調の技術と人員を取得。金額は非公表 | 3.2T以降の長距離・DCI向けの変調技術を補強 |
| 2026年9月20日 | ECOC 2026に向けて、2nmの400G/レーンPAM4、2nmの800G ZR/ZR+(MACsec付き)などの実演を発表。102.4TのCPOプラットフォーム(200G/レーンのシリコンフォトニクス)も実演 | DSPを2nm世代へ。CPOもスイッチ級の容量で見せた |
7. 今後の計画
上の売上の見込みは、会社自身が買収発表と完了のリリースで示した予想であり、実績ではありません 未確定/将来。 Marvellの決算期は1月31日前後に終わるため、「2028年1月期の第4四半期」はおおむね2027年11月〜2028年1月にあたります 本稿の計算。 リリースは、Photonic FabricのチップレットがカスタムXPUとスケールアップ用スイッチの両方に同梱される形で使われ、 それが「スケールアップの光接続として業界初の大規模商用展開」になると見込んでいます。
次はいずれも、本稿の調査範囲の一次資料に記載がありません 未確定/将来。
Photonic Fabricを採用する顧客の社名(Amazonはワラントの相手として名前が出ているが、採用や発注の規模は非公表)/ CPOの量産開始時期と出荷量(2026年9月のCPOは「実演」)/光DSPや光モジュールの売上・出荷数/ Polaritonの買収金額/NVIDIAとのシリコンフォトニクス協業の具体的な製品と時期。 リリースに引用された調査会社のCPO市場予測(2029年のポート数など)は、会社自身の数字ではないため本稿では採用しません。
8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| AIチップ同士の接続(スケールアップ)が銅から光に移ることに会社として賭けている | 買収発表が「スケールアップは次の主戦場」「配線は次第にすべて光に移る」と明記し、35億ドル規模の対価を払った | 事実 |
| 光の技術は自社開発より買収で揃える方針 | Celestial AI(スケールアップの光接続)とPolariton(プラズモニクスの変調器)という光の中核技術を、半年足らずの間に続けて買収で取り込んだ。Polaritonの発表でも「複数の技術方式への投資」と説明 | 推測 |
| 最初の大口顧客としてAmazonを想定している | Amazonへのワラントの権利確定が、Photonic Fabric製品の購入に連動している。買収発表にAWSの幹部のコメントがある | 推測 |
| NVIDIA陣営とカスタムチップ陣営の両方に光を売れる立場を狙っている | NVIDIAから出資を受けNVLink Fusionで提携する一方、カスタムXPU向けCPOとPhotonic Fabricをハイパースケーラー向けに展開している | 推測 |
| Photonic Fabricはまだ製品化の途中 | 10-QでCelestial AIから取得した無形資産9億5,100万ドルが全額「仕掛中の研究開発(IPR&D)」に分類され、完成した技術(developed technology)はゼロ。売上開始は2028年1月期後半の見込み | 事実 |
Celestial AIの買収は、条件の組み方に会社の考えがよく表れています。 前払いは約32.5億ドル相当ですが、それとは別に最大約22.5億ドル相当の追加対価が、2029年1月期末までの累計売上(5億ドル以上で3分の1、20億ドル超で全額)に連動しています 事実。 同じ日には、Amazonに対し、Photonic Fabric製品の購入量に応じて権利が確定するワラントを発行しました。 つまり「売れたら払う」「買ってくれたら株を渡す」という形で、売り手と顧客の両方の利害を、この技術の立ち上がりに結びつけています。 本稿はこれを、技術そのものへの確信と同時に、立ち上がりの時期にまだ不確実さが残ることを会社自身が認めた契約設計と読みます 未確定/将来。 実際、10-Qでは追加対価の負債の公正価値が買収時の3億1,580万ドルから7億4,950万ドルに増えており、 会社は目標達成の見込みが買収時より高まったと評価していることになりますが、これは株価の変動も含む会計上の評価です。
9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 製品・技術 | 公表されている仕様 | 段階 |
|---|---|---|
| Ara(光DSP) | 3nmの1.6T PAM4光DSP。200Gb/sの電気・光インターフェース。ラック間(スケールアウト)向け | 2024年発表。量産状況の詳細は非公表 |
| Ara T | 送信側だけをリタイムする(TRO)1.6T PAM4 DSP(8×200G)。全リタイム型より省電力と会社は説明 | 2026年3月に展示 |
| コヒーレント・coherent-lite DSP | Aquila(1.6T coherent-lite)、Libra(2nm、800G)など。最大20kmのキャンパス間から数千kmの通信網まで | 一部は2026年9月時点で「実演」 |
| COLORZ光モジュール | データセンター同士を直結する800G ZR/ZR+(C・Lバンド)。シリコンフォトニクスを使い8年以上の出荷実績 | 販売中 |
| 3D SiPhoエンジン | 6.4T、200G×32チャネル。変調器・受光器・ドライバ・TIAなど数百の部品を1つに統合。100G品に比べ帯域2倍、ビットあたり電力30%減と主張 | 2024年に初公開。複数の顧客が評価中(2025年1月時点) |
| カスタムXPU向けCPO | AIチップ・HBMと3D SiPhoエンジンを同じ基板に。銅の配線より100倍長い距離をつなげると主張 | 顧客の次世代設計向けに提供可能(2025年1月) |
| 102.4T CPOプラットフォーム | 200G/レーンのシリコンフォトニクスで102.4Tb/s | 2026年9月に実演 |
| Photonic Fabricチップレット(第1世代) | 1チップレットで16Tb/s(1.6Tポートの10倍と会社は説明)。ドライバ・TIA・SerDes・変調器・受光器・導波路を統合。銅の配線の2倍超の電力効率、ナノ秒級の遅延と主張 | 売上開始は2028年1月期後半の見込み |
| LPOチップセット | 光モジュールからDSPを省く方式向けのTIA・レーザードライバ | 10-Kに製品として記載 |
「業界初」「銅の2倍超の電力効率」「100倍の距離」「16Tb/s」は、いずれも会社の発表文にある表現で、第三者の測定ではありません 未確定/将来。 Photonic Fabricの電力効率がpJ/bitでいくつか、どの変調方式・どの材料の素子を使っているかは、本稿の調査範囲の一次資料には書かれていません。 IEEE 802.3やOIFなどの規格への準拠についても、本稿の調査範囲の一次資料では明確な記載を確認できませんでした。
2026年4月に買収したPolaritonは、プラズモニクスを使った光変調素子の会社です 事実。 プラズモニクスは、金属と誘電体の境界を伝わる「表面プラズモン」という光と電子の混ざった波を使う技術で、 光を波長よりずっと小さな領域に閉じ込められるため、素子を非常に小さく、速くできる可能性があります。 Marvellのリリースも「従来のシリコンフォトニクスより高密度で、ビットあたりのエネルギーが極めて低い」と説明しています。
一方で、一般に金属は光を吸収するため、伝搬損失が大きいという弱点があります。 そのため実用上は、素子をごく短くして損失を抑え、損失の小さいシリコンの導波路と組み合わせる設計になります。 Polaritonの紹介文にも「確立したシリコンフォトニクスのプラットフォームとプラズモニクスの能動素子を組み合わせる」とあります。 金属と電気光学材料の界面の安定性や、長期の信頼性をどう担保するかは材料側の大きな課題で、 買収の発表では用途を長距離・DCI向けのコヒーレント通信(ZR・ZR+)と明記しています 未確定/将来。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| Celestial AIの技術は未完成 | 取得した無形資産9億5,100万ドルは全額が仕掛中の研究開発。売上開始は会社の見込みで2028年1月期後半 | 事実 |
| 追加対価の変動が損益を揺らす | 追加対価の負債の公正価値の増加で、2026年2〜7月の6か月に4億3,370万ドルの損失を計上。株価の変動をヘッジする先渡契約(3億ドル)も結んでいる | 事実 |
| 顧客の集中 | 2026年1月期、上位10社で売上の82%。10%以上を占める顧客が2社 | 事実 |
| 中国向けの比率が高い | 出荷先ベースで2026年1月期の売上の36%が中国(最終顧客の所在とは限らないと10-Kは注記) | 事実 |
| 買収による希薄化と手元資金の減少 | 10-Kは、Celestial AIの買収で株式を発行し、2029年1月期まで追加の株式発行がありうること、現金の支出で手元の流動性が減ったことをリスクに挙げている | 事実 |
| 製造を外部に依存 | 自社工場を持たず、ファウンドリと基板メーカーに委託。光のチップも同じ | 事実 |
| スケールアップが本当に光に移るか | 会社は移ると見ているが、NVIDIA・Broadcomを含む各社の一次資料でも、スケールアップの光化の時期は明示されていない | 推測 |
12. 用語集
- 光DSP
- 光モジュールの中で、ゆがんだ信号を整えるデジタル信号処理のチップ。
- PAM4
- 1回の信号で4段階の強さを使い、2ビットを送る変調方式。データセンター内の主流。
- コヒーレント通信
- 光の位相や偏波にも情報を載せる方式。長距離の通信網で使う。
- DCI
- Data Center Interconnect。データセンター同士をつなぐ光の回線。
- スケールアップ
- AIチップ同士を1つの大きな計算機のように密につなぐこと。今は主に銅の配線。
- Photonic Fabric
- Celestial AIが開発した、AIチップ同士を光でつなぐ技術の名称。現在はMarvellの製品。
- CPO
- 光の送受信部をチップと同じパッケージに載せる方式。
- TIA
- 受光器が出す小さな電流を電圧に変えて増幅する回路。
- プラズモニクス
- 金属表面を伝わる光と電子の波(表面プラズモン)を使う技術。素子を小さくできる。
- アーンアウト
- 買収後の業績目標の達成に応じて、売り手に追加で対価を払う仕組み。
13. 出典
- Marvell Technology, Inc. Form 10-K for the fiscal year ended January 31, 2026(米国SEC提出、2026年3月11日)。本社・会計年度、事業内容(光DSP・シリコンフォトニクス・CPO・LPO・DCI・Photonic Fabric)、売上高と市場別・地域別売上、研究開発費、製造委託、顧客集中、車載Ethernet事業の売却、Celestial AI買収の完了、ワラント、Inphiとの合併契約(添付書類一覧)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1835632/000183563226000011/mrvl-20260131.htm
- Marvell Technology, Inc. Form 10-Q for the quarterly period ended August 1, 2026(米国SEC提出、2026年8月28日)。Celestial AIの取得対価の内訳、仕掛中の研究開発、追加対価の負債と公正価値の変動、先渡契約、NVIDIAへの転換優先株の発行、直近四半期の市場別売上。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1835632/000183563226000025/mrvl-20260801.htm
- Marvell Technology, Inc. プレスリリース「Marvell to Acquire Celestial AI, Accelerating Scale-up Connectivity for Next-Generation Data Centers」(2025年12月2日、Form 8-K 添付資料 Exhibit 99.1)。買収の狙い、Photonic Fabricの特徴(熱安定性・16Tb/s・銅の2倍超の電力効率)、売上の見込み、取引条件とアーンアウト、AWS幹部のコメント。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1835632/000119312525305289/d34367dex991.htm
- Marvell Technology, Inc. Form 8-K(米国SEC提出、2025年12月2日)。Amazonとの取引契約と、Photonic Fabric製品の購入に連動するワラント(最大1,045,171株、行使価格87.0029ドル)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1835632/000119312525305271/d81371d8k.htm
- Marvell Technology, Inc. プレスリリース「Marvell Completes Acquisition of Celestial AI」(2026年2月2日)。買収の完了、Data Center Groupへの編入、売上の見込み、営業費用の増加見込み。 https://www.marvell.com/company/newsroom/marvell-completes-acquisition-of-celestial-ai.html
- Marvell Technology, Inc. プレスリリース「Marvell Announces Breakthrough Co-Packaged Optics Architecture for Custom AI Accelerators」(2025年1月6日)。カスタムXPU向けCPO、6.4Tの3D SiPhoエンジン、2017年からのシリコンフォトニクスの量産、COLORZの実績(100億時間超)。 https://www.marvell.com/company/newsroom/marvell-co-packaged-optics-architecture-custom-ai-accelerators.html
- Marvell Technology, Inc. プレスリリース「Marvell to Showcase Industry-leading, End-to-End Connectivity Solutions for AI Data Center Infrastructure at OFC 2026」(2026年3月12日)。Ara T、Ara、Photonic Fabric、COLORZ 800G ZR/ZR+の展示。 https://www.marvell.com/company/newsroom/marvell-ai-data-center-connectivity-ofc-2026.html
- Marvell Technology, Inc./Lumentum Holdings Inc. プレスリリース「Marvell and Lumentum to Demonstrate Optical Circuit Switching for Next-generation AI Scale-up Infrastructure」(2026年3月16日)。Lumentum R300とMarvellの光DSP・COLORZの相互接続の実演。 https://investor.marvell.com/news-events/press-releases/detail/1015/marvell-and-lumentum-to-demonstrate-optical-circuit-switching-for-next-generation-ai-scale-up-infrastructure
- Marvell Technology, Inc. プレスリリース「Marvell Acquires Polariton Technologies, Advancing Optical Performance Scaling to 3.2T and Beyond」(2026年4月22日)。プラズモニクスの光変調技術と人員の取得、用途(コヒーレント・DCI)、金額非公表。 https://www.marvell.com/company/newsroom/marvell-acquires-polariton-advancing-future-of-optical-connectivity.html
- Marvell Technology, Inc. プレスリリース「Marvell to Showcase Industry-First 2nm Optical Technology Demos for AI Data Center Infrastructure at ECOC 2026」(2026年9月20日)。Nova(2023年)・Ara(2024年)・Libra(2026年)の経緯、2nmの400G/レーンPAM4などの実演、102.4T CPOプラットフォーム。 https://www.marvell.com/company/newsroom/marvell-industry-first-2nm-optical-technology-ai-data-center-infrastructure-ecoc-2026.html
- NVIDIA Corporation プレスリリース「NVIDIA AI Ecosystem Expands as Marvell Joins Forces Through NVLink Fusion」(2026年3月31日)。NVIDIAによる20億ドルの出資と、シリコンフォトニクスでの協業。 https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-ai-ecosystem-expands-as-marvell-joins-forces-through-nvlink-fusion
- Marvell Technology, Inc. 公式サイト(社名表記の確認)およびロゴ画像の取得元。 https://www.marvell.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値は、Marvell Technology, Inc.が米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類と、同社およびNVIDIAの公式プレスリリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。性能の数値や売上の見込みは会社の主張・予想であり、第三者が検証したものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。